第1話 ここから
消えたい。そう常々思っている。
自殺志願者の振りをしてる訳じゃない。なんなら死にたいなんて微塵も思ってない。どう死んだって誰かと密接に関わりあって出来てる現代では、必ず迷惑をかけるから。
飛び降りれば通行人に、
電車に飛び込めば乗客に、
自室で死んだって不動産会社に、といったふうに。だから僕は消えたいんだ。
生きづらいこの世は死にづらくもあるから。
それに僕は痛いのは嫌いだ。
ぽしゃり、と足元で踏んだ草が泣いた。
秋の終わりに枯れ草がどんどんと溜まり静かに歩くこともままならない。
一々思考が乱れてしまう嫌な季節。
秋服、という名の通学服ではもう寒さに耐えきれなくなってきた。
この頃の僕はもう何にでも恨めしくなってきている。季節も寒さも煩わしい。
通学路では行きも帰りも、こうして頭の中で何かに文句を垂れるのが日課になっていた。
...と、考えたところで焼き芋が食べたくなってきた陽向だった。」
「勝手に僕の心の声をナレーションしないで欲しいんだけど。」
ごめんごめんと笑ったのは、同じクラスの洸希だ。大方、後ろ姿の僕を見つけて急いで追いかけてきたんだろう。
入学式の時に話しかけられた時から少しずつ会話が増えて2年生になった今では友達と呼べるぐらいには気が合うようになった。
なんで僕と仲良くしてるのか分からないくらい明るくて底抜けに良い奴だ。
「聞きたいことあったんだよ。いつもより早めに家を出てお前を追いかけてきたんだぜ?俺、偉くない?」
「いや偉くはないでしょ、昨日の夜メッセ飛ばせば良かったじゃん。」
「文面に残すのが嫌だったからさあ...」
そう言って口ごもる。
洸希はサッカー部に入ってるし、部活内での人間関係で何か悩みでもあるのかもしれない。
一人でいても鬱々と考え込んでしまい嫌な朝になるだけだし断る理由もない。
次の言葉を待った。洸希は周りに人がいないか気にしている様子で、周りに目線を配り終わったあと大きく息を吸ってこう言った。
「生きてる幽霊って...いると思う?」
.....意味が分からなくてしばらく固まってしまった。そりゃそうだよなぁという顔で僕の反応を伺う洸希。足だけは学校に向かって着実に歩を進めていく。
歩行って人間が無意識的に出来る意識的行動ってそう言えばどっかで聞いたな、とか思い出すが全然関係ないので頭の奥にまた追いやった。
「いるかもしれないし.....いないかも、しれないな。」
「いや、ああ、うん。そうだよな。そう言うしかないよな。ごめん。段階的に話すからもう1回考えてくれ。」
異様に真剣な雰囲気に飲まれかける。話の内容は馬鹿らしいのに。
まあ通学路の暇潰しにはなるかと思い、
僕は大きく頷いた。
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