第1章 第13話 アーネスト 6歳 泣くもんか。
夏真っ盛り。穏やかな気候と云うけれど夏は暑い!やっぱり暑い!!
ケン達は毛皮なのに、なんで涼しげな顔なんだ?
えっ?魔法でガードしている?体の表面を?
寒暖にも有効だって?ず、ずるい!!
獣人達の魔法は身体強化が一般的だが、そんな使い方も
あるのか。
しかし、獣人もこんなに集まると、それだけで壮絶だな。
今では狼の獣人、豹の獣人に加え熊の獣人、牛の獣人迄いる。
女性の獣人もいる。
獣人は男性が多く、亜人は女性が多いそうだ。
確かに女性の獣人は少ないと思う。が、これがまたみんな野性味満点のナイスバディで……、
ゲフンゲフン、エリさんや、そんな冷たい目で見ないでおくれ。
そう、メイドも増えたのだが、亜人なので、猫耳とかきつね耳の女の子ばっかりだ。
要塞城の連中は俺の趣味だと思っているようで、〈加護無し〉に加え〈変態〉とも
呼ばれるようになった。
誰が趣味か!否定はしないけど。
今日は騎馬ならぬ〈騎蜥蜴〉の訓練で、みんな颯爽と乗りこなしてる。
逢魔ヶ森にいる〈飛びトカゲ〉と云う種族で、形は白亜紀の〈ディノニクス〉に似ている。
体表は爬虫類みたいな感じでは無く、短い羽毛みたいなのがあるんだ。
卵から孵して育てると、人によく馴れる様になる。俺やエリの専用の個体もいる。
頭を擦りつけて、撫でてとアピールして来る。メッチャかわいいぜ。トカゲだが。
〈飛びトカゲ〉と呼ばれているが、別に空を飛べる訳ではない。しかし、4~5メートルは
ジャンプするんだ。足も速いし、鈎爪と云う武器も持ってる。更に暑さにも寒さにも強い。
集団で狩りをするから、その中で自分の役割を理解する頭もある。
なんで、こんな優秀なのに今まで誰も飼わなかったんだろう?
これもネ、要塞城の連中が「加護無しと獣人の分際で馬になんか乗るな!」と
分かりやすい嫌がらせをして来たんで、実際馬の代わりとして見つけて来た。
もう、そんな嫌がらせは予測出来たんで、とっくの昔から準備していたよ。エッヘン。
〈馬車〉ならぬ〈蜥蜴車〉を引いているのは四つ足のトカゲで、特に呼び名は無いが、
こちらも白亜紀の〈アンキロサウルス〉に似ている。そんなでかくは無いが。
のんびりしているように見えるけど、牽引させて走らせると、見た目と違って早い、早い。
しかも甲羅に似た背中は頑丈で、尻尾にはハンマーの様な突起がある。
そして肝心なことだが、やはり人に馴れる。厳ついけどかわいい。
こっちもちょっと羽毛が生えてる。
かわいらしく戦車トカゲと呼んであげよう。
「ブワハハハハハァー!」
で、〈戦車トカゲ〉の馬車ならぬ蜥蜴車?(後でで名前を考えよう)を引っ張って一緒に走り回っているのは牛の獣人。
「何やってんだ!ギュウゾウ(牛の獣人の名前)!!」
「オオリャオリャオリャー!」
こっちでは熊の獣人が〈蜥蜴車〉を持ち上げて回してるし。
「何やってんだ!クマゴロー(熊の獣人の名前)!!」
「ゲラゲラゲラ!」
「笑ってないで止めろよ!ケン!!」
〈蜥蜴車〉相当重いんだけど。楽しそうでいいね。まぁ、頼もしいとも云えるか。
まともに訓練しているのはショウ達だけか。颯爽と走って……行ってしまった。……って、
逃げたな、あの野郎!
