第22話[黙って行くのは悪い癖です]

「マカロンさん、せっかくなのでこれを」


僕たちは今、マカロンさんに案内されて彼女の家にお邪魔しています、オレオールさんとガナッシュさんは、親友同士ということで、しばらく2人で街を歩いて回ったり遊んでみたりするとか


「これ……って、食材じゃないですか!」

「えぇ、前の街で色々と買いだめしておいたものです」


新鮮な食材を彼女に渡す、あまりにも衝撃だったのかポカンとしていて何が何だかわかっていない様子


「え、な、どうして!?マジックポーチに入れていても、食材がダメになっちゃうのは変わらないはずなのに……」

「あー……それはー…」


あんまり知られたくは無いけど、多分これは僕のせいなんだろう、あの秘密がきっと、食材にまとわりつく闇を浄化していたのでは無いかと思う……まさかこんなところで発動することになるとは思わなかったけど


「と、とにかく、新鮮な野菜やお肉ですから、今のうちに保管しておいたほうがいいですよ!」

「そ、そうですね……ありがとうございます、ブレイブ様」


混乱した様子のまま食材を運ぶマカロンさん、多分混乱してなかったらもっと遠慮されてただろうなと思うと少し笑ってしまった、オレオールさんと仲良し?だということ以外はまるで彼女のことをわからないけど、悪い人じゃ無いのは確かだし、食材を分けたのも全然後悔してない


「良いんですか?ブレイブ君の分の食材を……」

「えぇ、問題ないですよ、だって僕ほんとは食べる必要ないですし」

「え?」

「……なんでもないです」


危ない危ない、この事は秘密にしないと……


『ブレイブ君……この事は、たとえ誰にでも隠しておいてね?お姉ちゃんとの約束!』


(……姉さん…)


ずっと優しかった姉さん、こんな僕にも変わらずに当たり前のように接してくれて……僕は、姉さんのそんな優しさにいつも助けられていた


ー回想


『ねぇブレイブ君?私たちはね、普通の人にはない特別な力を持っているの、わかる?』

『はい、もちろん分かります』

『ふふ、だったらね、私たちは、その力を他の人のために使わないといけないの』

『ほかの人……?』

『そう……力を持つものは、それに驕っちゃいけない、いつでも他の人に優しくして、親身になって、一緒に乗り越えないといけないの!』


姉さんが手に持つ果物がナイフに変わり、そのナイフが宝石に変わり、その宝石がさらに木材に変わり、最後にその木材が果物に戻る


『私たち兄妹は特殊な力を持つ、だからって特別じゃない、普通の人間なの、だから人を傷つけたりしちゃダメだよ』

『はい!分かりました!』


ー現在


(……姉さん…)

「ブレイブくん……?」

「……そう言えば、オレオールさん達遅いですね、結構遠くまで遊びに行ったりしてるんでしょうか」

「…そのことで一つだけ思うところがあるんです」

「え?」


エクレさんが真剣な目でこちらを見てきた、思うところ?って、一体なんなんだろう?お二人は大親友でしばらく会ってなかったらしいので、少し羽目を外して2人で飲んだりご飯食べたり魔物を倒しに行ったりしていても全く違和感ないような気がしますけど……


「オール君って、あんな話を聞いて黙っているような人じゃないですよね?」

「あ……まさか!?」


ーオレオールside


「せいっ!」

「ぞぉりゃっ!」


東の道を歩く、確かに前にこの街に来た時と同じレベルとは思えないほど強い魔物達が闊歩している、次々と出てくる魔物に休む暇も与えられず俺達は戦い続けていた


「ふっ!はっ!……っと!ガナッシュ!こいつを使え!」

「助かる!オレオールも!パス!」


ガナッシュにはあらかじめあの街で買って持っていた短剣を投げ渡し、ガナッシュは俺に使っていた剣を投げ渡してくる、お互いにそれをキャッチしてお互いに戦い方を変える


「短剣の二刀流は素早く対処できて良いな!」

「こっちとしても剣の二刀流はなかなか便利だよ!」


もちろん俺としては片方の剣、つまり今俺が普段使いしている剣はエクレから貰った剣のため、以前よりはこの二刀流時の使い勝手は違う、そのため多少苦戦はするが、まだまだいけそうだ


そして、ある程度の魔物は一掃し終えた


「なんか、話に聞いてたよりかは強くなかったな」


短剣のうちの一本を俺に返しながらガナッシュはそう言ってきた、俺はそれを受け取り、鞘にしまってからガナッシュの剣を返す


「確かにな、これくらいなら討伐隊でも倒せたんじゃないかとは思うが……」

「……っていうか、それよりもなんか、剣についてんだけど」

「?魔物の魔素とかじゃないのか?……って、こっちのにもついてるし…」

「なんかそういうことは違うな…」

「なんとか取れないかなこれ」


剣をブンッと振ると遠心力で汚れのようなものが取れた、えぇ、これそんなんで取れんの……?


