第1章 第05話 アーネスト 2歳 アーネスト空に舞う。
アーネスト 2歳
「ばぁか?」
夜中にこっそり会いに来た兄オーギュスト
「ンだとこのやろう!!」
兄に怒られる。
かわいい弟なのに、〈夜中にこっそり〉しか会いに来れないのは
腹立たしいが、状況は理解していた。
アーネストの兄であるオーギュストは7歳になった。
明晰な頭脳と卓越した戦闘能力、豊富な魔力と多彩な魔法、
どれをとってもその辺の〈神童〉よりも優れている。
なので〈神童〉の上の〈大神童〉、さらに上の〈能神童〉とも呼ばれている。
……なんだかふらついて倒れそうである。
更には両親共、美男、美女なので、どこから見てもイケメンそのもの。
要塞城の若いメイド達にとって目の保養かつ、最良物件として
狙われていたが、本人は気づいていない。
2歳の頃のオーギュストは、もう大人に混じって会話をしていので、
まだ単語しか話せない弟をもどかしく思ったが、その分、
〈楽しみは後に伸ばした方がより楽しい〉と思っていた。
「早く大きくなれ。」兄は眠っている弟の頭を撫でた。
弟が笑った気がした。
たとえどんな神童であっても、7歳児であっても、高級貴族の跡取りとなれば、
覚えることが盛りだくさんだ。
10歳になると、王都の学校に入るのがお決まりのコースだが、それ迄は講師を呼んで
学習するのが一般的である。
座学は退屈だった。理解が早いため、いちいち教えて貰わなくても、
自分で自分なりに学習出来た。それで問題は無かった。
やはり剣や体術、魔法の訓練は面白かった。父はいずれも優れた講師を
読んでくれたが、父もまた一流の講師だった。
オーギュストはどんどん強くなっていった。
要塞城に詰めている極楽とんぼ共は殆ど相手にならない。
早く弟と一緒に訓練したかったが、まだ先は長そうだ。
魔力の無い弟を守るのは自分だと、家族として、兄として、当然の事だと思っていた。
またそれが妙に誇らしくもあった。
「あにー。」
「もう一度言ってくれ!」
「あにー?」
アーネストが自分を呼んでくれた。
父の様に泣く事は無かったが、生まれて7年、こんなに
嬉しい事はないと思った。
あまりの嬉しさに兄は弟を振り回し、放り投げは受け止めた。
弟も大喜びで空を舞った。夜中なので真っ暗だが、兄は躊躇しなかった。
普通なら、周りが驚いて止めそうなものだが、誰も止めない。
微笑ましく見ている。落とすとは思ってないらしい。
武門の一族とは、脳筋と同意語と思って間違いなさそうだ。
いや、そろそろ止めろよ。笑い顔だったアーネストが吐きそうな顔してるぞ。
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