第14話[持つべき物は友]
「あ、オレオールさん、おはようございます」
「よ、エクレ、おはよう」
みんなからの手紙をマジックポーチにしまい軽く部屋を整理した俺は廊下に出た、するとちょうど移動しているタイミングのエクレに遭遇、一緒に朝ごはんへ向かうことになった
「今日はこの街から出ますか?」
「いやぁ、昨日ついてから色々あったし、今日1日はこの街をのんびり観光でもするつもりだよ、鉱山だから活火山の温泉とかはないけど、その分装飾屋とかは豪華なものが多いんだ」
「装飾屋……ネックレスや腕輪などですね」
「そうそう、そう言ったものには大抵、鉱石の秘められた力がうまく発現するようにされてるから、結構重要だったりするしな」
装飾屋と侮ることなかれ、ただの飾りならともかく、ここの装飾屋の商品は鉱石自体の力が発揮するように加工されている、例えばルビーだったら炎とか、サファイアだったら氷とか…なんでそう言う違いが出てきているのかはわからないが、一説によるとその属性の魔素が固まってできているからと言う話だ
(まぁ、[魔素が固まっているのならそこに魔物が寄ってくるだろ]と言うのがその説の否定なんだけど)
だからあんまりその説は現実的じゃないな…かと言って他に有力な説があるわけでもないからその説がよく知れ渡っていると言う感じだ
「そういえば、オレオールさんも魔法が使えたんですか?」
「?どうした?急に」
「いえ、昨日の戦いで、オレオールさんから強い魔力反応があったので…まぁ、その結果あの剣は粉々に砕けちゃいましたけど……」
「あぁ、そう言うことか…残念だけど俺は魔法は得意じゃないな」
「ふむ……?」
「あれは剣自体に施された魔法を俺の魔力で起動させただけだよ、俺みたいなやつは自分の魔力の流れを操ることはできてもそれを変換することができないから、あらかじめ魔法が施されている武具に頼らないといけないわけだ」
「なるほどなるほど…それをうまく使うことができれば、私も戦うことができるように……」
……やっぱりそれのことを気にしてたか…
「あんまり背負い込むなよ」
「え?」
「エクレはまだ若いんだから、これからの努力でどんな風にも変われるさ、魔法はともかく、剣や槍とかの扱いなら向き不向きはあっても努力さえしてれば出来るようになる、もし剣を習いたいなら、良い師範の知り合いがいるから紹介するよ」
「オレオールさん…」
「そうなると、俺とブレイブの2人旅が始まるわけか、それはそれでなかなかアリだな」
「むっ、オレオールさんは私がいない方がいいんですか?」
「いやいや!そう言うわけじゃないって!まだエクレのこともブレイブのことも全然知れてないしさ、ただ将来的にそう言うのもアリだなと思っただけだよ、剣を覚えたエクレと、もっともっと強くなったブレイブ、俺が見る限り、お前達はコンビでもうまくやってけそうだしな」
「……そこはトリオであって欲しかったですけど」
「え?」
「なんでもありません!」
いや別に聞こえなかったわけじゃないんだけど……でも、そうか、エクレの中で、もう俺やブレイブは大切な者になっていたのか…
「……もし、もしですよ?」
「?」
「もし、誰かに剣を教わることになったとして、お二人とも離れることになったとしても…すぐに剣を覚えて、お二人のところに帰ってきます」
「…ふっ、あははっ、そっかそっか、もしそうなったら頑張れよな」
「な、なんで笑うんですかー!?」
「いやすまん、なんだか微笑ましくなってさ」
「微笑ましい…?」
「いやいや、こっちの話」
「なんですかそれー!」
健気だなエクレは、まだ出会ってまもない、成り行きで一緒に旅をすることになっただけの仲なのに、真剣に俺たちのことを考えている、とても優しくて…そして、とても強い子だなと思った
ー
「……あれ、ブレイブ、まだ起きてないのか?」
「この宿の食堂にはいないみたいですね……まだお部屋にいるんでしょうかね?」
「そういや、ビギンズタウンの宿の時もそんなことがあったような……」
朝食を食べ終え、なんとなく気がついたことをふと投げかける、エクレもブレイブが今どこにいるのかわからない……か
「あれ、お二人とも?」
噂をすれば影、早速ご本人の登場でした
「お、おはよう、ブレイブ」
「おはようございます、ブレイブさん」
「おはようございます、早いですね?」
「そう言うお前は、鍛錬か?」
ただ寝ていただけではかくことはないであろうほどの汗をかいてるブレイブ、息のあがり方やその汗を見るに、彼が鍛錬をしていたのだろうと言うことは容易に想像がついた
