第1章 第17話 逢魔ヶ森の小冒険 その4


流石に7歳とはいえ、前人生29年の内、14年も社畜をやっていたアーネスト。

直ぐに気を取り直して、考える。


いかにオヤジが巨体だとしても、数で押されたら負ける!

ここは柔軟に相手の怒りを鎮める事が良策だ。


ハチ…蜂…ハチなら女王蜂がいるはずだ!

方向は決まった!

前世に知識(主にネット小説)だと、怒っている女性には

ひたすら〈おべっか作戦〉だ!そう、〈褒める事〉と〈プレゼント〉だ!


「女王様!女王様はいらっしゃいますか?」

「女王様!いらっしゃいますか!」

虫に通じるはずがない。


「ぶぶ?ぶぶぶん。」

…通じたよ。


「わあ、これは奇麗な方だ!」

虫に何言ってる。


「ぶ?ぶん、ぶううん、ぶぶ。」

…通じてるよ。


「いやあ、こんな美しい蜂は初めて見た!」

「ぶぶ?ぶぶぶ、ぶうううん、ぶん、ぶん。」

…会話してるよ。


「まるで花の様なその触覚、星を見る様なその瞳(複眼です。)そのくびれも、細い手足も、まるでモデルの様だ。」

「てれてれてれ。」

…照れる虫と云うものを初めて見た。


「この度はうちの者(通称オヤジ…いつから身内になったんだ?)がお家を壊してしまい、

申し訳ありませんでした!」

虫に対して直角に頭を下げる。

「どうでしょう?新しい家を用意しますので、怒りを鎮めて頂かないでしょうか?」

「ぶう…ぶううん…ぶう…」

…なんだか、女王様が赤くなった気がするよ。



レオンハルトは困惑した。

彼の、恐らく途方もなく長い人生において、この様な場面に遭遇した事は無かったのだろう。


目の前に大きなティラノサウルス(もどき)が現れたのも驚いたが、なんとその頭の上に

アーネストが呑気に乗っかっているではないか。呑気に。呑気に!


一気に戦闘態勢に入ったみんなも、笑顔で手を振っているアーネストを見て固まっている。

「オヤジィ、仲間が迎えに来たんだ、一旦降ろしてくれ。」

ティラノサウルス(もどき)が頭を下げて、顎を地面につける。どうしてもお尻が上がっている姿になるので、

ちょっとかわいい。


アーネストが降りて笑顔で近づいてきたが、みんなは更に驚く。

アーネストの頭の上に、もう一つ顔が現れたからだ。

女王蜂の顔だ。どうやら女王様一行も身内になったらしい。


すかさず、何匹化の蜂がみんなと女王様(アーネストと合体)の間に入り、

ホバリングしている。ガードしているのだ。


「大丈夫だよ。」

そう言いながらアーネストは、どう説明したらいいのか、呑気に悩むのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る