第2話 学園

 目覚ましが鳴った。スマホを見ると時間は午前6時30分であり、いつも朝起きる時間帯だった。


「あーだるい」


 寝ぼけながら、俺はリビングへと向かった。すると、そこにはもう制服に着替えている妹の咲がいた。


「いつもより起きるのが早いな」

「うん。なんか早く目が覚めちゃって」

「しかも制服に着替えるのいつもより早くないか?」

「後で着替えるのがめんどくさくなった」

「そ、そうか」


 前にも言ったが俺と姉の舞花は咲とは血の繋がった兄弟ではない。その証拠として、髪の色が俺と姉と違って銀髪だ。父さんと母さんがある日突然養子として、連れてきたんだが、始めて会ったその時、咲はまるでこの世に絶望しているかのように死んだ目をしていた。孤児院にひとりぼっちでいた咲を可哀想だと思い、引き取ったのだという。ちなみに咲はハーフらしい。それから一緒に過ごしていたのだが、最初はうまくやっていけなかった。だが、姉が咲に何かしたことで、咲と段々うまくやっていけるようになった。目も死んだ目から段々普通のものになってきた。今ではどこにでもいそうな普通の妹だ。


「姉さん生徒会で早めに出ていったから。テーブルに姉さんが作った朝食があるよ」

「分かった」


 朝食を食べるためにテーブルの椅子に座り、姉が作った朝食を食べようとそれを見てみると、そこには一枚の紙がラップがかかってある朝食の上に置いてあった。


『弟くんへ。

お姉ちゃん、今から生徒会で早めに出ていくから、弟くんと咲ちゃんの朝食を作って置いてるからね。学校終わったら、イチャイチャしようね!ということで、美味しくなる魔法をかけてあげましょう!せーのっ、美味しくなぁれ萌え萌えきゅん♡

               お姉ちゃんより』


 丸めてゴミ箱に捨てておいた。毎日朝夕、料理を作ってくれてることは本当に感謝している。だが、これさえ…これさえなければいいのに。


「いただきます」


 朝食を食べる。普通にうまい。どうやったらこんなに美味しくなるのかと姉に聞いてみたことがあったが姉に「ひ・み・つ♡」だの「一緒に寝てくれたらいいよ」だの言ってきたので諦めた。


「ごちそうさまでした」


 朝食を食べ終えたら、テレビを点け、昨日見れなかった録画していたアニメなどを見始めた。


「ん?こんな時間か」


 そろそろ学校に向かう時間になったので、制服に着替え玄関に置いていたバッグを持って、咲と一緒に家に出た。咲の通学路は俺とは反対側なので、すぐに別れた。


「学校、めんどくせぇな」


 俺はそんなことを言いながら、歩いて高校に登校していた。俺と姉が通っている高校は私立であり、偏差値は普通だ。だが、この地域では結構評判が良く、行きたい高校に迷ったらとりあえずここと言われるほどだ。家から歩いても高校には10分ほどで着くので自転車に乗るのは必要ない。


「おはよう」


 生徒指導の教師が校門に立っており、登校してきた生徒達に挨拶をしていた。高校に着いたので靴から上履きに履き替え、自分の教室へと向かい、入った。


「おはよう、優」

「あぁ、おはよう」


 俺に挨拶をしてきたのは同じクラスメイトで友達の佐藤だ。席は俺の前で俺と同じアニメ好きでよくアニメなどの話をしている。


「昨日あったやつ見たか?」


 佐藤が再び話しかけてきた。恐らく昨日放送していたアニメのことだろう。


「見たよ。面白かった」

「そうだよな!あれからあんな展開になるなんて思わなかったぜ」

「そうだな」


 そんな何気ない普通の会話をしていると担任が入ってきた。


「はーい。皆さん席に着いてくださーい」


 担任のその言葉で俺は自分の席に着いた。東野雫とうのしずく。俺たちの担任の名前だ。しかし、生徒からはよくドジをするのでドジっ娘ちゃんやドジ娘先生などと呼ばれている。当の本人は普通に呼ばれたいみたいだが。


「では大事なプリントを配りっ!?」


 全員が席に着き、HRを始め、先生がプリントを配ろうとすると突然転んだ。そしてプリントは派手に散らばった。


「うぅ」


 そんなうめき声を上げながら、ドジ娘先生は落ちたプリントを拾っていた。途中で一番前の席に座っている生徒が拾うのを手伝っていたが。


「では皆さん、次の授業に遅れないようにしてくださいね」


 プリントを配り終えた先生はHRを終わらせ、教室から出ていった。その時、佐藤が俺に話しかけてきた。


「なぁ、放課後一緒に図書室行かないか?」


 佐藤が誘ってきたので、俺は快く了承した。


「いいぞ」

「よし、決まりだな」

「どこに行くのかな」


 佐藤と約束をしていると声をかけられたので振り向くと黒い長髪の少女がいた。蜜寺奏みつでらかなでだ。誰にでも優しく、成績が優秀と俺や佐藤とはかけ離れた存在だ。ちなみに言うと俺と佐藤、蜜寺は同じ中学出身だ。ぶっちゃけて言うと、クラスのほとんどが俺と同じ中学出身である。


「放課後に図書室に行くんだ。着いてくるのか?」

「ふーん、そうなんだね。今回は遠慮しようかな。用事があるし」

「分かった」

「あ、そうそう二人とも。」

「「?」」

「この学校にテレビ局が取材に来るみたいだよ?」

「へぇ、そうなのか」

「どんな内容なんだ?」


 そんな話をしながら、時間は過ぎていく。1時間目の授業が始まった。時間が過ぎ、3時間目の授業の時、俺の席は窓側の端っこで授業が話ばかりで暇だったので運動場を見た。姉がいた。恐らく体育の授業だろう。家では考えられないほどの真面目ぶりだった。一瞬姉と目が合った気がした。恐らく気のせいだろう。考えたくない。そんなことがありながら、昼食の時間や5・6時間目の授業などが終わり、放課後になった。


「よし、図書室行こうぜ!」


 俺と佐藤はバッグを持ち、図書室へと向かった。

図書室に着き、中へ入る。中はいかにも普通の図書室だが、漫画、ライトノベル、伝記、雑誌、オカルト本など数多くの本が置かれてある。そのため生徒からは図書室の形をした本屋さんなどと言われている。とりあえずライトノベルコーナーに行き、読みたい本を取って、近くにある椅子に座り、佐藤と共に読む。


「ほえーこんな展開になるんだな」

「そうそう、そこからどんどん面白くなるぞ」


 そんな会話をしているうちに下校する時刻になったので学校を出た。校門で佐藤と別れ、俺は1人で家に帰る。


(家帰ったら、姉ちゃんに色々言われるんだろうなぁ)


 そんなことを思いながら、俺は家に帰る。

ちなみに帰宅したら、予想通りに姉に目が合った事などを問い詰められた。

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