第20話[どんな集団にも熱狂的な奴はいるモノで]
「……あれ?ブレイブは?」
「あぁ、[鍛冶屋があるみたいなので行ってきます!]と向こうのほうへ走っていきました」
えぇ……来たばっかりの街のこと理解しすぎだろ…鍛冶屋ってこの街の奥の方だぞ…
「そういえばブレイブって刀も自分で手入れしてたっけ……」
「ちゃんとした鍛冶屋の人にも頼みたかったんですかね…?」
「そうかもな……っと、紹介するよエクレ、こいつが俺の親友、ガナッシュ・ステングスだ」
「よろしくな、エクレちゃん」
「はい、よろしくお願いします」
そのまま握手する2人……なんかガナッシュ、ニヤニヤしてる?
「で?この子とどんな関係だ?」
「はぁ?いや普通に旅仲間だけど…」
「……まぁそうかぁ、そうだよなぁ」
かと思ったらため息をつく、なんだったんだ……?
「いや、なんでも無いんだけどさぁ〜」
「???」
[どうしたんだろう?]と言った感じで見つめ合う俺とエクレ、一体何でそんなため息を…?
「ま……昔は女と一緒にいることもできなかったくらいだったのになと思っただけだよ」
「え!?そ、そうだったんですか!?」
「ん、んー、まぁ、それに関してはすぐ治ったんだけどな…」
ガナッシュのやつ余計なことを言いやがって……そう、俺はギルマスに保護された当時は女性の声を聞くだけで恐怖心を覚えていた、それ故に女性にキツく当たってしまうこともあった、それを恐れずに俺に話しかけて来てその恐怖心を消し去ってくれたのがメリナだったのだ、だからこそメリナに惚れて告白、プロポーズ、その上結婚までしたわけだが…
「オール君オール君」
「ん?」
くいくいと袖を引っ張られる、こっちを眺めているエクレが俺の袖を引っ張っていたらしい、何か聞きたいことがあるのか?
「この人が、オール君の大親友さんなんですか?」
「あぁ、その通りだ、剣聖って呼ばれるくらい強い男で、すごい愛妻家、怒りに飲まれると拳が出るのが玉に傷だが、人間性は保証するよ」
「……って言うことは、彼はオール君のあの話を知っている1人なんですね」
「まぁそうなる、というか、俺が覚えてない相談事まで覚えてるからそう言うところは油断できない…」
「油断ですか……」
?マークを頭の上に浮かべ間抜け顔で首を傾げるガナッシュ、こいつこれで戦ってる間はキャラが変わるからなぁ
「ま、せっかくだしお祈りでもしていこうぜ」
「え?お祈りですか?……なんでです?」
[なぜお祈りに?]と言った感じで今度はエクレが首を傾げる、なるほど、この街に来たことがないんだからわからないか
「この街の冒険者は事あるごとに教会の方に足を運んでお祈りするんだよ……郷に入っては郷に従えってな、俺たちはそれに倣ってこの街に来て何かあったら神様に祈るようにしてたんだ」
「へ、へぇ……」
まぁ、エルミア教の中でも教会で事あるごとにお祈りしたりするのはここみたいに狂信的な信者が集まった街だけだ
「あ〜でも、お前的にはあんまり行きたくないか?」
「いや行くよ……いやまぁ、拒否る理由もなくなっちったけど」
「え?拒否る……?」
またまたわからないと言うように先ほどの反対側にコテンと首を傾げる、「ついてくればわかるよ」と彼女に伝えて先を歩く俺たちにエクレは付いてきた
ー
「……」
ついた、この街の大きな教会、エルミア教のデカさを感じる巨大な教会だ、シスターさんと話をして教会に入れてもらう、エルミア教は信徒じゃなくても話さえ通せばお祈りができるようにしてくれるのだ
「……」
キョロキョロと周りを見渡し、アイツがいないのを確認する、今日はちょうど居ないみたいだ……エクレに不審がられないうちに女神像の前に跪き両手を重ねる……作法とかもよくわからない俺はこうするしかない…
「……」
エクレはしっかりとした作法でお祈りをしている、さすがエルミア教の信徒だ、シスターさんもエクレの様子を見て微笑んでいる…なんか、俺とガナッシュが居づらい!!!
