第4話 魔物が侵略しにきただと…!!……帰ったの?!
街を歩いていたら最強な魔物に拉致された友木。
その頃、城内ではこのような会話が行われていた。
「極悪非道な魔王をどうか討伐してください…。私からは以上です」
王女の演説が終了する。
周囲の反応は魔王への憎悪と見えた。
クラスメイトは全員、顔を引きつらせて玉座の方に顔を向けている。
「さて、それじゃあ今日のところは休んでよかろう。明日からは訓練を始める」
その言葉を聞き、クラスの皆は一斉にざわめきだす。
勇者として召喚され、いきなり世界を救うように頼まれたのだ。
戸惑いもするだろう。
その中でも高畑は訓練という言葉に一人騒いでいた。
彼は昔から難しい事はすべて避けて生きて来ていた。『訓練』という言葉はよほど彼を怒らせたのだろう。
……その間で二人だけ冷静に周囲を見渡している者がいた。
水浦と刃和田だ。
水浦は万能人。
また、賢いため状況を誰よりも早く把握していた。
それに対して、
同じクラスメイトである刃和田は妄想癖が酷かった。
だからこそ異世界に連れてこられた事が妄想で納得してしまう。
刃和田は底が厚い眼鏡と、太った体系、
(ボクチンって真の勇者だから異世界に来ちゃったのカナ?デュフフフ♪)
妄想癖が酷いのが周囲から浮いている。
しかし、彼は虐められることはない。
なぜなら過去にこんな事があるからだ。
~~~~~~~~~~~~~~~
「刃和田、俺に弁当よこせよ」
「どうしたのカナ?別に良いけど?もしかしてボクチンの弁当がそんなに美味しいのカナ?デュフフフ♪」
ある昼休み、三人の男子高校生が刃和田の机の周りを囲っていた。
もちろん、はたから見ればイジメである。
しかし、刃和田には妄想癖があるため、目の前の男子高校生は、友達という部類で接していた。
「は?ふざけたこと抜かしてんじゃねえよ!!」
その瞬間、男子高校生は刃和田の弁当をひっくり返す。
そして地面に擦り付けたのだ。
「ふへ?」
「お前いつも気持ち悪いんだよ!!俺らが嫌がってんのに絡みやがって。うぜえ!」
「そ……そんなことないよね?だってボクチンたちは友達だもんね!?」
「…………」
「あれ?ねぇどうして黙るのカナ?なんで目を逸らすの?嘘だよ……ね?ボクちん達友達じゃん……ね?」
刃和田の言葉を無視するように三人組は教室を出て行こうとする。
しかし三人のうち一人が刃和田の方に振り替える。
「このブタ一発殴ろうぜ。声が聞こえるだけで胸糞悪りぃ」
そう言って拳を振り上げる。
「やめてぇぇぇ!!!」
刃和田が叫ぶと同時に辺りで歓声が沸く。
これは普段から刃和田が周囲から嫌われていた証だった。
もちろん、妄想癖のよる異常な執着などでも女子から嫌われていた。
だが、刃和田自身はそれを理解していない。
なぜ自分がこんなにも嫌われているのかと不思議で仕方なかった。
「さあ! 一発目めぇ!!!!」
一人の男子高校生が高らかに宣言しながら拳を振るう。
その時だった。
「デュフフフ……デュフフフ………」
不気味な笑い声と共に、刃和田の前にいた男子高校生が吹っ飛ばされる。
「な、なんだコイツ!?」
突然の出来事に驚く二人。
そこには、自分の拳をうっとりと眺めていた刃和田の姿があった。
「アハァ♪やっぱボクチンって最強なのかな??きっと女神様から愛されてるのカナ?そうだよね?うんきっとそうだ!!」
ここで二人は刃和田に殴り飛ばされている事が分かる。
その言葉を聞いた二人は恐怖し、その場から逃げ出した。
