第20話 ドラゴンを倒す必要がありそう
「竜の顎?」
「うん、クエストで必要になって」
「聞いたことないなぁ。宝珠と逆鱗のほうもね」
一旦ログアウトした俺は、情報収集として朱音に連絡を取っていた。俺よりも遥かに大量の情報を持っている彼女なら何か知っていると思ったから。
でも返ってきた返答は『ノー』……何も知らないということだった。
「もしかしたらクエスト限定素材の可能性もあるし、地道にがんばるしかないんじゃない?」
クエスト限定素材というのは、通常では入手不可能なアイテムのことで、特定のクエストを進行中にのみ手に入れられるらしい。クエストで使う以外の使い道がないため、そのクエストをクリアすることで失ってしまうものがほとんどなんだとか。
「それに……」
「ん?」
「いや、アイテム名からして竜種──つまりはドラゴンを倒す必要がありそうなんだけど、勝てるの?」
「勝つしかないじゃん?」
「竜種ってトップ走ってる人たちが集団で挑むくらいの相手よ?」
「え?」
何それ聞いてないんだけど?
トップを走ってるってことは、朱音よりももっと強いということだ。そんな人たちが複数人で挑む相手に俺が挑む……あれ、無理ゲーってやつじゃね。
「まぁクエスト限定素材があるってことはクエスト限定モンスターがいてもおかしくないけどね。未確認だけど」
「どっちにしろ俺一人じゃ難しそう……」
「なんかあればどんどん頼ってよ!」
「何かあればね……」
現状は集めるアイテム名しかわかっていない。せめて頼るのはどうすればいいのか分かった時にしよう。
「じゃ、私この後やりたいことあるから」
「リアルで?」
「なわけないじゃーん。ばいばーい」
笑いながら電話を切られた。現役JKがリアルで用事ないってそれはそれで悲しいのでは……?
とにかく、情報は得られた。何も知らないという情報だが……逆に言えばこのクエストはまだ誰もやったことがないということだ。ますますレア度が高まった。
一応念のためネットでも調べてみたが、特にこれといった情報は得られなかった。竜の○○シリーズ自体はあるらしいが、顎・宝珠・逆鱗の三つはないらしい。
「あとは足で調べるしかないか……」
★
再びインした俺は、ゲームのほうで朱音に連絡を取った。
ブルー:『手っ取り早く強くなる方法ない?』
ルビー:『装備強くすればいいよー』
ブルー:『素材も金もないけど』
ルビー:『うーん……』
ルビー:『ここと、ここらへんで狩りするといいよ』
ルビー:『こっちは高値で売れて、こっちはそれなりにいい素材が落ちる。どっちも初期装備で行けなくもないから』
ブルー:『ありがと』
朱音はマップも一緒に送ってくれたので、さっそくそこに行ってみることにした。こうしてすぐにいい情報が手に入るのは朱音様様だよな……もっと大切にしていこう。
朱音に教えられた場所その1。街を出て森とは反対方向に行った先にある荒野。通称金荒野。
そのままの名前だが、金策としての効率はいいらしく、俺以外のプレイヤーがそれなりにいる。初期装備がほとんどを占めているので、始めたてが多いのだろう。
「ここだとオークとリクガメみたいなやつがいるんだっけ……」
朱音にもらったマップに書いてある情報だと、オークは肉、リクガメ──シールドタートルというらしい──は甲羅がドロップするらしい。
「どっちもタフなイメージだけど、剣で行けるのかな」
周りを見ると、剣や弓よりも鈍器や魔法で戦っている人が多い。うーん、どうしようか。
「ま、やってから考えよう」
物は試しだ。
ということで、少し歩いて人気の少ないところに。人はそれなりにいるが、エリアが広いのでいい感じに分散できる。
「あ、発見」
のっそのっそと、2mはあろうかという巨躯を揺らしながら歩く、2足歩行する豚のようなモンスターに出会った。多分こいつがオークだろう。
「ブヒ! ブヒヒ!」
真正面から近づいて行ったので、すぐに気づかれた。鳴き声は豚をちょっと低くした感じ?
「まずは一撃!」
オークが武器を構えると同時に駆け出し、すれ違うように腹へと一撃を入れる。硬い!
「でも……」
手ごたえはあった。ダメージは与えられているみたいだ。
後ろに移動した俺を追ってオークが振り向くが、その時にはもう攻撃準備に入っている。
「はぁ!」
一回、二回と攻撃を重ねていく。オークは図体がでかいせいで攻撃は早くない。一方的に攻撃できる。
「ブヒー!」
「そろそろっ! 倒れてくれ!」
ゴブリンならもう倒せているくらいには攻撃した。けれどオークは倒れる様子を見せない。弱っていることは確実だが、まだ全然戦えそうだ。
その後も攻撃を続け、一撃も反撃を食らうことなく倒すことができた。肉もちゃんとドロップ。
「タフすぎる……金を稼げるといっても一体にかける時間がこのままだとあんまり効率が良くない気がする」
だが一方的に倒せるのもいいところだ。おそらくオークの弱点は打撃。斬撃である剣だから時間がかかったが、打撃武器ならもうちょっと早く倒せるんだと思う。
「街に帰って武器を……いや、面倒だな。剣で効率よく倒す方法を考えよう」
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