第8話 目指せ地底とバズの予感!?
ダンジョンは、深層の奥にある
ダンジョンに潜る一番の目的は、
現在の地球で最重要なエネルギー資源になったそれ。トラック一杯分のジオード結晶で小さめの国家の数か月分のエネルギーが賄える、超高効率を誇るエネルギー。
だから、探索者はそれを探す。
ジオード結晶体を手に入れる方法は大きく分けて二つだ。
ひとつは迷宮内のジオード鉱脈を見つけて採掘する。
結晶じたいはその辺の内壁にも埋まって、ダンジョンの壁を破壊できるアースじゃなくても、ある程度は掘る事ができる。だが採掘できるのは、せいぜい小石くらいの大きさにすぎない。
DDDMのお姉さんに教えてもらった限りでは、最近は
深層に行くほど採掘できる結晶も大きくなるが、中層より下は
ふたつめは、
迷宮魔物はもれなく体内にジ・オード結晶体を含んでいる。これは大型で強力な魔物ほど大きな結晶体を内包していて、戦闘系の探索者はこの魔物を狩る事でジオード結晶を得ている。
もちろん迷宮魔物は危険だ。だが倒す事が出来れば報酬は採掘の比じゃない。
だからこそ、迷宮魔物を倒した後の結晶の所有権はいつも揉めるんだ。
探索者同士での殺し合いが起きるくらい……。
「あー、あの子たちほんとに怒ってないと良いが」
『所有権を放棄して逃げたのですから、心配はありませんよアサヒ』
「だがな、絶対印象は良くないぜ。復帰初日から大ポカだよ……」
――――――――――――――
-アサヒニキ気にしすぎじゃね?
-だいじょーぶだよ。むしろ助けてもらって感謝してるんじゃないかなぁ……
-あの子ら有名な子だよ。美少女JK探索者の二人組
-
-なんで知らんの定期
-そんなに強いのに、配信のこと全然知らないんだな
-アサヒニキ仙人説浮上
-なんなん。人里離れた山奥で修行でもしてたん? 俗世から離れてたん?
――――――――――――――
「いや、仕事が忙しくてちょっと……。それより有名なんだ。あの子たち」
美少女ね。言われてみれば確かに可愛い子たちだった。巫女服のスーツを着てた子は気絶してたみたいだけど。
俺を見上げていた紺セーラーの子を思い出す。
色白で、びっくりするほどサラサラの髪がキレイだった。
まつ毛が長くてさ、キラキラな目で俺をまっすぐ見ていた。スタイルだってよかったと思う。確かに、あんな可愛い子なかなかいない。
―――――――――――――――
-あの子ら救助されたっぽい。ハル・リカちゃんねるのファンが騒いでるわ。ドローン壊されて配信途切れて
-ほんまや。公式でアナウンスしてる
-お、やっぱりか
-ふーん? ふーん。あー。これはイケませんねぇ。アサヒニキ
――――――――――――――――
「あん? 何かやばいのかよ?」
コメント欄には『どうした? あー(納得)』みたいな文字列が流れる。
――――――――――――――――
-落ち着いて聞けアサヒニキ。ハルリカの2人を助けたのは誰なんだ? って騒ぎになってる。あそこファン多いからな。普段から同接10万超えてて、迷宮ケルベロスに襲われたところで配信途切れて、騒然としてたらしい
-助けてくれた人を探していますって訴えてるな
-マツリカちゃんかわい
-まつ毛長
-俺、ハルカチャン派。巫女服ってのが分かってんね
-ま? 今配信中なん? ほんまやな。オンライン会見してるわ
どーするアサヒニキ? 凸る? 凸る?
-アサニキ、シャイだからなぁ。絶対名乗り出ないだろ。ほら、嫌そうな顔してる。
-地面ほりほりしか興味がない男
-でもまじだぜコレ。情報提供者には、お礼が出るって
-アサヒニキこれ、絶対出てった方がいいぜ。バズの予感がする
―――――――――――――――――
「バズって何だよ。バズーカの事か?」
――――――――――――――――――
-仙人しぐさ乙
-何にもしらねーのな。ネットで目立ったことするとある日いきなり人気者になったりするんよ。バズるってんだ。配信者で1回バズると人生変わる
-
-ニキ、人気者になるチャンスですぞ
-仕事辞めて、探索者一本にするんだろ? チャンネル登録者増えるぞ
――――――――――――――――――
視聴者たちは、俺に名乗り出ろとうるさく催促してくる。
【伝えたい君】のディスプレイ上には、確かにあの子が真剣な目で訴えかけている映像が流れていた。
私たちを助けてくれた上に、何も言わずに去ってしまった探索者の方を探しています。あの人が助けてくれなかったら、私たちは今ここに居ません。ハルちゃんだって死んでいたかも……。どんな小さな情報でもお願いします。私はあの人にちゃんとお礼を――。ってな。
そう。別に怒ってたわけじゃないのか。マジで危なかったのか?
あー、じゃあ逃げなくてもよかった? じゃあ早とちりって事か……。
いやしかし、【バズ】、ねぇ……
『どうしますか、アサヒ。私は今からでも、名乗り出るのは有りだと思いますが』
「ええぇ……」
『おや、気が進みませんか?』
「いや、うーん。なんだかなぁ」
『ふっ、アサヒが何に迷っているのか、当てて見せましょう』
アースはなぜか得意げだ。
『勘違いで逃げちゃったから、恥ずかしい』
「……」
『結果的に、助けるだけ助けて颯爽と消えた形になったから、今さら出ていくのも野暮かなって思ってる』
「……うむ」
『さりとて、登録者が増えて今後の探索者生活が有利になるなら? と決めかねている』
「そ、その通りだ……」
流石アースだ。俺の考えなどお見通しである。
実際頭の中でシミュレーションしてみたんだ。『あ、それ俺ですって』言って出ていく場面を。でも何回考えてみても――
「なんかよぉ……、それって、かっこよくねぇなって」
―――――――――――――――――――――――
-よし、おれ代わりに凸ってくるわ
-馬鹿やめろ……っていや、止める理由なかったわ
-いけいけ。アサヒニキには失望したよ。とっととバズれ
-ニキの穴掘りから、ケルベロス一撃までダイジェスト動画作ったからこれももってけ
-サンクス
-やっちまえ。広く知らしめろ
-URL貼り付けてきた
-よくやった
-こっちに誘導してる
-GJ
-GJ
-DJ
-BJ
-ファ!? すごい勢いで増えるじゃん
-すげぇ。めっちゃ流れてきたな
-こんにちは
-こんにちは
-初めまして。あなたがケルベロス一撃男?
-ファ―――――wwww 百、千、万……どんどん増えりゅ~~
-あれ、アサヒニキ返事しないけどどうしたん?
-おーい、アサヒニキ~。あはは、あまりにリスナー増えて怯えてるカワイイ
-しゅごい、しゅごい! カウンター壊れちゃう(^ω^)
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