(……神様、ご報告致します…)
別にエルミア教を信仰しているわけではないが、せっかく教会に来てお祈りをしているのだからここに来るたびにしっかりとエルミア教の神様にお祈りしておくようにしている……女神・ルースリアがもし本当にいたとしたら自分を信じているわけでもない奴にお祈りされてしかも報告されているわけだから申し訳ないが……正直、別に信じてるわけじゃないし……いやじゃあ教会に来るなよって話ですよねすいませんでもなぜか足を運んでしまうんです
(なんでかわからないけど、この街に来ると報告したくなるんだよな……)
カヌレやモナにも[この街に来るとお祈りしたくならない?]って聞いても「いや別に」って帰って来たし……俺、思ったよりもこの宗教に入り込み始めたのかもしれない
(……まぁ、そこら辺はいいか)
その後、俺はメリナと別れたことや旅に出たこと、ブレイブとエクレと言う新しい仲間と共に旅をしていること、オリオンデールで起こったことなどを全て報告した、その後、[熱心にお祈りされていましたね]とシスターさんに言われ、エクレとガナッシュは先に終わっていることに気がついた
ー
「今日はあいつ居なかったみたいだな」
「そうだな、正直言ってあいつのことだからいつものようにいるだろうと思ってたけど」
「あの、先ほどから話をされてる、[アイツ]って?」
誰のことかわからないのだろう、ずっと気になっていたのかエクレが質問して来た
「あぁ、あいつっていうのはこの街に住んでるエルミア教の信徒の1人だよ、別段悪いやつじゃないんだけどどうしても強引な面が否めなくてな」
「信徒の方だったんですね、なるほどなるほど…」
「そう、そしてあいつは隠密行動が得意で、いつの間にか後ろにいることも……」
ふにゅっという感覚と同時に、視界が真っ暗になる、どうやら後ろから両目を手で防がれているらしい
「だーれだ?」
……見つかったか
「マカロン……だろ?」
「!……ふふふっ」
両目が解放される、そのまま後ろを振り返ると……
「お久しぶりです、オレオール様」
この街にいるエルミア教狂信者の中でも最も熱狂的と言えるエルミア教の信者、[マカロン・イレーネ]が立っていた
「最近全然来てくれて無かったじゃないですか、寂しかったですよ?」
「遠距離恋愛してる彼女みたいなことを言うな」
ズバッと一つツッコミを入れる、するときゃんっと声を上げた
「相変わらずいけずな方ですねーオレオール様はー」
「そんな気もないくせによく言うよ」
「ありますよ?目的は、オレオール様と一緒に……」
「……」
この先に言うことはだいたいわかる、ここでハーレムモノの主人公なら[オレオール様と一緒に添い遂げること]と言われるのだろう、だが俺に向けられる言葉は違う
「たっくさん人助けをして、エルミア教のトップを走り抜けるんです!」
こいつは本気で俺をエルミア教に入れようとしているのだ、ちなみに俺はこいつのことが嫌いではないがある意味近づきがたいのでこの街に来たく無かったのはこいつのせいとも言えるかもしれない
「前から言ってるだろ、俺は宗教とかそう言うのに入るつもりはないって」
「そんなことおっしゃらず!共にエルミア教で人助けの日々を送りましょう!」
「その心がけは立派だがな、誘い方のせいで悪徳宗教のそれに見えるぞ」
言ってることは[人助け]と言う立派なモノなのだが、こんなふうに誘われているともはや金をむしり取る方の宗教だ、他の街の落ち着いたエルミア教の方々と話してみて俺はすんごい驚いたのは良い思い出だ
「……オール君…」
「?え、エクレ……?」
な、なんだ……?エクレがいつもと違うような…
「エルミア教、入ります?」
「」
ブルータス、お前もか
ーモナside
「ふんふふんふふーん」
今日は寝坊せずに起きるべき時間に起きられた、この分ならカヌレに怒られることもないだろうな
「お、おっちゃん、焼肉棒二つ」
「へいよっ!300ルピだよ!」
財布から丁度300ルピを取り出しておっちゃんに渡す、そのまま焼肉棒を二つ受け取ってギルドへの道を歩く、一本は俺が食うとして、もう一本はカヌレにでも渡してやろう
「モナくん!!」
「ん?この声って……」
「ちょっと来てもらえるかな!?」
「え、え!?」
声がした方向に振り返ろうとして、その前に肩を掴まれた、そのまま引き摺られていく
「え!?あの!?俺これから後輩の指導がぁぁぁぁぁ!!!!」
「で、なんのようなんですか、メリナさん」
「あの男について調査してくれない!?」
……突然なに言い出すんだこの人
ー
トケイソウの花言葉[信仰][信心][聖なる愛]
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