俺の姉がブラコンの件について

ハル

第1話 俺の姉がブラコンの件について

 普通の高校1年生こと、俺、新桜優しんおうゆうは成績普通だし、友達も多いわけでもなく、部活にすら入っていない。特徴的なことは姉と妹がいるということだけだろう。

妹の名前は新桜咲しんおうさき。中学3年であり、成績は俺と比べて、少し上である。俺や姉とは血が繋がっておらず、いわゆる養子としてやって来た。最初は上手くやっていけない時もあったが、時間がたつにつれ、家族として向き合うことが出来た。姉のおかげだが。

そして、俺の姉である新桜舞花しんおうまいかは俺と同じ高校で高校3年生の生徒会長であり、成績優秀、地域の人から圧倒的に信頼されているなど、俺と違ってただ者ではないことが分かる。だが、それは表の顔だ。姉には裏の顔がある。それは……


俺の姉がブラコンだということだ。


 家では俺にほぼくっついているといっても、過言ではないのかもしれない。正直に言うと、鬱陶しいことこの上ない。


 そんな俺だが、現在家の前にいる。高校も終わり、姉も生徒会でいないから、好きなことをしほうだいだーと思っていたが姉は今日俺よりも早く帰ってくるということを思い出してしまった。思い出してから、急に家に入りたくなくなってきた。


「はぁ」


 ため息が出る。俺は姉からの飛び付き攻撃をどう避けるかを考えていた。


「よし、入るか」


 結論、考えるのをやめた。結局、考えれば考えるほど詰むのだ。


「ただいまー」


 玄関を開け、靴を脱ぎ、上がろうとすると、前に見える階段から俺の姉、舞花が降りてきて俺に向かって飛び付いてきた。


「ぐへ!?」

「弟くーん!会いたかったよぉ。どれだけ私が心配してきたのか分かってるの?」

「いや、ただ普通に帰ってきただけなんだけど」

「むぅ、どうせ弟くんのことなんだから、寄り道でもして帰ってきたんでしょ?」


 攻撃を避けれなかった。というか寄り道なんてしていない。


「寄り道なんかしてねぇよ。ていうか、俺はあんたから見るに寄り道しかしない人間にしか見えないのか!?」

「?、かわいい弟くんだけど?」


 駄目だ。何もかも通用しない。何言っても無駄かもしれない。諦めるな俺。


「とにかく姉ちゃん離してくれ。早く私服に着替えてゆっくりしたいんだよ」

「つまり私服に着替えて、その後、私とイチャイチャしたいんだね!?」

「話聞いてた?」


 こんな姉だが、学校ではまるで別人だ。茶色い髪は腰ぐらいまで伸びており、アニメの世界からやって来たと思う程、美人だ。学校で話しかければ「私に何か用があるんですか」や「用がないなら話しかけないでください」など俺だけには辛辣だが家ではこのように学校とはまったく別みたいに変わる。風呂に一緒に入ろうとするわ、同じ布団で一緒に寝ようとするわで面倒くさい。


「テレビで録画していたアニメでも見るかね」


 自分の部屋でそんなことを言いながら、制服から私服へと着替えていた。


「兄さーん!夕食出来たよ!」

「早!?」


 妹である咲が大声で伝えてきた。確か咲も姉と同じく今日は下校が早かったはずだ。いくらなんでも早すぎる。今は午後4時15分ぐらいだった。いつもは午後6時ぐらいに出来て、食べるというのに。料理を作るのはほとんど姉だ。帰るのが遅いときは俺や妹の咲がやったりするのだが。恐らく今日は早く帰ってきたのでいつもより早く夕食を作ったのだろう。着替えが終わったので自分の部屋から出て、リビングへと向かった。


「いくらなんでもはやすぎるだろ。まだ5時にすらなってないぞ」

「暇だったからね。早く作って早く食べちゃおうかなって」

「ふーん、まぁいいか」

「後、早く食べて弟くんと一緒にお風呂に入りたかったからね!」

「あっそ」

「無視!?」


 咲が食卓と座ると全員でいただきますと言い、食事を食べ始めた。今日は肉じゃがだ。


「弟くんエネルギーが足りない。食べ終えたら、補給しなきゃ」

「なんだ弟くんエネルギーって」


 食べている途中に姉が急に喋ってきた。


「ふっふっふ、教えてしんぜよう!弟くんエネルギーとは!弟くんから出てくる特殊なエネルギーなのである!」

「そのまんまじゃねぇか」

「これを補給しなきゃ私は活動出来ない!学校ではエネルギー補給が出来ないので家でするしかないのだ!」


 学校では姉は真面目なので、こんなことは必ず言わないし、しようともしない。あんたの周りはあんたを尊敬してる人ばっかだぞ姉。こんな姉の姿を知ったら、尊敬している人は一瞬で理想像が崩壊だろう。


「ごちそうさまでした。と」


 そう言って、俺は食器を流し台に置き、その後ソファーに座り、テレビを点けた。


「弟くん。テレビを見るだけじゃなくて、私と一緒に遊ぼ?」

「嫌だ」

「じゃあお風呂一緒に入る?」

「嫌だ」

「じゃあ一緒に寝よ?」

「断る」

「うぅ、弟くんのいじわる!」


 誰がお前と風呂に入ったり、一緒に寝るか。少し早いが風呂に入るか。


「風呂入ってくるわ」


 そう言って、俺は勝手に絶望している姉を無視して、風呂に向かい、入った。その後もテレビを見たりスマホを見たりした。23時になったので寝ようと自室に向かおうとすると姉が希望の眼差しを俺に向けてきた。


「嫌だ」

「まだ何も言ってないのに!?」

「俺の部屋に入ってくるなよ」

「ぐぅ」


 やはり入ってこようとしてたみたいだ。そうして俺は自室に向かい、スマホで目覚ましを設定した後、ベッドに横になった。


「明日もこんなのが続くのか。俺の高校生活はどうなるのやら」


 そんなことを言いながら、俺は眠りについた。

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