しかし、刃和田はそれを逃さない。
「おい待てよォ?誰を置いていくつもりかなぁ??まさか逃げようとしてないよネェ?」
「ヒィッ!?ごめんなさいごめんなさい許して下さいぃいいい!!!」
「友達だもんね?友達だから許そうカナ?」
「そう!友達に決まってるじゃないか!!……ひぃ!!もう二度と逆らいませんからああああ!!」
勿論極めつけに抵抗している二人も刃和田は殴りつける。
彼がいじめられない理由、そう
刃和田はボクサーを昔習っていた。
虐められる素質を全て持っている彼だが、
刃和田は周囲を圧倒させる程の相当な実力者であった……。
~~~~~~~~~~~~~~
「………刃和田くんの扱いは面倒だろうなあ」
「ん?水浦君、ボクチンに何か言ったのカナ?」
「いいや、戦力になりそうだなって思っただけだよ。期待してるね!」
「デュフフフ!!やっぱボクチンは最強だな!!!」
煽てられたらすぐに調子に乗ってしまう彼。
しかし素の戦闘力ではクラスで一番強いと言っても過言ではない。
そんな刃和田の存在を水浦は邪魔に思っていた。
(はあ、早くコイツも無能になって追放されないかなあ)
しかし水浦は声に出すほど馬鹿ではない。
さっきの声は本人に届いていないのでノーカウント。
「…あ!ちなみに刃和田くんのスキルはどうだったんだい?」
ほとんど無意識のうちに問いかけていた。
「ボクチンのことさ?聞いて驚てね~~~~~?」
(早よ言え、ブタ)
「『魔導士』だよ?」
「……………………!!!!!」
その言葉で水浦ははっと我に返った。
そう、刃和田のスキルは魔導士であった。
魔法、それは
漫画やゲームでは近接攻撃を苦手とする物。
つまり、彼の身体的機能は無駄であることに水浦は気付いた。
「……そっか、それは良いスキルだ、とっても良い」
「やっぱ分かるカナ? デュフフフ!!!」
(ははは!コイツもいずれは蹴落とせるな!!!)
心の中で水浦はほくそ笑んだ。
~~~~~~~~
そうしている間に、その時は訪れた。
突如、外で鐘の音が鳴り響く。
それは時間を告げるような、間の空いた感覚ではなく。
まるで緊急事態を知らせるような鐘の音だった。
「何事だ!!」
王様は大声で叫んだ。
転生者全員もよどめく。
……少し経った後、廊下で慌ただしい足音が聞こえた。
そして一人の兵士が部屋に入ってくる、
「何が起こっている!!」
王様は切羽詰まったような兵士の姿に声を張り上げた。
周囲の空気も緊張する。
…そして、その兵士は言い放った。
「この国に魔物が一匹、侵入したようです!!」
「…何?一匹…だと?」
「緊急??」
続けて、
「一匹だけですが…………。対処に向かった兵士は全員、息はあるようですが戦闘不能状態まで追い込まれてしまいました!!」
「!!」
王様と周囲の人々は、兵士からの報告に驚愕した
魔物が国内に侵入し、対処に向かった兵士たちは全員が戦闘不能とのことだった。
王様は一瞬にして顔が青ざめ、慌てた様子で命令を下す。
「すぐに城の警備隊を集め、魔物を討つための対策を立てろ!!この城に侵入させるでないぞ!」
兵士たちは王様の指示に従い、迅速に動き始める。
しかし仲間を戦場に送ってしまった兵士の足取りは重かった。
その後、城内では警備隊が緊急の配置に向かい、城壁や門を厳重に警戒する。
「偵察部隊の報告の結果、やはり…魔物は一匹です」
(じゃあなんでこんな苦戦してるんだよ!!)
水浦は苦虫を嚙んだような顔をした。
(この王国も頼りねえな。僕一人でも生き延びる方法を探さないと!!)
