第7話 驚きの情報

「さ、最新版最上位グレードのゲーム機……!?」


 何を送ってくれてるんですかねあの人は!?そりゃこんな厳重な梱包にもなるわ!

 恐る恐るそれを手に取る。一生見る機会なんてないと思っていたものがいま目の前、というか手の中にある……

 そのとき、ひらりと一枚の紙が落ちた。拾い上げてその内容に目を通す。


『蒼くんへ

 この間は本当にありがとう、あなたのおかげで風邪をひくこともなく、仕事もうまくいきそうだわ。だからこれはそのお礼。受け取ってくれると嬉しいわ。秘密にしていたわけではないのだけれど、実は私このハードを作っている会社に縁があってね。特別に作ってもらったの。といっても一般に販売されているものと大差はないのだけれどね。一応その中に私のアカウントと、私の会社で作ったゲームが入っているわ。ぜひ感想を聞かせて頂戴?とりあえず蒼くんのアカウントを作り終えたらフレンド欄に追加されてるはずの私のアカウントに連絡をください。それじゃあ、ゲーム楽しんで。


るな』


 驚きの情報しかないんだが!?

 え、これ俺用に作られてるの? え、るなさんこんなすごいハード作ってる会社に縁があるの? え、るなさんってゲーム作ってたの? え、るなさんとフレンドなの?


「と、とりあえず使ってみるか……」


 るなさんになにか言うとしても、連絡先が分からないし。唯一つながってるのがこのハードのフレンド。

 改めて箱を見てみる。そこはかとない高級感……!


「取説は……簡単な設定と起動方法しかないや。詳細は電子のほうかな?」


 ぺら紙一枚の取説の通りに接続をしていく。とはいえそこは最新版最上級。とても簡単で分かりやすい。

 ハードはバイクのヘルメットみたいな形になっており、顔の前に来る部分がモニターになっており目で操作する。

 ハードからはたくさんのコードが伸びていて、その先にはシールのようなものがあり、それらを体に張り付ける。ゲームで使うアバター作成のためだ。

 その他もろもろの設定をこなしていきつつ、10分程度ですべてが終わった。


「フレンド……フレンド……あった」


 すでに一つインストールされているゲームは後で見るとして、今はるなさんだ。フレンド一覧を開き、そこに登録されているたったひとつのアカウントを開く。


・るな(オフライン)

 ・メッセージを送る

 ・フレンドを削除


 メッセージを送れと言われているので、とりあえずお礼のメッセージを送っておく。オフラインらしいし返信まで時間がかかるだろう。その間にゲームのほうを見る。


「これって……」


 見たことあるタイトルだ。というか、これって朱音がはまってるって言ってたゲームじゃないか?

 【Utopia】──日本でしか発売されていないにもかかわらず世界的知名度を誇る最新ゲーム。朱音はもちろん、普段はゲームをしなさそうなJKや数多のゲームをプレイしてきたゲーマーたちを残さず虜にしているらしい。


「こんなすごいゲーム作る会社にいる人でも悩みってあるんだなぁ……」


 雲の上の存在だと思っていた人が、本当に人間だったことを知ったような。


「とりあえずやってみようかな」


 起動準備はできてる。時刻は昼過ぎ。多少長くやってしまっても明日は休みだし許されるはず。


「ふぅ……よし」


 【Utopia】に視線を合わせ、ゆっくりと瞼を閉じる。このまま5秒経てば選択したとみなされゲームが起動する。

5……4……3……

 瞼を閉じると同時に意識が落ちていく感覚。

2………1…………

とても眠い時のあの感覚をさらに強くしたようなまどろみの中、俺の意識は暗転した。

…………──0

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