さて、今日は去年から帝都の学校に行ってる兄上が夏休みで帰ってくる日だ。
高級貴族の子供は10歳になると、帝都にある"偉大なる王国学園(正式名称)"に入学して、
そこでマナーから領地経営迄、将来に必要なあらゆる事を学ぶんだ。
学術、魔術、剣術、格闘術、etc……。
婚約者がいない者は、そこで伴侶を見つけるのも大事な事なんだが、
兄上はモテるんだろうなばくはつしろ。
夜遅く帰ってきた兄上は、次の1日を要塞城で過ごすと、二日目からは
俺たちにいる〈アーマンジャック(仮)の館〉で過ごす様になった。
別宅に名前を付けたのは、要塞城の連中が〈劣等者のサロン〉なんて名で呼んでるからだ。
ホント、こーゆー事には熱心だよ。
兄上は今日も獣人達と試合をしたり、レオンハルト先生に付いて勉学に励んでたりしてる。
勿論、弟とも遊んでくれるし、稽古も付けてくれる。
あと、お茶をしたり、取り留めのない事を話したり。
しかし、お茶を入れてくれるメイド達が入れ代わり立ち代わりやって来て、いちいち顔を
赤らめるのは如何なものかばくはつしろ。
「第一王子様ですか?」
「そう、なぜか嫌われているらしい。」
弟と違って明るい性格でコミュニケーションばっちりな兄上はばくはつしろ。
じゃなくて、同じクラスの第一王子とその取り巻き連中から無視されているらしい。
入学してから1年はクラス選別は無く、貴族と平民の別はあるものの、みんな一緒の学び、
2年になると能力によってクラスが分かれる。よくあるシステムだ。
能力が認められれば、平民であっても上位のクラスになる。
そして、兄上が在籍している〈華麗なるファーストクラス(正式名称)〉は文字通りトップクラスの
実力者揃いのはずなんだが、派閥でも出来てるんだろうか。
「内務卿の息子と、財務卿の息子、学務卿の息子とかって、それ、まずいんじゃないですか?」
流石に第一王子様の取り巻きは帝国の重鎮の子息が多い。
「いや、別に。かえって静かでいいよ。」
軍務卿の息子と外務卿の息子は第二王子派だそうな。
第二王子?なんだろう?すごく引っかかる。
全てを取り締まる宰務卿閣下のお孫さんは第一王子の婚約者だそうだ。
当然、宰務卿閣下御自身は第一王子派を推しているらしい。
「獣人達が増えたんだね。」
恒例の獣人達との手合わせを終えたらしい。
「ええ、それぞれ個別な〈スキル〉を持ってるんですよ。」
「女性の獣人もいるんだね。」
このやろう!狙いはそっちか!
「4人ほど。ウサギの獣人の〈ラヴィ〉にリーダーをやって貰ってます。」
「ああ、話の最後に〈ピョン〉って付ける人。」
このやろう!もうコナかけたのか!
俺が不用意に「語尾に〈ピョン〉とか〈ウサ〉とか付けるとかわいい」なんて言ったから、
みんななんか付ける様なった。
亜人もそうで〈ニャン〉とか〈ワン〉とか付けてる。けっこうかわゆす。
更にギュウゾウは〈モー〉とか付けるし、クマゴローは〈クマ〉って付けてる。
こっちは違和感ハンパ無いよ!本人は気に入っているらしいが、やめろよ!嫌がらせか!
「それで、兄上はおモテになるんでしょう?」
「?、唐突だな!別にモテないよ?」
噓だ!絶対!
「本当だってば!第一、常に危険と隣り合わせの辺境伯の所なぞ、誰も嫁に来てくれないよ!」
「……力説するところが怪しい……。」
「母上だって、武門のアビエマ辺境伯の出だぞ?今、武門の一族に適齢期の御息女は、いないんだよ。」
そう云えば、母上は父上の大親友、〈ウルド〉さんの妹さんだっけ。
たしか、乞われて〈帝都警邏隊〉の隊長をしているだよね。
跡取りじゃないとは云え、思い切りよく〈アビエマ〉の苗字を捨てて、高級貴族から一市民になった人だ。
父上と同じくらい戦闘力がある上、面倒見も良く、豪快な性格で、帝都市民から一般貴族迄、幅広く支持されている。
かなり慕われているので、みなさん正式名称の"帝都警邏隊"とは呼ばずに"ウルドの警邏隊"と呼んでいるほどだ。
因みにイワオ工房製の武器を大量に買ってくれる、大のお得意様でもあります。
最近、〈ウルドおじさん〉にも稽古をつけて貰っているそうで、必然的に警邏隊のメンバーとも
仲良くなっているそうだ。
「それで、ウルドおじさんがね、……。」
「楽しそうですね、兄上。」
ころやろう、どうせ〈楽しいトコ〉にも連れて行って貰ってるんだろう!
カロリーナ公爵領から出られない身とあってはひじょうにうらやましいかぎりだなくもんか。
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