第6話 るなさん、本当に何を送ってくれたんですか?
やってしまった……。
久しぶりのゲームは楽しくて、気が付けば一時間、二時間と時が過ぎてしまい、現在時刻は深夜四時。いや朝四時のほうがあってるかな?
フルダイブの感覚は独特で、慣れるまでに多少の時間を要する。しかし慣れてしまえば現実ではできないような挙動ですらできるようになるので、楽しさが激増するのだ。
「どうしようか」
外はいまだ暗いまま。今日は土曜日で学校は休み、バイトも休み。このまままたゲームをするのもいい。眠気もあまりないし。
「いや、やりすぎはよくない、か」
朱音がよく言っている。「私はゲームが好きで好きで愛してるけど、だからこそ時間を決めて無理のない範囲でやってるよ。のめり込みすぎてできなくなったら元も子もないからね」と。まあその時間っていうのが一般人からしたら長いし、強制的に終了させられるらしいからぶつくさ文句を言っているのをよく聞いているのだが。
ということで、俺は寝ることにした。お風呂は面倒なので起きた後で、若干ある眠気をなくさないうちに布団へもぐる。
すると思った以上に眠気というものはあるらしく。自分でも気づかないうちに眠りの魔力の中へと落ちていった。
★
──ピンポーン
……ん……なんか鳴ってる……?
──ピンポーン
……誰か来たのか……?
──ピンポーン
……うるさいなぁ……もう少し寝させて……・
──ピンポーン
──ピンポーン
──ピンポーン
──ピンポピンポピンポピポピポピポピンポーン
「うるさいなぁ!?」
せっかく人が気持ちよく寝ているというのに。
激しくインターフォンを押す犯人を突き止めるため、俺は玄関のほうへと向かった……
「なんですか?」
「高野蒼さんですか?」
「そうですけど」
「あなた宛ての荷物があるのですが……」
インターフォンを押していたのは配達のお兄さんだった。あの、苦情入れますよ?
とはいえ、俺宛の荷物?何か頼んだ覚えはないんだけど。しかもお兄さんちょっと困惑してるというか、苦笑い気味。
「?はい、受け取りますけど……どこに?」
ぱっと見お兄さんに荷物らしき物は見当たらない。
「ちょっとここでお渡しするのが難しいといいますか。車のほうまで来ていただくことはできますか?」
「はあ」
ふむ……ここで一つ思い当たる節が。るなさんだ。俺に身に覚えがないうえに、るなさんは何かお礼を送ると言っていた。
……配達の車まで行かないと受け取れない荷物って、るなさんあなた何を送ったんです?
お兄さんについて車まで行くと、そこにはよく見るトラックが。
「お手伝いはするので、ここで手続してもいいですか?」
「印鑑とかいります?」
「サインで大丈夫です」
お兄さんがトラックの荷台を開ける。するとそこには、ひと際存在感を放つ段ボールが。
「もしかして」
「あ、はい。あれです」
かなり大きな段ボールだ。俺くらいなら中に入って隠れられるんじゃない?
「重さはそうでもないんですけど、大きいので。すみません」
「いえ、大丈夫です。こっちこそなんかすみません」
「仕事ですから」
朗らかに笑うお兄さん。やっば、イケメンすぎ?
お兄さんから差し出された用紙にサインをして、お兄さんと一緒に俺の部屋まで運ぶ。言われていた通り重量はそれほどでもなく、大きさから考えればとても軽いといえる。
「ありがとうございました」
お兄さんにお礼を言って別れる。そして残された俺と大きな段ボール。るなさん、本当に何を送ってくれたんですか?
見た目は無地の段ボール。企業のロゴが入っていたりなにかデザインが施されていたりなんてことはない。
「開けてみるかぁ」
カッターを持ってきて開封。すんなりと入った刃はスーッとテープでされた封を割いていき、ついに封印は解かれた。
意を決して中身を見ると、そこには白い物体。まあ発泡スチロールだ。とりあえず段ボールの次は発泡スチロールの封印が出てきたので取り出す。
発泡スチロールもすべて取り除く。するとその中には外装に比べて二回りほど小さな一つの箱が入っていて。
「これって……」
記憶が呼び起こされる。そう、それは──昨日。学校からの帰り道で見た。
「さ、最新版最上位グレードのゲーム機……!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます