第1章 第15話 逢魔ヶ森の小冒険 その2

「魔王様の親衛隊か?なぜこんな所にいる?」

ケンによく似た魔族の一人が話しかける。そう、狼男だ。

「おかしな格好だな、城ではそんな恰好が流行ってるのか?」

どこか揶揄するような言い方であり、まるで敵対している様だ。

「!待て!こいつダークエルフじゃない!お前らどこの所属だ!!」


「私達はアーネスト・アガーベック・アーマンジャック配下の者です。」

あくまで落ち着いた口調でレオンハルトが口を開く。が、

当然の事ながら、双方に緊張が走った。

魔族は攻撃態勢に移ろうとした。


「待って下さい!我々に争う意思はありません!」

レオンハルト以下、アーネスト陣営は誰も動かなかったが、だからと言って

魔族が攻撃をしない理由にはならない。事実戦争中なのである。


「待て。」

魔族の後ろから一人の男が出て来た。

するとアーネスト陣営が即戦闘態勢に移る。

この男は危険だ。ビリビリと肌で感じる程、相当な実力者だ。


「ドラクール様!」

ドラクールと呼ばれた男は、レオンハルトに向き合う。

じっと見つめている。


「失礼。魔王様の親衛隊の隊長がダークエルフなんでね。」

「エルフ自体珍しいんだ。しかもハイエルフと来た日にゃあ、まあ、気を悪くしないでくれ。」


レオンハルトはそれに答えず。

「我が主人が飛ばされました。我々は迎えに行くところです。」

「飛ばされた?」

「そう、ある木に触れたとたんに。」

「ほう、珍しい。それは〈神隠しの蘭樹〉だ。」

「絶滅危惧種なんだ。後で場所を教えてくれ。保護しなきゃならん。」


ずいぶん砕けた口調だ。しかし、アーネスト陣営は緊張を解かない。

「では。」

レオンハルト達は行こうとした。だが、ドラクールに肩をつかまれた。

「手伝おうか?」

こいつは何を言ってるんだ?

「いえ、結構です。」


「アーネストと云うと、例の魔力ゼロの子供だろう?」

更に緊張が高まるが、ドラクールは意に返さず、

「ウチの魔王子なんだが、興味があるみたいなんだ。」

さすがにレオンハルトに殺気が走る。

「いや、争い事とかじゃないんだ。まあ、そのうちな。」


「……失礼。」

ラインハルト達は走り去った。


「いいんですか?」

「かまわん。さて、帰るとするか、何もなかったんだから。」

狼男たちは顔を見合わせた。そしてドラクールの意図を察すると、黙ってうなずいた。



一方その頃。

アーネストは逃げていた。右に入ったり左に入ったり、飛んだり潜ったり。

それでも一向にティラノ親父から逃げられなかった。


そしてコケタた。ものの見事に。更に転がって行った。

止まった。顔を上げたら、身の前にティラノ親父の顔があった。



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