第34話 無性の愛を受けたかった。
私は物心つく頃に母から愛の鞭を受けた。
それは無性の愛ではなく、きっと教育的な愛だろう。
私はうる覚えだが、小学二年生から四年生までの間に今でいう書き初めの鉛筆バージョンで金賞を取った。
私は小学生の頃、お正月が1番嫌いだった。
母と何時間も遊べず、ずっと字の練習をしてきたからだ。
習字はからっきしダメだったが、鉛筆は特待生並みだった。
今でも覚えているのは『か』という字だ。
払い、はねるそれを何度も心に染み込ませてやってきた。
その結果、私は字が人より上手く書けるようになった。
だけど、それは良いことでも悪いことでもなく恥ずかしいことだった。
私は母親に感謝しているが、金賞を取れたことには感謝していない。
だって得をするのは母であって私ではないからだ。
私はただ母さんの喜ぶ顔が見たくて書いていただけだからだ。
誰もみんな私の母さんが優しいと言うけれど、私が母親を少し好きになったのは最近のことである。
母親に感謝を述べるより、私は私の時間を生き抜いたことを褒めて欲しいくらいだ。
私はいつも1人だった。
友達も多い方ではない。
人見知りもする。
環境に慣れるのに半年はかかる。
家族も学校の先生も昔の介護施設で働いていた先輩からも私は優秀な人だと言われ続けた。
だけど、私は自分を優秀だとは思わないし、少し変わってるそれだけでいいと思ってる。
私は私のままでいいと思ってる。
優秀なんてものは勇者しか身にまとわない赤いマントでしかないからだ。
私の存在はゲームの中の村人Bくらいで十分だ。
ただ『今日はどうしますか?』その繰り返しを言うだけでお金がもらえるならそれで生きていきたいくらいだ。
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