第40話 サメ術師は報復を続行する

 大幅に上がったレベルの他にも、ステータスには変化が生じていた。

 具体的には所持スキルが増えている。

 タイミングまでは確認していなかったが、何らかの条件を満たしたことで取得したらしい。


 追加されたのは二つのスキルだ。

 一つ目が【勇者殺し】である。


 対峙する勇者の能力を大まかに理解できるようになり、さらに勇者との戦闘時はすべての能力がアップするそうだ。

 しかも勇者を殺すほどに効果が増幅するという。

 常時発動状態でも特に消耗は無いそうだ。


 かなり限定的な能力だが、これはとても便利だ。

 戦闘時の恩恵は身体能力にも適用されるそうなので、俺の弱点も多少は改善されるだろう。

 これは地味にありがたい。

 焼け石に水だろうが無いよりはマシだ。


 今後、勇者とは何度も戦うことになる。

 相手の能力を把握できるようになる上、身体能力まで補助してくれるのはありがたい。

 頼りにする機会は多いだろう。


 ちなみに取得要因は、まず間違いなく勇者の殺害だと思う。

 俺が目視しているだけでも十数人は殺害した。

 他にも巨大ザメの餌食になった奴もいるだろう。

 あれだけ殺せば、こんなスキルが手に入るのも納得である。


 二つ目の追加スキルは【魔王の因子】だ。

 従える魔物の能力を向上させて、連携力をアップさせてくれるらしい。

 さらに野生の魔物から襲われにくくなり、恐怖を抱かせることができるそうだ。


(何が要因で取得できたんだ?)


 俺はサメの上で考える。

 これはあくまでも予想だが、サメを使役する点と王都を壊滅させてたくさんの人々を殺したからではないか。

 スキル名の魔王という名称に相応しい行動だと思う。

 というかそれ以外に思い当たる節がなかった。


 王都壊滅について罪悪感はある。

 しかし、気持ちが引っ張られることはなかった。

 最初からこうなると分かって実行したのだ。

 今になって後悔するほど間抜けではない。


(この二つのスキルを使って、さらに追い詰めてやる)


 淡々と山を下りながら、俺は新たに増えたサメの属性をチェックしていく。

 種類が膨大なのでチェックしておかないと使いこなせないのだ。

 ついでに有効な組み合わせも検証しておく。


 サメというだけでネタ感があるものの、実際はかなりの汎用性を誇る。

 戦法を絞るのはもったいない。

 少しでも活用方法を増やしておきたかった。


 そうして一時間ほどかけて山の麓に辿り着く。

 いよいよ勇者召喚の関係者の捜索の始まりだ。

 王都から逃げ出した彼らは、さぞ混乱している頃だろう。

 態勢を整える前に追撃しなければ。


 俺は手のひらサイズのサメを召喚する。

 その個体は、背中に方位磁針の針が付いていた。


 こいつはサーチ・シャーク。

 俺が指定した対象を指してくれる優れモノであった。

 これで関係者を洗い出そうと思う。

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