第19話[こんなところで親友と再会するとは]

朝起きてから数時間、喋りながら歩いていたら、ようやくエルミアの街の入り口前についた


「着いたな、エルミアの街!」

「つ、疲れましたー……!」

「立派な門ですねー……」


エルミアの街はエルミア教の大きな教会がある街だ、その分活気があるのか街も大きい


「それじゃあ、俺たちは街に入るための審査受けるかー…」

「そうですね…結構並んでるみたいですけど」

「大きな街なだけあって色々な店とかがあるからな、その分商人たちが……って、この解説2回目か?」


確かビギンズタウンの時にも似たような説明したような気がする、まんまその通りではない気もするが、[街が大きいってことは人が集まるから商人たちがたくさん出入りする]という説明はした気がする


「私もちゃんと並ばないとですね」

「あぁいや、エクレは先に行っててくれ」

「え?」

「ほら」


門の方を指差すと、[エルミア教徒の方はこちらへ]と書かれた看板が見えた


「……あれって、オッケーなんですか…?」

「この街はそういう物だ」

「エクレさんがエルミア教徒っていうのを示すナニカってあるんですか?」

「えぇ、一応、このネックレスが」

「なら、それを使って先に行っていてください、僕たちもすぐ合流しますから」

「わ、わかりました…先に行ってますね」


急いで走っていくエクレ、最後まで申し訳なさそうにこちらを振り返る彼女に[優しいんだな]と俺たちは列に並ぶのだった



「いや時間かかったー……」

「思ったより待ちましたね…」


この街は相変わらず待ちが長い……この街は宗教都市ということもあって、商人の人や旅人だけでなく、教徒の人もたくさん行き来する、そのため街の出入り口に教徒用の道があるのだが、それでも新しく入信する人たちとかも多いから、ここはよく並ぶことになる


「……あれ?エクレさんは…?」

「?えっ……と」


キョロキョロと辺りを見渡す……っと、男に絡まれてるな…いわゆるナンパ、という奴だろう、なんか先に行かせたの間違いだったかも


「どどど、どうやって助けましょう!?」

「慌てるなって、こういう時は普通に行けば良いんだよ、普通に行けば」

「え?ふ、普通に行けば…!?」


俺はナンパされてるエクレに近づく、こちらに気がついたエクレが困り顔から安心した顔になった


「オール君!」

「よ、エクレ、お待たせ」


あー君付けで呼ばれちゃったかー、兄とか言って適当に誤魔化そうと思ってたのにー…しょうがない、路線変更だ


「俺の友達がお世話になりました、それで、どうかなさいましたか?」

「ぇ、ぁ、あー……お友達、さん、なんですか?」

「えぇ、エクレは私の大切な友達です」


そういうと、男はくくくと笑い始めた


「ただの友達がしゃしゃり出てくるな!彼女には今俺が話しているんだ!」


あーやべーこいつめんどくさい奴だー……


「あー……ほら、落ち着いてよく考えろって、そういうの成長してからとんでもない黒歴史になるからやめときな?それにほら、エクレ嫌がってるから」

「うっせーぞおっさん!!!」


なんでこいつこんな自信満々なんだよ……


「おっさん……?オール君はおっさんじゃありません!」

「いや、22って、小さな子からしたらおっさんって言って言いそうな年齢だよ、小さな子からしたらね」

「でもオール君は若者じゃないですか!」

「と言うか今それよりも、とんでもない煽りをかましましたよね、オレオールさん……」


え、煽り?


「て、てめぇ……この俺の精神年齢が小さいガキだってのか!?」

「げっ!」


しまった、今の発言って聞きようによってはそう言うことになるのか…!?


「っざけんじゃねぇぞぉぉぉ!!!」


激情し殴りかかってきたチンピラ、まぁ、流石に、この程度、なら


「ほら暴れるなって」


チンピラの手を掴んで拘束する、いやまぁ、流石にこの程度では負けないわ…


「ぐっ、離せっ!離せよ!」

「エクレのことはもう狙うなよな」

「わかったよクソッ!」


彼を離すと舌打ちをして去っていく……流石にあぁ言ったのは悪かったな…


「オール君、ありがとうございます」

「いや、気にするなって、こう言うことも起こりえたってのに、考えずに先に行かせた俺の責任だ…というか、あいつが逆上したのは俺のせいだし」

「オレオールさん、結構無茶しますよね……」


なんかこう、助けようとして色々と厄介なことにしてしまった……


「はぁ……」

「とりあえずまずは、魔物素材の換金と行きましょう」

「そうだな、えーっと換金所は」

「あっちにあるみたいですね」

「えなんでわかったの?」


結構曲がり角とか行った先なのに、え?この街に来たことあるの?


