第2話 生きている幽霊
「ほら、俺サッカー部に入ってるだろ?
これでも一応真面目に部活やってるからさ。1週間前くらいだったかなぁ。
練習終わって部室でちょっとダベって、方向同じヤツらとコンビニ寄って〜とかしてたら、1人になる頃にはもう9時過ぎだったんだよ。」
堰を切ったように話し始める洸希。
邪魔にならないよう、静かに頷く。
「陽向なら知ってると思うんだけど、俺の帰り道に細い川があるじゃん。
あそこ、夜になると周りに家は無いし街灯もそんなに明るくないしでかなり怖いわけ。
いや、まぁ...不審者とか気を付けねえとなーぐらいに思ってたらさ、前を女子高校生が歩いてるのに気付いたんだよ。
俺らの学校の制服着てて、髪は長くて下ろしててさ。かなり遠くて誰かは分からないんだけど、最初はへぇー近くに住んでる同高の奴いるんだなぁくらいに思ってたんだ。
それがさぁ、止まるんだよ。
時々ピタッと止まって、振り返るわけでもなく、また歩き始める。かと思ったらまたピタッと止まる。そんな事繰り返す訳。
俺、呼ばれてるような気がしてきてさ。
どっかに誘われてんのか?って。よく黒猫とか狐に誘われて着いて行ったら...みたいな話を聞くだろ?もうそっからは情けない話怖くてしようがなかったよ。
でも途中からもう誘いに乗ってやろうって気になっちまって。
向こうが曲がり角を曲がったところで急いで距離を詰めたんだよ。
そしたらもう居ねえの、その女子。
見失うような距離じゃないし、広い道でもないのに道はガランとしてるんだよ.....!」
はぁ、と適当な相槌を打った。
普通に見失っただけにしか聞こえないし、幽霊要素が急に消えましたっていうのはかなりお粗末に感じてしまってつい態度に出してしまった。
「俺も最初は見失ったと思ったよ、
でも一昨日もなんだよ。
その日も同じぐらいの時間に帰ることになっちゃってさ。
今度は後ろにいるんだ。
なんか足音が聞こえるなあと思って、後ろを確認したらあの女の子だった。
顔は暗いし俯いてるしで見えなかったけど、雰囲気で確信したよ。
んでもって足も生えてるしなんなら街灯に照らされた影もある。ああこれは生きてる子だな、この間のは俺の勘違いだったんだな、と思ってさ。安心したんだ。
でもよく考えたらこの時間にこの暗い道を女の子が1人で帰るのって危ないよなぁって思い至ったんだよ。俺、ほら、紳士だからさ?
おい、今の笑うところだぞ。
まあいいけど。
それで声をかけよう!と思ったんだ。
もちろんやましい気持ちはなしで。なんならまだちょっと怖かったしな。
でも、振り返ったらまた消えてたんだよ、その子。俺もう無理で走って帰ったね。
絶対幽霊だよ、生きてる感じしたけど。
この話聞いて、陽向はどう思う!?
やっぱ幽霊っているのかな!?」
興奮状態の洸希に疲れながら
僕はふぅっとため息を吐き、話を聞いたことを軽く後悔した。
晴れの傘 天晴 @_ransatsu_
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