晴れの傘

天晴

プロローグ

ここまでか、と思った。

随分長い道を歩いてきたので終点はもうすぐなんだろうと思っていた所だった。目の前に煌々とした分かりやすい終わりが見えたのは。


「もう僕は充分頑張ったよな」


自分に言い聞かせるようにそう呟いた。

誰もそこでは待っていない。勿論、僕は1人で歩いている。返事は当たり前にない。

でも僕には聞こえる。


「貴方はもうちょっとだけ、頑張れたと思いますけどね。良しとします。」


おどけたように僕をからかう声がする。

それは、眩しい朝日の中でも、眠たい午後の隙間にも、星のない夜空の中でも、幾千と聞いた君の声。顔が見えなくたってすぐに分かる。

誰よりも何よりも僕が焦がれた君の声だから。


「都合がいいよなあ」


ぼろぼろと雫が落ちてゆく。泣いてない。決してないてないが、声は勝手に震えて、多幸感に包まれた。


「都合がいいよなあ、本当に。」


もう一度繰り返して僕は煌めきに近づいていった。




長いような短いような、

本当によくあるつまらない話で

ただ1度起きた奇跡にしがみついた僕の

みっともない懺悔を

誰にも愛されなかった君に贈る。


つまらないと笑うだろうか

知ったことをと聞き流すだろうか

どちらでもいいよ

言葉にして残したかったんだ

誰に許されなくても

君と生きたことをここに紡いで

僕が生きたことを記せたら。


特筆するようなことなど何も無い道のりだったけれども、まあいいんだ、君と出会えたから。

それだけでいいんだ。なんなら、それだけでもいいんだ。



最大限の愛を君へ。

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