EP5 縛りプレイと少女との遭遇
こちらの動きを窺っているモンスターの頭上には、残りHPを表示するカラーバーと、モンスターの名前が表示されている。目の前のモンスターの姿は現実の動物のようにリアルだが、こういった表示を見ると、これがゲームの世界なのだと再認識させられた。
《ワイルドウルフ》
それがモンスターの名前らしい。
(街を出てすぐにオオカミみたいな奴がうろついてるって、なかなか物騒だな)
そんなことを思いながら、トールは右手にナイフを構えた。
そして、一歩相手の方に踏み出そうとした瞬間、ワイルドウルフは地を蹴ってトールめがけて突進をしてきた。
そして、トールの目の前あと3メートルというところで、トールのいる位置に向かってワイルドウルフは跳躍した。瞬間的にトールは右に横飛びをする。
「! っと、あぶねぇ……! けど、これくらいなら余裕で避けられる感じだな」
現実世界との感覚の違いにまだ戸惑いはあったが、ステータスをAGIに振り切っていたことと、トール自身の身体能力の高さで、敵の突進は難なく
「じゃ、こっちからも行かせてもらうぜ!」
トールはワイルドウルフに向き直り、右手のナイフを振りかぶると、逆にワイルドウルフに突撃しながら振り下ろした。が、すんでのところで敵も再び跳躍して逃げ、攻撃は空振りに終わった。
「敵さんもだいぶすばしっこいな。俺もまだゲーム内の動きに慣れてないせいもあるんだろうが……」
ワイルドウルフは、トールへの攻撃のタイミングを見計らって、ジリジリと距離を詰めながら、再び低い姿勢で飛び出す構えをとった。
「普通に攻撃したんじゃ当たらない……なら……! スキル、『
ブゥン、と低い音とともにトールの体に青白い光がまとった。同時に、視界の脇にカウントダウンが表示される。
スキルの残り時間は、5秒。
「さすがに、スキルレベル1じゃあ、持続時間も短いな……。よし、一発で仕留めてやるぞ!」
再びナイフを構え、ワイルドウルフめがけて駆け出す。
(体が軽い……!!)
今度は、先ほどとは段違いの速度で接敵をする。そして、一瞬のうちに敵の眼前に迫ると、トールは敵の額にナイフを突き刺した。
「くらいやがれえぇぇぇぇ!」
ざくりと、包丁でリンゴを切った時のような、確かな手応えとともに、トールのナイフがワイルドウルフの脳天に深々と突き刺さった。同時に、バァンと派手なフラッシュとともに、《クリティカル》の文字が浮かび上がった。
直後、高いうなり声を上げながら、ワイルドウルフの体は光の粒となって消えていった。
そのすぐ後に、トールの体から放たれていた光もなくなり、『
「よっし、まずは初勝利! やっぱ素早く動けるように、AGIを強化しておいたのは正解だったな」
戦利品として毛皮と牙をアイテムとして入手し、トールは目的地の遺跡に向けて、再び街道を進んでいった。
◆◆◆
RROのゲーム内では時間加速処理がなされており、ゲーム内で24時間経過しても、現実世界では2時間の経過に相当する。トールはすでに1時間近く街道を歩いてきたが、現実世界では数分しか経過していないため、疲労感は感じなかった。
フィオナから預かった報告メモには、簡単な地図も書かれていた。そろそろ目的地付近だろうとあたりを見回すと、あたりの森の入り口付近に、石でできた小さな砦のようなものが見えた。ほとんど崩れかかっていたが、人が入れるだけの入り口があり、そこから地下へと石の階段が続いていた。
「ここに入るのか……。ちょっとばかし薄気味悪いが、最初のクエスト攻略のためだ、行くしか無いな」
薄暗い入り口を降りていくと、さらに闇が深くなっていったが、幸い階段を降りきった先に、未使用のたいまつが何本か残されていた。トールは、ベルトの中に入れていた
遺跡の入り口を降りきった先は、狭い通路が続いていた。途中、壁には所々に蝋燭がともしてあり、わずかに蝋燭のある空間だけが明るく照らされていた。
しばらく通路を進むと、小さな部屋の入り口に到達した。部屋の中は暗く、たいまつの灯りが無いと何も見えない状態だった。
トールは、左手のたいまつを前方にかざし、右手で壁を伝いながら部屋に入っていった。そして、壁伝いにしばらく進むと、足下にたいまつの灯りを反射して光るものを見つけた。
「なんだ、これ……」
トールはその場でしゃがみ込み、たいまつを光るものに近づけた。それは、古ぼけて表面がボロボロになっていたが、明らかに宝箱のようだった。
(クエストには宝箱のことなんか書いていなかったが、こりゃラッキー!)
おそらくチュートリアルのクエストの報酬なのだろうとトールは考え、早速右手を宝箱に伸ばした。
と、そのとき。
――にゅっ。
と、思わず効果音が聞こえるかのごとく、トールの手が触れるのと同時に暗闇から白い小さな手が宝箱に伸びてきた。
「ぐわわわっ! だ、誰だっ!? 敵かっ!?」
「……え? ……きゃあああああ!」
とっさにトールが手に持ったたいまつを声の方へ向けると、そこにいたのは、セーラ服のような、はたまたドレスのような、ふんわりとした衣装を身につけて、こちらをまじまじと見つめる童顔の少女だった。
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