1『右目』-EX 今回のBad-Endポイント!

「さて、勇者ちゃん。あるいは悪魔神の『脳』。どっちに感情移入して読んでいたかは知りませんけれど、読了お疲れさまでした」


「……え、なにこの空間。夢? 夢なの? てかアナタ誰?」


「私が誰かなど決まっているではありませんか。悪魔神の『右腕』、その完全な状態ことレイラ・インジェリィです」


「レイラさん!? ウソ、めっちゃスタイル抜群の美人さんじゃん!? あんなちんちくりんなちっちゃいメイドさんが!? ウソでしょ!?」


「……とまぁ、このように驚かれているこちらの方は、本作のメインヒロイン兼主人公の『神滅戦鬼』アグラル・ミサ・レグリアル。勇者ミサちゃんです。読者の9割がフルネーム覚えていないこと間違いなしの主人公です」


「うわっ!? 今気づいたけどアタシの体小さくなってる! これって10歳くらいの頃のアタシじゃん!」


「驚く彼女は無視して、本コーナーの簡単な解説を。このコーナーは各章ごとに存在する分岐点……所謂隠されていた即死選択肢について解説するギャグ時空となっています。解説役は私レイラが、合いの手としていつか私に殺される勇者ミサちゃんが存在します。本編とは一切の関係がない時空での幕間ですので、この手のノリが合わないと感じた方は読み飛ばして結構です」


「……えーっと、つまり?」


「メタ的な解説コーナーですね。小説、という形ではノベルゲームのような選択肢によって分岐するストーリーは楽しめませんので。ですので、本編では取られなかった選択の先……そういったあり得たかもしれない未来の結末について語るのが本コーナーとなっております。基本的にミサちゃんの行動のみが選択肢の例として挙げられます」


「あー、某道場とか、教室みたいな? ……道場とか教室ってなんだろ、どこかから電波受信したのかな……?」


「さて。困惑するミサちゃんは置いておきまして、早速1つ目の分岐から。こちらは物語1話以前にミサちゃんが魔壊都市を訪れてしまった場合の分岐です」


「早くない!? 分岐早すぎない!?」


「こちらの選択は、彼女が『悪魔神倒すついでに道中の悪魔も皆殺しにしよー』という気分になってしまった場合に発生します。そして、死にます」


「死ぬの!? 仮にも主人公でメインヒロインで『勇者』な属性過多なアタシ、そんな軽いノリで死んじゃうの!?」


「本編では現時点で未登場ですが、この都市には悪魔神の部位がもう1つ存在します。その影響で死にますね」


「なんで!? アタシ、本編でめっちゃ強かったよね!?」


「彼女はこの都市に潜む……いえ、実際は潜んでなどいませんが、とある殺人鬼によって殺されてしまいます。ただの人間相手です。無様ですね」


「えっ、ウソ……悪魔ですらないんだ……」


「その辺りはミサちゃんが『勇者』であることも少しばかり関与してきますね。また選択次第では彼女自身が殺人鬼となってしまいます。本編でも殺人鬼染みている……? それは、まぁ、はい」


「何があるってのよ、この都市……」


「さて、続いての分岐ですがこちらはビターエンド、というよりも無味無臭エンドですね。彼女の気分によって、開幕『脳』が殺されてしまった場合の分岐です」


「あ、そこでアタシがガルザを殺す未来もあったんだ」


「はい。この場合勇者ミサちゃんは無事悪魔神討伐……とはなりません」


「えっ、なんで? 悪魔神の本体のガルザ倒したんだよね? そういう意味で物語終わっちゃうから無味無臭エンドじゃないの?」


「違います。この選択肢をミサちゃんが取った場合、各地に散らばった悪魔神の『部位』は『脳』による最低限の理性を失い暴走し、世界各地で悪魔災害が拡大。ミサちゃんはそれを何とかすべくたった1人で世界巡りの旅に繰り出すこととなります。しかも、理性を失って暴走した悪魔達はそれほど強くありません。理性と知性無き暴力よりも叡智の方が強力な武器である。人間であるならば自明の理ですよね。そういった意味で退屈な旅をする形でミサちゃんは一生を終えます」


