第9話[鉱石の街・オリオンデール]
「はぁぁ!!!???メリナ・シュトラムルが浮気!?」
「しっ、しー!ちょ、声でかいっすよ!」
「うぉっ、す、すまんすまん」
思わず大きな声が出てしまった…いやだって仕方ないだろう…まさかあのメリナ・シュトラムルが浮気だなんて…
「……にわかには信じられないが…2人が言うなら真実なんだろうな」
「はい、先輩から直接聞いたんです……わざわざ夜遅くに」
「……そうか…いや、なるほどな…」
なんとなくあの張り紙を見た時からなんとなく察していた、あいつのあの目、何かを押し隠している様な笑顔、すぐに気がつかなかった俺に苛立ちが止まらない
「浮気ね……冒険者をしていたいからどうこう言ってたくせに浮気してちゃ世話ねぇな」
「まぁそりゃそうですけど……」
正直に言って意味がわからない、確かにオレオールは男女関係においてアレのせいで奥手なところがある、メリナちゃんと付き合うのもかなり時間がかかった、なんとか俺やギルマスがそれとなく手伝いをすることで告白成功にこぎつけた、の割にはいつの間にかプロポーズして結婚してたが……そこの動きだけは早かったな…それはおいておいて、メリナちゃんが浮気をした理由は普通にわからない、けれど、オレオールは浮気をされて良い様な男じゃない、ヘタレではあるし度胸もないが、真面目なやつだし努力も怠らない……それに、夫には仕事を続けたいから性事情はしないと言っておきながら浮気相手とは性事情を行うなんて言語道断だ
〜回想
『……ん?オレオール、こんなとこで会うなんて奇遇だな』
『お、ガナッシュ、お疲れさん』
『どうしたんだ?お前が1人だけで食料品店にいるなんて珍しいじゃんか』
『あぁ、メリーが体調崩しちゃってさ、だから看病するために食材とか買い足そうと思って』
『?お前、料理できんの?』
『奥さんにばっかり家事させてらんないだろ、家事は夫婦がお互いにするものだから、掃除洗濯炊事その他できる様にしてるよ、メリーには少しでも楽な思いしてほしいしさ、それに、奥さんのために家事するのって、なんか楽しいじゃん?』
『そうか…早く治るといいな』
『あぁ!』
〜現在
「っ……」
あいつのあの優しさを踏み躙る様な事をするなんて……!
「……!」
気がつくと握りしめた右手に力が入りすぎていた、怒りに飲み込まれるのは良くないなと思い手を開いて机の上に置く
「それで、今メリナ・シュトラムル……いや、メリナ・マーリスは?」
「先輩が旅に出たって言うのが発覚してからずーっと家に引き篭もりっぱなしっす」
「私たちも、朝に迎えに行ったんですけど……「ごめん、今日は……」の一点張りで」
「なるほどな……罪悪感で押しつぶされている…と言った感じか……」
ちぃっ、来ていたなら鉄拳制裁の1発や2発でもしてたってのに……自業自得というかなんと言うか…そんなふうになるなら最初から浮気なんてするなよ……ちっ!クソ……!今日から遠征任務じゃなかったら家の場所聞いてボコボコのボコにしてたとこなのに……!
