第3話 休日

 皆さんは布団の中に女の子がいたら、どうするのだろうか?そのままにしておく?女の子を抱き抱えて、別のベッドに寝かせる?俺だったら、それが普通の女の子だったらそのままにしていたり、元のベッドに戻したりするだろう。だが、今は状況が違う。なぜなら…


「何、俺のベッドで俺に抱きつきながら寝てんだよクソ姉ェ!」

「いいじゃん!弟くんと寝たかったんだよ!」

「昨日、俺の部屋に入って、布団の中に潜るなって言っただろうが!」

「弟くんのいじわる!ケチ!」

「そんなこと言いながら、抱きつくなよ!?」


 現在、休日の朝。目が覚めて、まだ眠たかったので二度寝するかと思ったら、布団の中に違和感があったので見てみれば姉が俺に抱きついて寝ていた。そして今の状況に至る。


「今日は休みの日!さて、問題です。今日は何をするでしょうか!」

「唐突に話を変えるなよ!?……そうだな、正解は寝るだ。おやすみ」


 今日はゆっくりしたいのだ。姉に付き合ってられるかっての。


「二度寝はダメ!今日はせっかくの休みなんだから、私とで・ぇ・としよ?」

「嫌だ」

「拒否された!?いいもん、行くって言うまで布団の中に潜ってやる!」

「おい、やめろ!?」


 妹が部屋に入ってきた。


「姉さんと兄さんうるさい」

「「すいませんでした」」


 もしかしたらこの家では妹の咲が一番強いのかもしれない。


ーーーーーーーーーー


「眠たい」


 まだ眠たい。姉や咲と一緒にショッピングモールに行くことになった。ちくしょう。今日はゆっくりしたかったのに。


「よーし!忘れ物なし!」

「遠足かよ」


 そんなツッコミも今は無意味だ。俺達の行く所は近くのショッピングモールだ。高校ほどではないが、歩いたら15分程度で着く。


「家の鍵閉め完了!じゃあ、行くぞー!」 

「おー」

「はぁ」


 妹もノリノリだ。全員でショッピングモールなんて久しぶりに行くからな。


「いやぁ、ショッピングモールなんて弟くんと咲ちゃんと行くの久しぶりだなぁ」

「ん?舞花ちゃんと優くんと咲ちゃんじゃないか。久しぶりだねぇ」


 近所のおばさんだ。昔、よく遊んでいた記憶がある。


「おばさん。こんにちは」

「こりゃ美人さんになったねぇ舞花ちゃんは」

「お世辞はやめてくださいおばさん」

「お世辞じゃないんだけどねぇ」


 姉のすごい変わりっぷりだ。ブラコン姉から真面目会長モードへとクラスチェンジだ。


「どこに行くんだい?」

「ショッピングモールです。弟く…優と咲と一緒に買い物したり、お昼を食べたりと」

「仲良しだねぇ」

「ではこれで」

「楽しんできてねぇ」

「はい、ありがとうございます」


 そう言って、おばさんは家に戻っていった。


「ふぅ、久しぶりに会ったね。おばさんと」


 あ、元に戻った。


「そうだな、元気で良かったよ」

「よし!今日は楽しむぞぉ!」

「いや、遊園地とかじゃないんだから」

「いぇいいぇい」


 というか、何だ咲。そのテンション。


ーーーーーーーーーー


 ショッピングモールに着いた。ここのショッピングモールの大きさは他と比べてまぁまぁ大きいだろう。映画館、ゲームセンターなどもある。


「まずはどこに行くんだ?」

「下着屋?」

「ブッツブスゾオマエ」

「冗談だよ弟くん。お姉ちゃんジョーク」

「姉ちゃんが言うと冗談には聞こえないんだよ」


 もし俺が了承したら、姉は本気で行こうとしただろう。


「咲ちゃんはどこ行きたい?」

「どこでもいい」

「自由行動にしようぜ」

「えー、お姉ちゃん皆と一緒がいいんだけどなぁ」


 俺は1人で本屋やゲームセンターに行きたいのだ。


「うーん、12時までにここに集合ね」

「分かった」

「うん」


 そういうことで、俺達は別れ、俺はまずは本屋へと向かった。本屋に到着したが、なんかいまいちだ。俺の通っている高校のせいだろう。高校の図書館に置かれてある本が多すぎるので、普通の本屋が小さく見える。改めて思う、あそこの図書館まじでやばすぎるだろ。


「ん?舞花の弟の優くんじゃないか」

「あ、こんにちは」


 俺に話しかけてきたのは俺の高校の先輩で姉こと舞花の親友で副生徒会長をしている水島楓みずしまかえでさんだ。そして、唯一高校で姉の本性を知っている人である。


「今日は1人かい?」

「いや、姉と妹と一緒に」

「そうか、大変だろう?舞花は」

「まぁ、正直に言うならそうですね」

「はは、あの性格さえなくなればいいんだけどねぇ」

「そうですね」

「「はぁ」」


 この人は俺と同類かもしれない。姉で苦労しているという部分で。


「さて舞花がここに来ているみたいだし、探してみるか。じゃあ、また優くん」

「はい、じゃあ」


 そう言って楓さんは去っていった。俺は本屋を諦め、ゲームセンターで昼の12時まで時間を潰すことにした。


ーーーーーーーーーー


「さて、お昼の時間だよ!」

「お腹へった」


 時間通りに全員集まった。現在、どこで食べるかを決めている。


「ハンバーグ屋か、ラーメン屋か、それともファミレスか」

「俺はどこでもいい」

「私も」

「んー、じゃあファミレスにしようかな」


 ファミレスに決まり、空いている席に着くと次は昼飯を決める。


「私はハンバーグにしようかな」

「私も」

「俺はカットステーキにするわ」


 決まったので店員を呼び、注文する。


「かしこまりました。少しおまちください」


 注文を終え、昼飯がくるのを待っていると姉が俺に話しかけてきた。


「弟くん、楓と会ったね」

「ん?あぁ、会ったよ」

「むぅ、楓め。弟くんとイチャイチャするなんて!」

「してないわボケ」

「お客様、ご注文の品です」


 意外と来るのが早かった。俺はカットステーキを食べ始める。


「ハンバーグ美味しいね!咲ちゃん」

「うまいうまい」


 どこまでそのテンションでいるんだ咲。


ーーーーーーーーーー


 次は映画館に行き、映画を見た。姉は『姉と弟のラブラブ物語』とかいう聞いたこともない映画を観に行こうと勧めていたが止めた。俺をその映画で洗脳しようとしてたのだろうか。普通の恋愛映画を観ることになったが感想としては普通だ。姉と咲は感動していたが俺はどうも思わない。やはり女子には分かる何かがあるのだろう。その後は全員で買い物したりして、時間を潰していた。


「いやぁ、今日は楽しかったね」

「うん、楽しかった」

「俺は疲れたけどな」

「むぅ、そこは楽しかったって言わないといけないんだよ弟くん!」


 本当に疲れたんだから、しょうがないだろ。休日はあんまり外に出ないんだから。


「今度は遊園地とかにも行きたいね!」

「うん」

「まぁ、それもいいかもな」

「あぁ!弟くん、正直になったね!かわいいんだから!」

「抱きつくな!?」

「もう、嬉しいくせに!」

「うぉぉぉ!?」


 本当にいいのかもしれない。遊園地などに家族全員で行ったりするのは。父さんと母さんも合わせて。そんな時が来るのを待っておくとしよう。

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