第5話 「悩みとハイビスカス」

佐久間先生にあの紙を貰ってから約2週間経った。

未だに自分の中でどうするべきか悩んでいる。

教室の前の方に彰がいるが、あいつに聞いたところで「入れ」の一択しか浮かばないので聞く気もない。そもそもあの先生は僕を過大評価している。確かに僕は県大会優勝チームのキャプテンだったが、そんなのはお飾りに過ぎない。

凄かったのは他のメンバーであって決して僕ではないし、あの優勝はただのまぐれだ。そんな飾り物のキャプテンを必要とするなんてどれだけこの学校のサッカー部は弱いんだろうと机に突っ伏しながら考えていると

「えーなになに?部活動入部届?あれ、櫂って部活入るの?それにしてはだいぶ変な時期だねぇ」

と紙を見た瑠花に言われた。

すると彰もそれに気付いて

「え?櫂やっとサッカー部に入る気になったのか!よっしゃーまた優勝目指そうぜ!」

「え?優勝?また?」

瑠花が"優勝"というワードに反応した。

「そうなんだよ。俺と櫂は中学の頃県大会優勝してるんだぞ?それでこいつはキャプテン!」

「え!?キャプテンだったの?そうは見えないけどなぁ」と瑠花は驚いているが、そんな大層なものでは決して無いのだ。

「彰、もうその話はやめてくれ」

「なんでだよー、お前が居たら本当に優勝目指せるんだぞ?また一緒にサッカーやろ」

「やめろって!」

教室中が静まり返る。

「僕はもう、サッカーをするつもりはない。」

そう吐き捨て僕は教室から立ち去った。


「ねぇ彰、なんで櫂はあそこまでサッカーやりたくないの?」

「櫂もサッカー自体は好きなはずなんだけどなぁ」

「ていうか、彰も同じサッカー部だったんでしょ?どんな感じだったの?櫂って」

「うーん、まあ丁度良いしお前になら話しても許してくれるだろ。えーと、どこから話そうかなぁ」

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