第17話 サメ術師は偵察する

 路地裏を出た俺は、引き続き徒歩で移動する。

 大通りの住民に紛れて進んでいく。


 そこには様々な商品が並んでいた。

 良い匂いも漂ってきて、自然と腹が鳴ってしまう。

 美味そうな食事がたくさんあった。


 これがただの観光ならゆっくりと見て回りたいが、生憎と現在は復讐中である。

 寄り道をしている暇などない。

 いつか、堂々と食べることができる日を心待ちにしていよう。


 俺はフード付きのローブで顔を隠しながら歩く。

 それでいて、なるべく挙動不審にならないように意識した。

 変に注目されると正体が露呈してしまう恐れがある。

 できるだけ避けたい事態だった。


 王都内はあちこちを衛兵が巡回している。

 彼らは油断なく監視をしており、何かあればすぐに駆け付けてくる。

 たぶんレベルもそれなりに高いのだろう。

 彼らと目が合わないように気を付ける。


(声をかけられたら面倒だ)


 ステータスを見られると一発で異世界人だとバレてしまう。

 さらにはミノタウロスと騎士を殺した張本人だと気付かれる可能性もあった。

 そうなれば戦闘は避けられない。

 復讐を実行する前に大騒ぎになるだろう。


 村に滞在する間、俺はスキルの扱いをよく学んだ。

 人々の手伝いをする一方で、様々なサメを召喚できるようになった。

 レベルもアップしてSAMEもかなり高い数値となっている。

 正直、騎士達が束になっても勝てる自信があった。


 しかし調子に乗ることはできない。

 騒ぎが大きくなって他の勇者がやって来たら不味い。

 複数人で来られたらまず勝てないだろう。


 俺だって様々な想定をしてスキルを使ってきたが、無敵と言うにはほど遠い。

 強力なスキルを持っている人間が相手だと分が悪かった。


 具体的にどんな能力があるのか知らないが、きっと俺なんか即死させるようなスキルがあるのではないか。

 王都にいる異世界人は、ステータス検査の段階で勇者として認められるような者達なのだ。

 俺みたいに役立たずの烙印を押された人間とは違う。

 見るからに強い能力を持った連中ばかりなのだ。


 戦う時は、絶対に勝てると判断できた時だけに限る。

 それ以外のタイミングでは絶対に遭遇してはいけない。


 早く復讐した気持ちもあるが、まずは情報収集だ。

 しっかりと策を練ってから実行しなければ。


(悪意や敵意を抑えないと……気付かれてしまう)


 俺は深呼吸しながら歩く。

 すぐそばを衛兵が通過するも、特に声をかけられるようなことはなかった。

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