第7話 サメ術師は報復を開始する

「はは、マジかよ……」


 へたり込んだ俺は力無く笑う。

 何かの冗談かと見紛いそうになるが、間違いなくこれが現実であった。


「サメを召喚する能力。それが俺のスキルだったのか」


 ステータスのSAMEは、セイムではなくサメだった。

 能力値が他とは別格で高い。

 そもそも他の人間には存在しない能力値らしい。


 これはサメに関する能力の高さを示すのではないか。

 ステータスの貧弱な俺が呼び出したサメが、ミノタウロスを喰い殺せるほどだ。

 解釈としては真っ当なのだと思う。


 城で検査をした際に魔術が上手く使えなかった理由もなんとなく分かった。

 あくまでも推測だが、俺のサメ適性が高すぎた結果なのではないか。

 そのせいで他の生物を呼び出せなくなっているのだと思う。

 単純に魔力不足やセンスが原因ではない。


 そう考えると、すべて説明がつく。

 俺のステータスはサメだけに特化していた。


「レベル……上がっているな」


 ステータスを確認した俺は呟く。

 ミノタウロスを倒したことで経験値が入ったらしく、レベル1からレベル39まで上がっている。

 かなり大幅なレベルアップだ。


 スキルもなぜか【召喚魔術】から【サメ召喚】に変化して、各能力値も微増していた。

 ただし、ほとんど誤差の範囲である。

 唯一、SAMEだけが666から1800に跳ね上がっていた。


 初期値から倍以上の数値になったが、果たしてどれだけの強化になるのやら。

 今の俺には判断できなかった。


「まさかミノタウロスを倒す魔獣を使役するとは! 賭けは負けたが良い戦いだったな」


「だから言ったろ? 逆張りはしとくもんだぜ」


「畜生、まさか生き餌から復帰する奴が出るなんてな。何年ぶりの快挙だよ」


 騎士達が好き勝手に言い合っている。

 彼らにとって砦内の出来事はギャンブルの一環だったらしい。

 どこまでもふざけてやがる。


 話を聞くに、似たようなことを繰り返してきたのだろう。

 そうしてたくさんの犠牲者を出してきたのだ。

 悪意もなく語る彼らは、どうしようもないクズであった。

 異世界について何も知らない俺だが、それだけは確信した。


(俺達は生き餌ってか……人の命を何だと思っているんだ)


 ふつふつと怒りが湧いてきた。

 緊張や死の恐怖は薄れて、代わりにどす黒い感情が膨らんでいく。

 それにも気付かず、騎士の一人がバリアーを解いて砦の扉を開けた。


「さあ、出てこい。お前は強さを示して生き残った。他の無能とは違うことを証明したんだ。城に戻ればさぞ優遇されるだろう」

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