第48話 サメ術師は収穫を確かめる

 勇者と大臣を始末した俺はその場から離脱した。

 目的は達したのだから、さっさと移動すべきだろう。

 それに他の勇者が察知して駆け付ける恐れがある。


 そのまま連戦してもいいが、別に欲張ることもない。

 襲撃のチャンスはいくらでもあるのだから。


 シャドウ・サーチ・シャークの能力で地面を沈んで進んでいく。

 離脱するついでに次なる標的のもとまで移動した。

 これからすぐに仕掛けるわけではないが、いつでも襲撃できる距離にいようと思う。


 移動中に俺は新たな属性の確認も実施した。


 まずはブースト・シャークだ。

 杖持ちの勇者から取得した属性で、赤いオーラによって仲間のサメを強化できる。

 主に集団戦で重宝するだろう。


 支援系のサメ属性は既に取得しているが、その中でも最高峰の性能だった。

 強化倍率が高く、効果範囲も広い。

 一匹仕込んでおくだけで全体がパワーアップされる。

 便利なのは言うまでもない。


 次はアンデッド・シャークだ。

 ネクロマンサーの勇者から奪った属性である。

 ゾンビのサメを生み出して、噛み殺した犠牲者もゾンビにできる。


 ゾンビと言えばB級映画の定番だろう。

 サメとコラボレーションさせられるのはテンションが上がる。

 こいつを市街地に放てば、あっという間にゾンビパニックを引き起こせるはずだ。

 扱いがやや難しいが、搦め手として有効だろう。


 三つ目はインテリジェンス・シャークだ。

 高い知性を持つサメで、地面に文字を書くことで俺と意思疎通ができる。

 他のサメの指揮も任せられるそうだ。

 派手な能力ではないものの、やり方次第でとんでもない活躍をしてくれそうである。


 タイミング的に大臣から取得したものと思われる。

 属性として取得できるほどだから、きっと優秀な人物だったのだろう。

 状況次第では猛威を振るったかもしれないが、極端な劣勢とサメの暴力には勝てなかったようだ。


 そして四つ目はチェーンソー・シャークである。

 もちろんチェーンソー使いの勇者から取得した。

 映画ではサメを殺す武器として使われたりするが、これもゾンビに続いて夢のコラボレーションだろう。

 何らかの補正が働いているのか、凄まじい切れ味を誇る。

 そのため接近戦の武器にもなるはずだ。


 最後に取得したのはマッスル・シャークだった。

 その名の通り筋骨隆々のサメになり、圧倒的なパワーを獲得する。


 たまたま遭遇した騎士との戦いに使ってみたところ、突進だけで軽々と粉砕してしまった。

 騎士はまるで大型トラックに轢かれたような惨状になった。

 つまり文句なしの力である。

 大型のサメにこの属性を加えたら、基本的に何でも蹴散らせるのではないか。


 以上が新規取得した属性であった。

 収穫としては上々だろう。

 標的である大臣も始末できたのだから、好調と言う他あるまい。


 だけど油断しないようにしたい。

 これだけ便利な能力を勇者達は所持しているのだ。

 徒党を組まれれば危険である。


 今回は無傷で勝利したが、次も同じように進むとは限らない。

 気を抜かずに行動しようと思う。

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