第21話 ようこそ素材売買所へ

 数十分もオークを倒していれば、効率化していくというもの。人の量よりもポップする早さと量のほうが勝っているため、オークを探し求めて彷徨うこともなかったため、ほぼ最大効率で倒せていた。

 途中シールドタートルにもであったが、甲羅が固すぎて断念。オークに集中することにした。


「はぁ!」


 今では二、三回ほど攻撃すれば倒せるようになった。倒していくうちに、首が柔らかいことに気付いたからだ。身長差があるので難しくはあるが、そこに攻撃を当てられればほんの数十秒で戦闘を終わらせることができる。

 他に効率化した要素と言えば……


「【剣技】会得できてよかったー」


 ある程度の速度で倒せるようになった時、やっと【剣技】を会得できた。この技能のおかげで、体感だけど剣での攻撃の威力が上がったように思える。より鋭い一撃を与えられるようになったおかげで、さらに戦闘時間が縮まった。


「ん?」


 視界の右下のほうにドロップして獲得したアイテムが流れるのだが、その中に見慣れないものがあった。

 通常モンスターからは最低一個、多くて三個ほどの同一種類のアイテムがドロップする。オークの場合は肉だったり牙だったり。

 だけどたまにドロップする、いわゆるレアドロップはそれとは別に獲得できる。


「オークの上肉……」


 普通の肉と何が違うのかわからないけど、通常ドロップと一緒にドロップしたってことは、おそらくこれはレアドロップ。通常肉でそれなりの金額で売れるらしいので、上肉となればさらに値段は上がるはず。


「金策のために生み出されたモンスターだな……」


 プレイヤーからしたら金が無限に湧き出る場所だ。オークには可哀そうだけど。


「そろそろきついか」


 このゲームにはアイテムの所持上限がある。種類または重量が決まっていて、一定の数以上の種類は持てないし、重量オーバーになるアイテムも持てない。

 オーク肉というのはそれなりの重量があるらしく、一時間弱狩り続けるとアイテムがいっぱいになってしまう。


「街に戻って売ってこよう。ついでに武器も」


 チュートリアルから始まってオーク狩りまでずっと使い続けた剣だ。耐久値はかなり減っているし、もっと効率化を目指すなら攻撃力が足りない。そろそろ変え時だろう。

 俺は金荒野をあとにして、街に戻ることにした。


 街は相変わらず活気づいていて、今日も喧騒が鳴りやまない。


「武器屋……って、オーク肉ってどこで売ればいいんだ?」


 俺が街でしたことと言えばミカのクエストくらいだ。歩いてはいるけどどこに何があるかなんて把握していない。仕方ない。歩いて探そう。

 それなりに時間がかかる……と思っていたのだが、意外と早く目的の場所は見つかった。


「すっごい人」


 一見ただの街の風景だが、普通とは違う点がある。それは、人ごみのほとんどをプレイヤーが占めていることだ。そしてそのプレイヤーたちが向かう先には大きな建物が一軒。

 その建物は、周りの景観を損なわない程度に、建築様式を似せて造られているが、その実かなり頑丈になっているように見える。威圧感……と言えばいいのか。


「とりあえず俺も行ってみよう」


 アイテムの買い取りができない場合でも、その場所を教えてくれるかもしれない。

 その建物がプレイヤーでごった返してるといっても、それなりに列のようなものはできてるし、歩くスペースがないわけじゃない。近づくにつれて、この建物が俺の目的の場所だということがわかってきた。


「ようこそ素材売買所へ。査定ですか? 購入ですか?」


 素材売買所。自分が得たアイテムを売ることもできるし、他のプレイヤーが売った素材などを買うこともできる施設。


「査定で」

「ではこちらに査定に出される素材をお納めください」


 言われて表示されるのは特殊なウィンドウ。自分のアイテムウィンドウから直接ここに移せるようだ。いっぱいになったオーク肉とたった一個だけドロップした上肉をウィンドウに追加する。


「納め終わりましたら完了ボタンを押してください」

「完了、と」

「ありがとうございます。ただいま査定を行いますので少々お待ちください」


 ウィンドウが閉じられると、受付をしてくれた女性NPCが何やら考え込む仕草をする。査定しているのかな。

 数秒もすれば受付嬢は小さく頷いて、俺と目を合わせる。


「お待たせいたしました。こちらが査定額になります。よろしければ取引ボタンを押してください」


 金額としては、さすが金策と言ったところ。一時間も動いてないのにそれなりの金額になった。取引ボタンを押してお金をもらう。一気に小金持ちになった気分だ。

 さて、次は武器屋かな。場所知らないけど。

 今よりも強い武器を求めて、俺は武器屋を探すため再び彷徨い始めた。

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