毎回の批評家めいたコメントで恐縮ながら――さらには、どうかすると本シリーズに対しても失礼な響きになりかねないことを承知で申し上げるなら――この短編は完成度が頭一つ飛び抜けている印象です。比較的狭い範囲の舞台で、限られたキャラクターの、絞り込んだ内容の顛末を、それぞれの人間の視点からじっくと描いているからでしょうか、人間ドラマの濃さと奥行きがたまりません。子供を得るということの、一種理想的な憧憬と罪深さが並べられているのが、本格派のSF短編という感じで、硬質な読み応えがありました。
あえて申し上げるなら、最終話での小百合の内面がもう一段掘り下げられていれば、小百合サイドの覚悟なり心の軌跡なりが、一本筋の通った形で示せたのではとも思いました。夫の言いなりだった女性が、瀕死の夫にクールな態度でトドメを刺せるまでに成長(?)したのですから、読者としては、この人の中身がどう大化けしたのか、改めて何らかの行動なりセリフなりで確認したい、という気持ちが残らないでもありません。
このストーリーも、これからの本シリーズにいずれ深く関わっていくのでしょうか? 出生までにこれほど波乱を経たキャラとなると、もうメインキャラ級の人物でなくては、などと勝手に妄想しています 笑。この先も楽しみに読ませて頂きます。
作者からの返信
コメント、ありがとうございます。
子供を持つ、あるいは持たないということがどういうことなのか、それが自分の血をひくことの意味は、……そうしたことを考えてかいた一作でした。
ラストの展開ですね。検討してみます。
ここで生まれた子供がメインストーリーに関わって来ることはないのですが、アオイの子供と関わる物語は書きました。人間の言葉を話す犬を開発する物語です。
しかし、犬の気持ちを言葉にするのは難しく、納得できるものになりませんでした。現在、お蔵入りです。時間に余裕ができたら、書きなおしてみようと思っています。
これからもご贔屓に、よろしくお願いします。
まだつづくのかな、と思っていたら、ここで終わりだったんですね。
熊木田氏は、己の遺伝子を残すことができたことに満足して死んだのか、あるいはそんなことより死にたくないと思っていたのか……。
難しいところですね。
面白かったです。
ではではノシ
作者からの返信
コメント、ありがとうございます。励みになります。
熊木田氏の物語はこれで終わりですが、千坂亮治シリーズは続きます。(本人は死んでいますが)
現在、連載している『Nのゆりかご』もその関連小説です。そちらは人工出産ではなく、『核』にまつわるもので、娘のアオイも登場しています。
ご一読いただけたら幸いです。