『勇者』のスキルを持った水浦は、自己中心的な考えに取りつかれていた。
……。
~~~~~~~~~~~~~~~
「友木君、大丈夫かな……」
そんな水浦と対照的に、ミクルは友木のことを心配していた。
彼女は指先をせわしなく動かして、今にもこの城を飛び出そうとしている様子だった。
そうしてる間にもどんどん、王様に情報が入る。
「何? 魔物の正体が分かっただと?」
「はい…恐らく」
「早く答えよ!!!」
報告しに来た兵士が細々と答えた。
「……1300年前、あの知らない者はいない出来事…ご存じですか?」
「あぁ、知っておる。
「はい…その時の魔族連合の最高指揮官…。アズラーイール
それが攻めてきた魔物だと思われます…。」
「「「!!!!!!!!」」」
この世界線の歴史を知る誰しもが息をのんだ。
聖醒魔王大戦とその最高指揮官であるアズラーイールの名前は、彼らにとっても伝説的な存在であり、その名は恐怖と破壊の象徴とされていた。
王女もまた、アズラーイールの名前を聞いて身構えた。
彼女は歴史の教訓を知っており、かつての大戦の犠牲と悲劇を思い起こしたのである。
「え?!友木君死んじゃうよ!!」
その説明を聞いたミクルは大きな声で叫ぶ。
そして彼女は速足で王の間を出ようとした。
救う方法は全く思いつかなかったが、友木がアズライールに遭遇してしまうことに対しての焦土感に心を悩ませていた。
「これは戦うしか…!!」
その瞬間、
「止まるのです。スリープ・クラウド・マキシマム…」
王女が声を発し、腕を前に出した。
腰から杖のようなものを出す。
そして呪文を唱えながらミクルに杖の先を向けた。
「……うぅ、たすけに…いかな……きゃ……」
すると、ミクルは突然、弱った声を出しながら倒れた。
これはまさに、王女による魔法だった。
「聖女がそのような男に心を乱してはいけません。自分の立場を弁えよ」
そういうなり、周囲の兵がミクルを椅子まで運んで座らせる。
これで友木を助けたいという気持ちを持つものは居なくなってしまった。
その間も情報は王様の元へどんどん届く。
…そして、王様は命じた。
「全軍、最後の抵抗を試みよ!アズラーイールを討ち倒すまで退却せず、勇敢に戦え!」
王様の命令に、兵士たちは一斉に応じた。彼らは最後の希望を託し、王国のために戦う覚悟を胸に抱いた。
作戦内容は、最近開発したばかりの究極魔法を用いること。
そして魔物丸ごと周囲も破壊し、弱ったところを兵で叩くという物だった。
つまり住民も巻き込むことになる作戦、
しかし王様にも躊躇が無かった。
(ふふふ、友木のやつ終わったね。究極魔法とやらで、さよならだ)
その時も水浦は静かに喜んでいた。
なぜなら自分の素性を知るものが居なくなるからだ。
今の所、友木以外に素性を見せたことが無い、彼は、友木を引きはがすためと言って素性を見せたことに少し後悔の念を抱いていた。
しかし、友木はこの作戦の巻き沿いとなって居なくなる。
それは彼にとって思わぬ幸運だったのだ。
「さあ、作戦決行だ!!」
兵の士気も高まる……
その時、突然部屋のドアが開き、ある兵士が駆け込んできたのだ。
顔色が悪く、その雰囲気に周囲に緊張が走る。
「大変です!!あの魔物が!!」
兵士の報告を聞いている途中の王様は青ざめる。
「どうしたんだ?!進化でもしたのか?!」
周囲の兵士たちも動揺している。
「いえ、違います!!魔物が…魔物が!」
その報告を聞いた王様と王女は顔を見合わせる。
「まさか……」
「あり得ません……」
2人がそう言っている姿をクラスメイトは怪訝そうに様子をうかがっていた。
(一体どうしたんだ?!)
(わかんねえけど、やばい雰囲気がするぜ…)
(俺ら大丈夫なのかな?)
(怖いよー!帰りたいよー!)
(なんかヤバくね?)
(なんで転移に巻き込まれる必要があるんだよ!)
クラスメイト達はヒソヒソと話し合っていた。
その間も王女と王様、そして兵士は会話を続ける。
「なぜ起きているのだ?」
「原因は不明です……。しかし」
「しかし、とはなんですか?」
「実は………」
「「!!」」
王女と王様、そして兵士の短い会話が終わる。
そして王様はクラスの方へ振り向き、こう告げた。
「恐怖と破壊の象徴とされているアズライールが……帰ったらしい。あの無能の男を引き連れて…だ」
「「「!?」」」
クラスメイト全員が驚いた。
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