「それそんなんで良いの?ほいっ……あこっちも取れた」

「なんなんだろうな、これ」

「さぁなぁ……見た事ない汚れだけど…」


2人してしゃがみ込み落ちた汚れを眺める、錆とかじゃないみたいだしな……普通に全然わからない


「……!ガナッシュ、何か、来る」

「は?何か……って…」


東の方から強い風が流れてきた、踏ん張って立っていても吹き飛ばされてしまいそうなほど強い風……西の方から飛んできたのであろうか、鳥がその風に煽られて絶命した


(なるほど、これが[死の風]……!)


一体何が起こっているのか、街の人に聞き込みを行ったところ、どうやらこの風は定期的に吹き荒れているらしい、俺たちはこの風が初だったため直ぐにはわからなかったが、どうやらこれが死の風という事で間違いないらしい


「……!お、おい、オレオール、剣が!」

「え?……!」


風が弱まったタイミングで剣の方を見ると、先ほどのような汚れが剣の全体についていた、もう一度剣を振り、なんとかその汚れを落とす


「一体、この風は何を……っ、ガナッシュ、見ろ」

「はぁ?今それどころじゃ……!」


いつの間にか、魔物達が復活している、それだけじゃない、明らかに魔物のレベルが跳ね上がっているのが目で見てわかるのだ、先ほどまでなら討伐隊でも倒せるのではと思ったがなるほど、そういうことか


「原理はわからないが、死の風が吹くと魔物達のレベルが上がって復活するみたいだな」

「お、おいおい、さっきまでゴブリンとかだったのに、シャドウスコーピオンとか、アビスリーパーまで出てきてるじゃねぇか!」

「確かにこりゃ、討伐隊じゃ討伐できなさそうだな……」

「おいおいこれ、やべーって、俺たち2人でも……」


「エリアヒール!」


「!」

「こ、これは……」


先ほどの戦いで削られた体力が回復する、この回復量はまさか…!


「せいやぁっ!!!」


俺たちの方へ襲ってきていた魔物を飛んできた斬撃が倒す、流石にわかるよな……これ


「エクレ!ブレイブ!」


「僕たちに黙って行くだなんて酷いじゃないですか!」

「私たちもお手伝い致します!」


「あの2人って、お前の仲間の2人だよな?……あんなに強かったのか!?」

「あー、確かに……っと!」


剣を使ってこちらに向かってきていた魔物をもう一度切り裂く、それだけではどうにもならなかったためなんとか蹴り飛ばして時間を稼ぐ


「驚いている場合じゃないぞガナッシュ!ここからは本気で行かないとガチで死ぬぞ!」

「お、おう!」


2人がこちらへとやってくるのを確認してから、俺たちは魔物へと向き合う


「こうしてお前と一緒に討伐に出るのはいつぶりだったかな?」

「最後に出たのは、俺が剣聖って言われる前だったかな」

「ブレイブもエクレも、一緒に行くぞ!」

「「はい!!」」


ラウンド2、スタートだ


ーカヌレside


「……遅い…」


モナが来ない……いやいつものことだけどさ…いつものことだけどさ…!また起こしに行くのめんどくさいんだけど!!!


「うぉぉぉぉぉ!!!」


とか思ってたら来た、全くどこをほっつき歩いてたんだか……!


「モナ!遅い!」

「い、いや、悪いとは思ってるんだけどさ……その、色々あって……!」

「言い訳はいらないから!全くもう、後輩に示しがつかないったら!」

「それは……すんません…」


肩を丸めて小さくなるモナ…相変わらずだらしないんだから…


「……ん?なんか良い匂いが……」

「え?あ、あぁ、これかな」


「はむっ」


「……あの、カヌレさん?」

「はっ!?」


し、しまった!?獣人としての本能が!!??


「……とりあえず、後輩達のとこ行くか」

「……うん」

「食ってからな」

「……うん」



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