第2話 ゲーム開始

「大阪に帰ってないか電話してみようか」

「スマホも財布も置いてあって、それはないわ。だいいち子どもたち置いて行くわけがない」

「だったら、どこ行ったんだよ。『今日は、はよう帰って来てね💓』って言ってたのに」

「その包みは何なの? まず開けてみたら」


 一平が包みに手を掛けると簡単に開いた。

 レイが覗き込むと懐かしいものがそこにあった。


「わあ、懐かしいゲーム。そのカードに何て書いてあるの?」

「どうやら、このゲームをクリアしなければ、ナオさんは帰って来られないらしい」

「何、それ。ナオ姫を奪還せよって」

「まんま、まんま」

「ああ、そうだった。ルナちゃん、ちょっとずつ食べようね」


 ルナをベビーチェアに座らせると、前に取り付けられたテーブルの上に置かれた、ウサギの器から1人で食べ出した。


「ルナちゃん、美味しい?」

「おいちい」


 レイはルナの口の周りを拭きながら、視線はゲーム機にいっていた。

 リビングのテレビに接続して、一平はゲーム機をセットした。

 2つあるコントローラーのうちの1つをレイに渡した。


「何? お兄ちゃん、レイはゲーム出来ないよ。それに触らしてもくれなかったじゃん、あの頃」


 レイはブンブンと横に手を振り、一平に突き返した。

 当時、3歳違いのレイは兄たちの遊びに入れてもらえなかった。


「ああ、そうか。じゃあ、おれ1人では出来ないし、ナオさん、どうしろと言うんだ」


 一平は頭を抱えた。


「兄ちゃん、助っ人呼んだら? 哲兄ちゃんとよく2人で、そのゲームしてたじゃない」

「ええー、いやだよ」

「だったらナオさん帰って来なくてもいいの?」


 食べ終えたルナは小さなゲップをした。

 ウエットティッシュで口の周りを拭くと、


「ごちしょうま」

「ルナちゃん、よく言えました。ルナちゃんはいい子、いい子」

「レイは保育園の先生になれるんじゃないか」

「兄ちゃん、それよりどうするの?」

「仕方ない、哲兄を呼び出してくれ」




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