「はい、実は日課なんです、毎朝刀を振って精神統一をする…と言うのが、まぁ、精神統一と言ってもそんな大それたことはしてないですけど」
あははとほおをかくブレイブ、懐かしいな、俺もブレイブくらいの時はただひたすらに強くなろうとして剣を振い続けていたなぁ
「昨日の戦いでは、まだまだ自分の未熟さと言うものを叩きつけられましたから、今日はいつもより多めに鍛錬しちゃいました」
タハハ、と申し訳なさそうに笑うブレイブ、いや良いことだと思うけどなぁ……
(というか、自分の未熟さってアレかな……)
2人して別々とはいえデカブツにぶっ飛ばされたのを思い出した……あれ、俺が先にくらったからそれを心配したブレイブがそのままぶっ飛ばされたって感じだったし…
(せっかくエクレからこの剣をもらった……もらった?…借りたわけだし、これを使いこなせるようにしておかないと…)
俺も1から修行し直しだな……そういう意味でも、この度には意義を見出せそうだ、というかそれより前に、すぐに特訓という行動に移すブレイブのストイックさに脱帽だな
「で、お前朝食食ったのか?」
「え……あっ」
「……お前、忘れてたろ」
「……す、すぐ食べてきます!あ、でもその前にこんな汗だらけだったら浴場行ってからの方が良いですよね!?浴場行ってきます!」
「え?お、おう……今日はなんの予定もないから、あんまり急がないで良いぞー!」
「…なんというか、思ったよりも抜けてますね、ブレイブさん」
「あのまっすぐなとこは悪いことじゃないとは思うんだがなぁ」
浴場へ向かうブレイブの背中を目で追う、あいつはまだまだ強さを追い求めているんだな、傷つけるための力ではなく、守るための力を……すれ違った時は別に汗かいてなかったように見えたけど、汗ひいたのかな、汗引くの早
「俺たちも見習わないとな、あいつのあぁいう真っ直ぐ一直線に突き進むところ」
「ですね」
こくりもエクレが頷く、やはり彼女にとってもブレイブの意識の高さはぜひとも真似したい物らしいな
「それじゃあブレイブが風呂から出て飯食い終わるまで何してようか…」
「せっかくですし、ちょっと街を見てまわりませんか?どちらもそんなに早く終わる物ではないですし」
「あぁ、良いかもな、ちゃんとした店に寄るのはブレイブが合流してからにするとして、街をそれとなく見て回るくらいなら許されるだろ、どこに何があるのかとかも把握しないといけないしな……っと、俺は外に出る用意、というか準備はいつでもOKだけど、エクレは?」
「ダンジョンや魔物の群れと戦うわけでもないですし、全てマジックポーチにしまっていますから安心してください」
それもそうか……普通に剣がいつでも抜き取れるような位置に置いておくとこだった…まさかこんなところで抜刀しよう物なら憲兵に無言で連れていかれかねないし
剣を鞘ごと外し、マジックポーチにしまう……こういうのって、前は休日にしかほとんどできなかったなぁ
ーメリナside
朝、久しぶりにベッドで寝たらしく、しっかり体を休めていた……朝起きてすぐ、私はご飯を食べるでも顔を洗うわけでもなく、先日の出来事について考えていた
(解いたって一体……?というか、あの粒子になって消えていったのはなんだったの……?)
今までの冒険者人生でそんなことをする人や魔物なんて見たことがない、テレポートみたいな高レベルの魔法なら城仕えの魔導士が使えるみたいな噂を聞いたことはあるけど……それも一瞬で場所を変える、みたいな感じで、あんな体が粒子のように崩れてなくなるなんてものじゃなかった気がする
(それに、あいつの言ったことも気になる)
『まぁいいでしょう…我が主からの命は完遂しましたから』
(我が主人……命令……?)
なんだそれ、普通に意味がわからない……あいつが私に近づいてきたのは、とある存在の命令だったってこと?だとしたら、その命令した存在は誰?なんで私を狙って…
(わからないけど、こんなことでウジウジしている場合じゃない、私は)
その時、昔読んだ物語を思い出した、圧倒的な力を手に入れた魔王が遠い異国の力やってきた勇者に封印されて世界に平和がもたらされたという神話だ…
「……いやいや、そんな、そんなまさか…」
ー
黄色のガーベラの花言葉[究極美][親しみやすい]
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