「とりあえず私たちは今度来るって言う新人に集中することにしたんです……先輩はしっかりと話してくれましたし……わからないところもありますが、納得としましたから」
「なるほどな……」
この2人は強いな……リーダーが突然いなくなって、しかもその理由が相手の不倫だなんて混乱してもしょうがないのに、2人はすでに冷静さを取り戻している…オレオールの教えが良かったのか、それともオレオールの人柄が影響したのか、2人はまっすぐに育った様に思える
「……情報提供感謝する、また任務で同じになったら力を合わせよう」
「は、はいっす!」
「わかりました」
……オレオール、お前の育てた後進は、しっかりと成長しているぞ…お前も間近で…もっと間近で見てやった方がいいんじゃないか……それはそれとしてあのクソ女は許さん、遠征から帰ったら処す
「……?」
ふと視線をずらすと、ちびちびと飲み物を飲む男が目に入った、あの男は確か……オレオールの様子がおかしかった時にメリナ・マーリスを連れてギルドの外へでていったあの男だ、自分のチームメンバーと一緒に笑い合っている
(……まさか…な)
同じギルド内で浮気なんてまさかそんな……そんな危険なことを彼女がするとは思えない……思えないが
(警戒しておくに越したことはないな)
今回のことで自分の見る目がないのはよくわかった、だからこそ慎重にならなければ
「ガナッシュー、そろそろ行くぞー」
「お、おー、わかったー」
俺のチームメンバーから声がかかる、そろそろ遠征任務に向かう時間だ
「……」
絶対にとっちめる
ーオレオールside
「着いたな、[オリオンデール]!」
あれから数時間後、俺たちは次の街である[オリオンデール]に到着した
「なんだか、屈強な人が多い街ですね」
「あぁ、オリオンデールは採掘の街だからな」
「採掘の街?」
エクレが不思議そうに首を傾げる、ブレイブはキョロキョロと辺りを見渡している
「あぁ、ここオリオンデールにはこの国一番の採掘場があってな、その鉱石を加工して武器にしたり、何かに組み込んだり、他の国と貿易したりしてこの国はここまで大きくなったんだ」
「なるほど……重要な拠点な訳ですね!」
「そんな戦争時の基地みたいな……」
だがあながち間違ってはない、言い方は問題だがこの国にとってこの街が重要なのは本当だ、かつてこの国が他国と戦争した時、真っ先に狙われたのがこの街だと言うのは有名な話だ
「二、三日はこの街に滞在する予定だけど、何かあったりするか?」
「僕は何もないです」
「私もありません」
「そうか……そんじゃまずは素材の換金しに行こう、何事も金がないと始まらないしな…まだまだ貯金はあるが」
「無駄遣いはしたくないですしね」
「そゆこと」
俺たちは換金所に向かう、最近頻発してきた魔物被害の結果、この国はすべての街に魔物素材の換金所が設置されたのだ
「ん……?」
換金所に向かう途中、流れる様な赤い髪が目に入った、マズイ、なんであいつこんなとこに…
「早めに歩いて行こう」
「え?そんなにいくらになるか気になります?」
「あ、あぁまぁな」
本当は今見たあいつに会いたくないだけだったのだが…なんとか見つから様に済んだ様なのでよしとしよう
ー
「ん?……」
今、どこかからかあいつの声が聞こえてきた様な……
(けど、あのやかましい後輩の声は聞こえてこなかったな……)
いつもだったら先輩先輩とあいつを慕う後輩の声や、なついている様な声、それにあいつの恋人の声が聞こえてきた様なものだけど…今日は違う声が聞こえてきていた
(ってことは、パーティーメンバーを変えたとか?)
まさかとは思うけどありえない話ではない、別に問題はないし興味もない、おそらくあいつ自体ではあると思うけど……大事なのは、あいつがこの街に来ていると言うことだ
(せっかくだし、挨拶くらいして行くか)
来た道を引き返し、声が聞こえる方に歩いて行く、大方魔物素材の換金所だろう
(声くらいかけてくれれば良いのに)
別に何かあるわけじゃないんだし……さ
ー
「結構大金になりましたね……」
「あれだけの魔物を狩ってたらそうなる気もするけどな」
「わ、私、回復しかしてないのにこんなにお金をもらってしまって良いんでしょうか……」
「一緒に旅してるわけなんだから構わないよ、それに、大金ではあるけどそこそこって感じだし」
数日間宿で寝泊まりして、3食きっちりしたものを食べていればなくなるくらいの金額だ、ここに滞在している間はこれを主に使うとしよう
「オレオール」
「げっ」
聞こえてきた声に思わず声が出る、2人は誰かわからないと言う様に首を傾げた
「私を見つけたのに無視するなんて酷いじゃないか」
「は、はは……」
赤く長い髪、携えた杖には、赤い水晶が付いている
「せっかく久しぶりにあったんだ、それぞれの近況についてでも話し合おうじゃないか」
「……クラフティ・ドゥーム……」
ー
赤色のアスターの花言葉[変化]
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