第22話 かつての魔王 1/3



───西暦2025年(令和7年) 7月 8日 放課後

───私立霊峰学園 多目的室



これはラーゼロンが七不思議になった翌日の話。

ラーゼロンはテンシアから、神秘の基礎講習を受けていた。


「魔法ねー…。生憎、今は魔法が使える七不思議はいないんだよねー…」


「今は? と言う事は、昔はいたのか?」


「いたよ! 魔法少女のラスピ先輩! 一ヶ月前に引退しちゃったけど」


「引退?」


「うん…。魔王君は、ラスピ先輩の穴埋めで七不思議に選ばれたんだと思う」


「そのラピス先輩とやらは、どのようにして魔法を使っていたのだ? 地球にはマナが無いのに…」


「魔法と言っても、魔王君の言う魔法とラスピ先輩の言う魔法は、違うと思う。ラスピ先輩、マナじゃなくて魔素まそって言ってたし」


「ふむぅ…」


「そんな事より!! 今日は座学だよ!! 魔王君に現代の神秘体系の基礎をみっちり叩き込むからね!!」


「お、おう!」


「いい? 魔王君? 神秘には土地柄があるの! アジア圏なら妖術、西洋なら魔術、米国なら超能力、みたいにね!」


「魔術!? 魔法か?!」


「あっ、魔王君の言う魔法と、西洋の魔術は仕組みが根本的に違から期待しないでね!」


「しょんぼり…」


「で、ここからは神秘理論の話。ここは日本だから、基本となる神秘の力は3つ! 霊力・妖力・呪力! 魔王君には霊力はあるけど妖力は全く無い! 呪力は…ちょっとある! 死んでるから霊力があるのは当たり前! 妖力が無いのは妖怪の類いじゃないから! 呪力がちょっとあるのは…、うーん…わかんない! 大して未練も無く死んだなら呪力は持たないハズなんだけど…誰かに恨まれたりしてた?」


「敵対していた人間達に恨まれていたぞ」


「そんな事はどうだっていい! 仲間も敵も基本となる3つの神秘を使ってくる! その特性を理解するのが何より大事なの!」


「お、おう…」


「いい? ここからちょっと難しい話になるからね?」


「うむ!」


「まずは霊子と霊力と霊気! 霊子とは世界共通のあらゆる神秘の主成分! 霊力とは霊子結合の強度! つまり、霊力が高ければ神秘はより堅牢になる! ゲーム的にいえば、霊子は体力、霊力は攻撃力・防御力に影響する物理パラメータみたいなもの! 物理じゃないけど!」


「ほう!」


「で、霊気とは霊子の転換を意味する! 霊子だけじゃただの超常の粒子だけど、それをいろんなモノに転換し形にするのが霊気! 一般的な雑魚幽霊を思い浮かべてみて! 彼らは幽霊、当然、体や身につけてる衣類は霊子でできてる。でも、霊気の扱いが下手だから足まで形成できなかったり、服が再現できずボロボロだったり、体を維持できず顔だけ写真に写ったりする。逆に霊気を上手くコントロールできれば、霊子から火の玉を作ったり、氷を作ったりできる!」


「ふむむ??」


「次は妖力と妖気! 妖子なんてものは無い! 妖力とは対象を変化させる力! そして、妖気とは変化の振れ幅!」


「むむむ?」


「妖力が高ければ変化させられる対象が増える! 妖気が高ければ、その変化量が増える! 例えば、自身を対象にできる程の妖力を持った狐が、妖気で体を狐から人間に変化させる、みたいな! 他にも、妖力で天候を対象に取り、妖気で雨を降らせる。妖力で温度を対象に取り、妖気で着火温度まで上げ火を起こす。とか!」


「質問がある!」


「はい! 魔王君!」


「霊気で火を起こすのと、妖気で火を起こすのとでは、何か違いがあるのか?」


「非常に良い質問です! はい、これは似ているようで全く違います! 霊気で生み出す火は霊子でできています! なので、霊子を消費します! よって、連発すれば疲れます! それに対して、妖気は対象自体を変化させるため、なんと霊子を消費しません!」


「ファッ!? ズルいではないか!? 我も妖気が欲しいぞ!」


「その代わり! 妖気のコントロールはもの凄い集中力を要します! 精神力が削られ、妖力・妖気共に落ちていきます! なのでどっちにしろ疲れます!」


「成る程…。霊気はHPを消費し、妖気はMPを消費するという事か…」


「最後に呪力! 呪子なんてものは無いし、呪気なんてものも無い! 呪力とは対価による強制力!」


「はわわ…?」


「丑の刻参りってあるでしょ? 深夜、藁人形に釘を打ち込み呪いを掛けるっていう…。あれは『藁人形』と、深夜に神社のご神木に釘を打つという『行動』を対価にして、対象に不幸を強制する呪術! この場合、強制する不幸の大きさは、術者の呪力に影響される!」


「はえ~…」


「んで、この基本となる3つの神秘の力、霊力・妖力・呪力を操る術を、それぞれ、霊術・妖術・呪術っていうんだよ!」


「フハハ!! 概ね理解したぞ! 我は霊力と呪力を持っているから、その2つを鍛えれば良いのだな!」


「呪力を鍛えるのはオススメしないよ…。誰かを恨んだり、誰かに恨まれたりしなきゃ鍛えられないから…」


「そうか…。なら、霊力を鍛えるとするか!」


「うん…! それがいいよ! 魔王君なら立派な霊術師になれるよ!」


「ところで師匠の超能力と、万治朗の錬金術は、どういう仕組みなのだ?」


「それはまた別の神秘体系だから、今は気にしなくていいよ!」


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