「えぁぇ?あ、あはは、い、良いじゃないですかなんでも、さ、早く行きましょう!」

「あ、あぁ、そうする[オレオール?]か……?」


その瞬間、横から聞き慣れた声が聞こえてきた、俺の兄貴分で、相談にたくさん乗ってくれて、今となっては俺の大親友の男の声だ


「お前、なんでこんなところに……!?」

「そ、そりゃこっちのセリフだよ……ガナッシュ!」


ガナッシュ・ステングス、剣聖と呼ばれる男だ



「なるほどな、それで今、お前はあの2人と一緒に旅をしてるってことか」

「そう言うこと」

「クレディス・ブレイブくんと、エクレ・アロウテクトちゃんか……良い子達そうじゃないか」

「そうなんだよ…めちゃめちゃ良い子でさ…それは良いとして、ガナッシュはなんでこっちに?」

「俺たちは任務上がりの休憩旅行だよ、ほんときつい任務だったぜー……それで街を散策してたら、急に騒ぎが起きたから何事かと思って近づいたらお前がいたってわけ!」

「いや本当、突然ガナッシュの声が聞こえてきた時はびっくりしたよ」

「そりゃこっちのセリフだよ!なーんも言わずに出ていきやがってー!」

「うぉぁ!?いだだだだいたい痛いって!!!」


首に腕を回されて軽く絞られる、こう言うやりとりは久しぶりだ、旅に出始めてからはこう言うやりとりはマジでなかったからな


「ったく……それで?お前が出てったのは、メリナ・マーリスの浮気が理由か?」

「!おまっ、それどこで……!?」

「お前の後輩2人から聞いてな、本当はお前に直接聞きたかったが?」

「ゔっ、わ、悪い……お前に話すと、絶対メリナをボコボコのボコにするかと思って」

「んなの当たり前だろ、相手が女とか冒険者には関係ねぇ」

「お前はそう言う奴だ」

「……で?どうなんだ?結局振り切れたのか?」

「あぁ、もうほとんど吹っ切れたよ」

「……そうか、思ったよりも早かったな」

「なんだよ、いつまでもウジウジしてるような奴だと思われたら困るぞ……メリナの様子は?」

「様子も何も、あれから一歩も家から出てこないんだとよ」

「は?」

「お前の後輩2人に聞いたことだ、間違いはない、それに、俺もギルドで姿を見てない」

「……なるほどな」

「気になるか?」

「いや、そこまでって感じ……確かに最初は逃げ出すために始めた旅だけどさ…振り切れたには振り切れたし、あとはメリナがどうなってようが俺には関係ない」

「……そうか…メリナ・マーリスのことは、ギルドの他のメンツには知られてないよ、大大大問題なことだが、本人が来ないんじゃギルマスもむやみやたらにそのワードを使えないみたいでな」

「そうか……」


ふとメリナの顔が頭に浮かんだ、俺の記憶の中にある彼女はいつも優しい笑顔をしていて、毎日をとても楽しそうにしていた、それと比べてしまうと今がどうなのか少しだけ気になったんだが…流石のガナッシュにはそこまではわからないみたいだ……にしても家に引きこもってるって……


「換金終わりましたー!結構大金になりましたよーオールくーん」


2人には魔物の素材の換金を頼んでいた、ガナッシュと出会ったと言うのもあり、久しぶりに懐かしい会話に花を咲かせたかったのだ


「……あれ?ガナッシュ、お前の仲間は?」

「今ならちょうど別行動でな」


ーカヌレside


「あ!せーんぱーい!」

「ふぎゅっ」

「魔物の討伐完了です!」

「う、うん、見てたよ、頑張ったね」


シフォンちゃんが魔物を倒してきたそのまま抱きついてくる、随分と懐かれちゃったなぁ……


「これでいつでも先輩達の力になれますね!」

「その前にもっと経験積もうね」

「ぶー」


この子を見てると昔の自分を思い出すなぁ、先輩にべったりひっついて、強くなったからって調子に乗ってたあの時期を……あの後痛い目見て猛省しました


「先輩って、私のお兄ちゃんに似てるんですよね」

「え?シフォンちゃんのお兄さん?」


シフォンちゃんってお兄さん居たんだ、そういう話なんてされてないから全然知らなかった


「はい、とってもとっても優しいお兄ちゃんでですね、ずっと、ずっとずっと大好きだったんです」

(……?大好きだった…?)


寂しそうな目で空を見上げるシフォンちゃん、この子とお兄さんの間に、一体何が……?


「……そう言えば、モナ先輩は?」

「寝坊」



ニチニチソウの花言葉[友情]

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