第3話 魔王の配下に連れ去られました!助けて~…。
(ツイ〇タ―かよ…)
友木の『さえずる』のスキルのLv2は、盗み聞きだった。
不謹慎すぎるスキル。俺にスパイでもなれと?
尖りすぎている権能に友木自身、多々思うところがあった。
(まあ、俺は追放された身だからスキルの強さを今極めてもどうしようもないけど……)
どちらにしろ、友木には迫害をされる心配も無いし、魔王討伐を強制されることも無い。
ある意味、スキルはこれ以上上げても意味が無いのかもしれない。
「『さえずる』」
友木は自分の心の声で呟くと、スキルの効果が現れる。
目の前に青い鳥のマークが出てきた。
そのマークに触れると、宙に大きな画面が現れた。
これがツイ〇タ―激似の『さえずる』の権能である。
~~~ISEKAITTA-~~~~~~
ある女性:はあ、最近税が上がって苦しいわあ
♡0共感5
ある男性:魔王の行動が原因らしいぜ?
♡2共感0
↑リプライ:まじかよ…。魔王許さん。
♡1共感10
あるドワーフ:魔王は魔力ですべてを感知すると言われてるのじゃ。変な言動は慎んだ方がいいぞい。
↑リプライ:あざーす。
↑リプライ:ありがとうございます!詳しいんですね!
―――――――――――――――
―――――――
~~~~~~~~~~~~~~~
(投稿されてる量が少し増えてる...)
友木は投稿内容を眺めていた。
その結果、魔王に対してのヘイトが大半だった。
よほど魔王は嫌われているようだ。
まぁ人類の敵だから致し方なしだけど……。
そして、友木はドワーフにまで情報を拾えることに驚いた。
(種族関係なし。思考能力を持っている奴だったら大体スキル通るな。情報収集能力超特化型スキル万歳!!)
自分自身のスキルに価値を始めて覚えた。
そして、『ISEKAITTA-』の画面の下に『さえずる』というボタンを見つけた。
そのボタンを押すと、画面に文字が出てくる。
更に音声が流れ始めた。
〈『さえずる』の権能を発動します。この権能では、ある集団に対してツイートを行うことができます〉
「……」
〈Lv2の状態では、『ランダム』、『周囲五メートル』のうち片方でツイートできます〉
〈権能を使用する場合は、ツイートの内容をお選びください。ツイートの内容により、発言者にボーナスが与えられます〉
〈権能の使用回数には制限があります。使用回数はレベルアップと共に増加します〉 〈また、レベルが上がるにつれ、より詳細の設定が可能になります〉
〈権能の発動条件を満たしていない場合、ツイートすることはできません〉
〈なお、ツイートした内容は自動的に保存されます。あとから削除する事も可能です〉
(情報量多いな!!)
友木は頭の中で突っ込んだ。
まず、自分に何が出来るのか把握する必要があった。
そのためにも、まずは友木自身に説明された内容を思い起こす必要がある。
・ツイートには発信するモードがいくつか存在する
・内容でボーナス?
・権能に使用回数
重要なのは主にこの三点だろうか?
