第31話 サメ術師は新たな特性に気付く

(ちょうどレイラックから良さげな属性が手に入ったな)


 俺は活動を再開した巨大ザメの口内に魔法陣を生成した。

 そこから先ほどの要領で大量のサメを出現させる。


 ただし今回は燃えるサメではない。

 爆発能力を有したボム・シャークだった。

 言わずもがな、レイラックのスキルから生み出した個体だ。


 ボム・シャークのビジュアルには様々な種類があった。

 額から導火線の生えている個体がいれば、横腹にデジタル数字のカウントダウンが付いた個体もいる。

 胴体が丸ごとダイナマイトといったものも混ざっていた。


「……なんでだ?」


 特に意識したつもりはないのに、これだけ多種多様となってしまった。

 いや、意識していないからこそ統一感が無いのだろう。


 俺がサメに付与する属性は当然ながら後付けだ。

 本来は持ち得ない特徴を無理やり加える能力である。

 だからそもそもビジュアルが定まっていない。


 俺が強く意識しない限り、同じ個体でも今回みたいに違いが出てしまうらしい。

 今までなんとなしに召喚してきたが、これは初めての現象だった。

 爆弾に対するイメージが統一されていないからこそ発生したのだろう。


(何気に重要な仕様じゃないか?)


 属性の内容にもよるが、外見次第で性能も左右されるというわけだ。

 つまり状況によって最適な形状のサメを召喚できる。

 なかなか難しいことだと思うものの、使いこなせれば一段と便利なスキルになるはずだ。

 この世界における生存率に直結するのだから、練習するしかなかった。


 俺が新たな目標を掲げている間に、ボム・シャークの群れは落下していく。

 燃えるサメを倒して油断していた勇者達に襲いかかった。


「うぼぁっ」


 斧使いの勇者の頭に、一匹のボム・シャークが齧り付いた。

 同時に爆発が起きる。

 勇者の肉体が吹き飛び、肉片となって散らばった。


「こ、来ないでっ!」


 隣には魔術の防御を張る勇者がいた。

 ダイナマイトのサメが炸裂して、バリアー状の魔術を粉々にする。

 そこに突進した別のサメが勇者を丸呑みしてしまう。


「うおらあああっ!」


 一心不乱にサメを弾く素手の勇者がいた。

 数秒後、左右の拳をサメに食われて爆破される。

 泣きそうな顔になったところを丸齧りにされて即死した。

 体内で死体が爆ぜたようだが、当のサメは満足そうに黒煙を吐いている。


 英雄の死に絶望した勇者達は次々と死んでいく。

 誰も彼もが平等に餌だった。

 抵抗らしき抵抗もできず、最後の一人が半身を喰われて息絶える。


 そうして上空の勇者は全滅した。

 もう増援はやってこない。

 残るボム・シャーク達は地上に落下し、絨毯爆撃と化して王都の街を破壊していった。

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