「確かにそれは無味無臭だ……各方面に対して。あれ、じゃあその場合のレイラさんは?」


「ご主人の死の直後に暴走し、ミサちゃんに殺されます。本編の私は現在大して強力な悪魔ではありませんから。いつかミサちゃんを殺しますけど」


「えっ、こわ。ギャグ時空でも殺意全開じゃん」


「さて、続いての分岐点ですが。こちらは魔壊都市突入直後です。目視で都市一番の屋敷こと『セキア・キャッスル』を確認した際の行動分岐ですね」


「あの建物、そんな名前だったんだ……セキアさん、自己顕示欲バリバリじゃん」


「この目視での確認、脳筋行動に見えて実はこの時の最適解だったりします。理由としては本編で触れられていた通り」


「あっ、魔術の探知のこと? 痕跡が残ったり逆探知されたり、そこから攻撃もらったりとか?」


「えぇ。セキアは『右目』、アレで探知と呪術、魔眼のスペシャリストです。しかも勇者の侵入に気付いた彼女は自分の居場所がバレないようにと全力で呪い返しに集中している最中でした。本編ではそこに物理的に突撃される形となりましたが」


「……えっと、ってことは……?」


「はい。魔術による探知を行った場合、それを感知したセキアによって強引にミサちゃんの脳に魔術干渉が行われ即死でした」


「……こわ」


「後は、精々セキアが降伏した直後に彼女を殺しに向かうかどうかですね」


「えっ、その出来事アタシ知らない」


「当然です。石化と病魔、魔術汚染を受けながら3000体の上級悪魔と肉体1つで戦ったアナタは限界でしたから意識朦朧、セキアの降伏を受け入れた直後に気絶されましたから」


「……それで、アタシがセキアさんを殺す選択肢って? 反撃されて死んじゃうの?」


「いえ。恐怖に怯えた彼女は動けずに失禁します。そこに斬りかかったミサちゃんを私が殺す、という形になりましたね。ぶい」


「ぶい、じゃないわよ!? アナタなの!? なんで殺すのよ!」


「『右目』を潰されたら困りますから。致し方ない犠牲というものです。弱り切ったミサちゃんであれば、本編の私でも殺せますから」


「ホントに弱り切ってたんだアタシ……ま、そりゃそうよね。石化と病魔と魔術汚染、ついでに燃えながら戦ってたんだし。え、あれ。だったらセキアさんがもう少し粘ってたらアタシ死んでない?」


「死にません。何故ならセキアは臆病ですから。あの時点で心が折れない、というルートが無いのですよ」


「そっか、セキアさんかわいそう……でも何に怯えて心が折れたのかしら? アタシ、彼女には何もしてないわよね?」


「彼女の名誉の為に黙秘しましょう」


「? ……あ、それとだけど。本編でアタシがレイラさんに殺されなかった理由は何なのかしら? 弱っていたんでしょ? アタシ」


「貴女の存在が他の『部位』集めに都合が良いからです。利害の一致による一時的な協力体制、呉越同舟という訳です。不要となれば無論、殺します」


「……殺意たっかいなぁ、もう。これだから悪魔は」


「貴女も大概ですよ」


「えっ、どこが?」


「…………」


「…………」


「……はぁ。いえ、なんでもありません。それでは、『右目』編の大きな分岐は以上となります」


「あ、終わりなんだ。4つくらいって、意外と少ないね?」


「十分多いと思いますけれど」


「そうかしら……?」


「では、ここまでお付き合い下さりありがとうございます。この謎時空のことは一度お忘れになって、次章以降も引き続きお楽しみくださいませ」


「……うーん? 死にかける回数が4回って、やっぱり少ないわよね?」

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