友木自身も納得したところで、ある行動に移った。
「よし、ツイートするか」
そう、見つけた新たな権能、ツイートだ。
友木はそう言って『ランダム』を選択してツイートをしようとする。
半径五メートルは大体想像がついてつまらない。
なので試す価値のある『ランダム』の方を選んだ。
しかし、ここで重要な事を決めていないことに気付く。
それはツイート内容だった。
例えば、「今俺が思っていること」とか「これからしたいこと」などのツイート内容を全く持って、考えていなかったのだ。
(しまった……。何を言えばいいんだ……)
SNSは閲覧用でしか使ったことが無い。
そんな友木は一生懸命考えていた。
そして幾ばくが時間が経ち、遂に口を開いた。
「『クラス転移で無能扱いされた。俺不遇すぎ』っていう内容にするかあ」
完全に承認欲求の塊ツイであるが、止める者は誰もいない。
その言葉は間もなく、声となって何もない空間へと流れていった。
すると、不意に青い鳥マークが宙に浮かんだ。
そして、そのマークは打ちあがった音をパクっと食べ、そして光り輝く。
友木がそのマークに触れると、青い鳥は彼方に飛んで行ってしまった。
(ずいぶん呆気なかったな…。これが俺の『さえずる』の権能なのか)
正直、拍子抜けであった。
確かにゴミスキルだったな。
……もう、今はそんなことを考えていても仕方がない、か。
スキルに頼れない事を渋々把握した俺は散策を続けようとした。
とにかく新しい生活を手に入れる事が必要だ。
今夜は宿屋へ頼み込み、服とかでトレードしたいな。などと思考を張り巡らせていた。
それにしても、と彼は思う。
「これからどうしよ…。多分追放ってもしかして王国全体のことかなあ?そしたらこの街に滞在する許可も既に無いんだよなあ…」
国民ではない為、街の中に居座ったら不法入国でまた兵士のお世話になるかもしれない。
そうなると、初めて殺される可能性がある。
かと言って、この世界には魔物も跋扈している。
一人で生きていくのは難しいだろう。
「まあ、何とかなるか。とりあえず今日は…コソコソと泊まれる場所を捜索するか!」
前向きな男である。
~~1時間後~~
「なんでこうなったんだ…?」
友木のいる街は恐怖に包まれた。
人々は逃げ惑い、国の騎士団は皆地面に伏している。
一見強そうな騎士団は一匹だけの怪物によって、ことごとく戦闘不能の状態まで追い込まれていったのであった。
さらに、騎士団を壊滅させた後、その怪物はふと、俺の方に近づいてきた。
その怪物…いや、だんだん分かってきた。真っ赤な体に極端に尖った爪。
そして魔な雰囲気を醸し出している強者のオーラ…。
「お助け下さい…お願いします」
「どうかお慈悲を……」
「……ずびばぜんでじだぁ!!!」
周囲には戦意喪失した兵士たちが地面に顔を埋め、絶望の声が響き渡っていた。
(え、え?俺殺される?追放からの魔物に蹂躙されるエンド?)
これは友木が『ツイート』を行って一時間たった後、
平和だった街に急に強すぎる魔物が侵入してきたのだ。
これは由々しき事態だった。
他の投稿で状況を確認したが、国に魔物が進行してくることは1370年ぶりらしい。
つまり、これまで平穏に暮らしていた人々にとって凶悪な魔物が襲来するなど、初めての事、避難の仕方も知らない人だらけで、国内は完全に混乱していた。
しかも、もう一度繰り返すが、魔物は一体だけ。
大勢で攻めずに、牛刀一本で王国に潜り込んできたのだ。
返り討ちでボコボコにできそうなこの盤面。
……しかしその数の差とは裏腹に戦況は人間側の完膚なきまでの敗北だった。
そして下町護衛全滅、今に至る。
友木の目の前には国を攻めてきた元凶、
最強魔物が立っていた。
友木も内心焦りまくっていた。
背中には溢れんばかりの冷や汗が出てくる。
「お前…国から追放された不遇モンか?」
不意に目の前の魔物から質問される。
腹の底から恐怖心を沸き立たされるような魔物の声に、ほとんど頭空っぽで返答してしまう。
「……はい、一応」
友木は恐る恐る顔を上げた。
すると、そこにはその魔物が大きな笑みを浮かべているのであった。
「そうか!コイツの事か!俺っちと一緒に来い!」
「はっ!?」
友木は思わず素で反応してしまった。
殺されるという選択肢しか頭になかったのに謎の行動に理解が追い付かない。
「ほれ、早く背中に乗れい!!」
「え…?乗るって…。魔物相手にそれは………」
魔物は自分自身の真っ赤な背中を友木に見せつけた。
(うん?)
友木は言われるがまま魔物の指示に従うことができなかった。
なにせ急に魔物の背中に乗る、なんて尋常じゃない。
躊躇う事に無理も無かった。
「ちっ、聞き分けの悪い奴だな!魔王様の命令だ。致し方なし、強制連行する!!」
その状況を俯瞰していた友木は、この世界の理不尽さを再度覚えることとなる。
なにせ目の前の魔物に腕で軽々と抱えられてしまったのだから。
抵抗したのも空しく宙を舞う。
「うわああ!!ちょっと待て!俺はまだ死にたくない!」
「安心しろ、殺しはしない。ただ魔王様に会ってもらわないといけねえんだよ」
「俺はただの高校生だぞ!?」
「なんだそれ?うるさい、黙れ!」
こうして最強の魔物に担がれて友木は目的地も不明のまま連れていかれてしまった…。
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