第9話 サメ術師はスキルを操る
「単独でミノタウロスを仕留めた力は見事だが、結局は一芸特化に過ぎない。出過ぎた真似を後悔しろ」
騎士が敵意を剥き出しにして言う。
他の者達も剣や槍や盾を手にしていた。
軍事については詳しくないが、攻守を考えたバランスの良い陣形を組んでいるようだった。
少なからず俺のことを警戒している証拠である。
(近接タイプが五人。隙を見せれば斬り殺されそうだ)
いや、もしかすると魔術を使える者が混ざっているかもしれない。
ゲームなら杖やアクセサリーを使うが、この世界にそういったルールは存在しない。
俺だって何も使わずに魔術を発動できているのだから。
剣や槍を持っているからと言って、戦い方を決め付けるのは危険だった。
スキル次第でどんなことでも起こり得る。
(反撃が怖い。五人同時に攻撃しなければ)
そんなことを考えていると、最前列にいた騎士がいきなり突進してきた。
槍を持ったそいつだけが接近してくる。
とりあえず俺の出方を確かめるという魂胆だろうか。
それとも他の四人が手出しするまでもないと考えたのか。
(舐めやがって……)
迫る騎士の動きに合わせて、俺は地面に魔法陣を生成した。
槍の突きが放たれる寸前、サメが出現して騎士に喰らい付こうとする。
かなりきわどい角度だった。
必殺の牙が鎧の脚に触れようとする。
「くそっ」
ミノタウロスの二の舞を避けるべく、騎士は槍の狙いを俺からサメに切り替えた。
薙ぎ払うようにしてサメに叩き込むも、硬い衝突音が鳴り響く。
槍の穂先は、サメの頭部から生えた二本の角に阻まれていた。
そう、サメが角を持っているのだ。
全体的な色合いも茶色く染まり、ごつごつとした質感になっている。
(よし、成功だ)
この変化はスキルの仕様であった。
先ほど流れ込んできた情報だが、俺の【サメ召喚】は喰らった獲物の特性を記録し、呼び出すサメに付与できるのだ。
だから丸呑みさせたミノタウロスの能力をさっそく反映させてみた。
結果、望み通りのサメが出現した。
ミノタウロス・シャークとなって騎士の槍を防げるようになったのである。
特性の付与には魔力が余計にかかるそうだが、大したコストではない。
サメに設定ガン無視で属性を加えられるのだから。
この無理やり感は、まさにサメ映画と言えよう。
ますます俺にぴったりのスキルだった。
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