第11話[岩石魔窟・グラニットタイタン]
坑道に入って数時間が立った、ここまでの道は単純で、魔物の群れが出てきては倒す、この繰り返しだ、なんとも言い難いが、ここが魔物の巣窟になってしまっていることは火を見るより明らか、こりゃ鉱山関係の人じゃ対処しきれないだろう
「にしてもっ、これじゃまるでダンジョンだな」
「あぁ、もはやこの坑道はダンジョンの一つにカウントしていいだろうね、魔物がまだまだ弱い奴らだらけなのが救いかな」
「ブレイブが辺りを照らしてくれなきゃマジでなんも見えなくて詰んでたかも」
坑道の奥、どうやら光を発する魔石魔道具が壊されているらしくこの道は真っ暗だ、ブレイブが手をかざして出してくれた光の球体がなければ魔物が来ていることにすら気がつけなかったかもしれない
「でも、さっきからどんどん出てきますよっ、と、これはちょっと異常じゃないですか?」
いくら弱い魔物でも、一度に大量に襲い掛かってこられたら多勢に無勢になる、だからなるべく処理しながら進んではいるが…まだまだ魔物がいなくなる気配はない、むしろ奥に進むにつれてどんどん増えているくらいだ
「この坑道ってそんなに深いんですか?」
「いや、領主からもらった大まかな地図によればそこまで深くないみたいだけれどね」
「だとしたら、さすがに密度的におかしくないか?」
「確かに…まるで高頻度に魔物が生成されているかのような…」
「いよいよ、あの執事さんの言ってたやつが怪しくって来たな」
「[暗い光]ってやつですか?」
「それそれ」
「確かに、その暗い光とやらが悪さをしているようにしか思えないな」
俺たちの意見はほぼほぼ一致だ、その暗い光とやらがこの坑道に入り込み魔物を生み出しているという意見だ
…そして、俺たちは最奥にたどり着いた
―
「おいおい、こりゃぁ」
「なかなか厄介だね」
奥にいたのは魔物だ、しかし先ほどまでの魔物とは違う、周りの岩石で形成された巨体なのか、体のあちこちに宝石のような鈍く輝く何かが配置されている、魔物というよりはバケモノという表記が正しい気もする
「見ろ、オレオール…あの魔物の腹」
「腹…?」
クラフティの言うようにあの魔物の腹を見ると、そこからポンポンと現れていた
「なるほど…あの魔物がこれまで倒してきた魔物を生み出していたんですね」
「おそらく、自分の中の魔素を変換していたのだろう、岩の魔物のようだし、あいつの周りだけ不自然に広くなっているのもそれで説明がつく」
「周りの岩石を食べて成長して、そのエネルギーをもとに魔素を作り出す、ってことですか!?」
「あぁ、前例もなく、信じられない話だが、それ以外考えられない」
「そんな魔物いるなんて聞いたことないが…ま、考えられる状況はそれくらいか」
「でどうする?奴は私も見たことがない魔物だ、ここ固有の魔物か、ボスの可能性が高い」
「どうするも何も、ここで引き返したらまた何時間もかけてここまで来なきゃいかなくなるだろ、それに、引く気なんてないくせに」
「おや、ばれてしまっていたか」
「当然…考えはあるよな?」
「もちろん、天才魔導士だからね」
自分でいうんだ、それ
「オレオールとブレイブ君は魔物たちを引き付けておいてくれ、その間に私は準備を進める、エクレ君は回復で二人を支援」
「わかりました!」
「だ、大丈夫でしょうか…」
「なんか、不安だ…」
「まぁまぁ、それじゃ、討伐スタートだ」
―
まず俺とブレイブが先に出る、こちらに気が付いた巨大な魔物がどこからか雄たけびを上げ、生み出された魔物がこちらに襲い掛かってきた
「ブレイブは雑魚たちを処理してくれ、俺はでかい方を引き付ける!雑魚を倒し終わったらサポートしてくれ!」
「了解です!はぁぁッ!!!」
ブレイブが刀から斬撃を飛ばし、雑魚たちを遠距離で倒していく、それでも倒れず近づいてくる魔物は容赦なく切り捨てている、やはり筋がいい、俺はというと、雑魚たちを倒しながら一気にデカブツに接近した
「そ、ら、よっ!!!」
デカブツが雑魚を生み出すのをやめ、こちらに対応してきた、さすがに剣でこの硬い体にダメージを通すことはできなかった
「まぁなんとなくそう思ってたけど!」
正直言って剣でこいつを倒そうだなんて無理がある、それこそへそで茶を沸かすほどだ、ハンマーやつるはしみたいなものならともかくとして、普通の刀じゃまず無理、どうするか悩んでいると、デカブツに突然炎が当てられた
「二人とも!そのまま注意を引き付けてくれ!」
クラフティがそう叫ぶ、この断続的にデカブツに当てられている炎はクラフティの魔法攻撃らしい
「注意を引き付けてくれったって、こっちもギリギリなんだがな…」
デカブツの攻撃をかわし、なんとかこちらに引き寄せているのがやっとだ、なにせこっちの攻撃は全く通じないわけだし、さてどうするか
「ここです!」
「!」
突然デカブツの動きが遅くなる、どうやらブレイブがフォトンザンバーをデカブツに巻き付けて輪のようにして動きを制限させているらしい
(そんなことできたのかそれ!)
ブレイブから放たれた鞭は今、あの刀から離れ独立して巻き付いている、てっきり刀から伸ばしている状況が常かと勝手に思ってた
「あまり長い間は動きを制限させられません!大きさも大きさですし、すぐに破壊されてしまいます!」
「少しでも動きが止められるなら万々歳だって!」
今こうしている間にもクラフティが断続的に炎をデカブツに当てていっている、今現状において俺たちは時間稼ぎをしているわけだし、動きを止めるのは有用だ
「クラフティさん、あ、あとどれくらいの炎を…?」
「解析をかけたら強度が出たから、そこから計算して、あと十二発ってところかな」
クラフティのそばにいるエクレの質問の答えは十二発、つまりそれだけの時間を稼がないといけないわけだ
「ぐっ!?」
しまった、フェイントか…!行動パターンを変えてきやがった!思いっきりデカブツのフェイントをくらい、壁にたたきつけられる
「オレオールさん!?っ!!!」
どうやらブレイブも吹き飛ばされたらしい、いやこれ、えげつな…しかしどうする、正直体を動かそうにも痛みが先行してうまく歩ける気がしないのだが…ここで動かないと、二人が危険にさらされる、いかにクラフティといえど、エクレを連れて撤退が関の山だろう、離れた場所に飛ばされた俺とブレイブを助ける余裕はない
「…イユ…ヴ」
その瞬間、体を支配していた痛みが蒸発した水のように消えた、傷口はふさがり、まるで何事もなかったかのように動く、それはブレイブも同じだったらしく、遠くにいても彼が困惑しているのが分かった
「え…?一体、何が…」
「考えるのは後だ!もう一度引き付けるぞ!」
「!は、はい!」
もう一度デカブツの前に立ち、軽く攻撃しては退避を繰り返す、けれど、なぜかどれだけ攻撃してもデカブツは俺たちの方を向くことすらしない
「く…しょうがねぇなぁ!」
力を籠め、自身の魔力を最大限使う、そのままデカブツに向けて一撃を当てると、デカブツの体の一部にヒビを入れることが出来た…が、さすがにデカブツの硬さに耐えきれなかったのか俺の持っていた剣は粉々になってしまう
「まじか…」
だが、そのおかげかこちらに注意を引くことはできた、あとはクラフティの準備を待つだけだ
「ふぅっ!はぁっ!!!」
ブレイブも先ほどのようにデカブツの動きを止めてくれる、武器がない俺は防ぎようがないので助かった…そして
「二人ともよく耐えてくれた!これで、終わりだ!!!」
クラフティが魔法を切り替え、デカブツに向けて氷属性の攻撃をぶつける、するとデカブツの体にヒビが入っていき、ガラガラと崩れた
「わっ…」
「す、すごい煙…!」
「…?あれは…?」
奴が崩れた煙の中、何か見えた気がしたが、煙が晴れたのちにそこを見ても、何もいなかった
「ぐっ……!?」
頭が急激に痛む、先程のダメージが回ってきたのかと思ったが違う、これは内側からの痛みだ
「お、オレオールさん!?」
「か、回復がうまくいかなかったのですか!?」
2人の声が少しずつ遠ざかっていく……俺は…
ー
『お兄ちゃん!お兄ちゃんってば!』
『ん……あぁ、繧キ繝輔か繝ウ』
『もー、こんなところで寝っ転がらないでよー、心配したんだからね』
『ははは、ごめんごめん!』
『ふーんだ、もういいもん、お兄ちゃんを枕にしちゃうからー』
『おいおい、腕枕って…こういうのは彼氏にでも頼めよな』
『お兄ちゃん以上に良い男がいない、責任とって』
『そんな理不尽な…』
『顔だけで勝負しようとしてくる男は中身を成熟させてから来るべし』
『こりゃ甥っ子姪っ子は諦めたほうがいいかな』
『失礼だなー!?私も良い人見つけるもん!』
『はいはい、繧キ繝輔か繝ウが結婚するのを今から楽しみにしておくよ』
『待っててよね!絶対にお兄ちゃんより良い人を見つけて―』
ー
「!……」
ここは……坑道…?あぁそうか、俺は魔物と戦って……俺を心配そうに見つめる2人が視界に入る……迷惑かけちまったな…
―
パキラの花言葉[快活][勝利]
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