第7話 いまどきの迷宮事情
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-は? は? はぁぁぁあああ???
-迷宮ケルベロスてなんぞ? こんなの見たことないけど!!!!???
-いや、深層の一部にだけいるレアなヤツだよこれ。危なすぎて見かけたら全力で逃げろってDDDMで言われてる
-いや、それよりもアサヒニキ! 一撃って何!?
-えっぐ、いやえっぐ。なに? ニキのスコップって魔物も掘れんの? 胴体から頭にかけて
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やっちまった。
ちょっと硬いと思って少し力を入れたら階下にいた魔物ごと
降り立った先には、探索者の女の子がいた。それが声も出さずに真っ赤になって震えているのを見たとき、俺は確信した。
完全にアウトなやつだこれ。
彼女はこの魔物と戦闘中だったはずだ。戦闘の痕跡があったし、そばには仲間と思われる子も倒れてたしな。たいして強くないヤツだからもうすぐ狩れただろう。
なのに、急に横から出てきた俺がとどめを刺した。
無法地帯だった5年前の探索者界隈でも少ないながら一応の
当時はジオード結晶も高騰していて、野球ボール程度の大きさでも家が買えるほどだった。わざとやろうものなら、即戦闘に発展してもおかしくない超ド級の失礼案件だ。いきなり攻撃されても文句はいえない。
一応謝ったが、その子は許してくれなさそうだった。
顔を真っ赤にして、目に涙まで溜めてプルプルと震えてた。
でもよ、やっちまったもんは仕方ないじゃないか。
◆◆◆
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-なぁ、アサヒニキなんで逃げたんだ?
-それよ。別に逃げんでもとは思った
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ザクザクとひたすらに下層を目指す俺にコメントが届く。
あのあと、俺はすぐさま階下に移動した。横取りの報復を恐れたからだ。
「ああいう時は逃げるのが一番なんだよ。ゲームとかでも、獲物横取りされたら揉めるだろ? 昔から、トドメをさしたヤツがジオード結晶もらうってルールがあるんだ」
復帰初日にトラブルは勘弁だ。
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-いや、絶対そういう話じゃない
-そのルール古いよアサヒニキ
-彼女、やられかけてた説に一票
-あんなヤバい迷宮魔物、倒せる気がしないんだが? 多分あの子たちの事助けたんじゃね?
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「えー、無いだろー? アイツ雑魚だぜ。雑魚」
迷宮ケルベロスは、火炎と爪と牙のワンパターンの攻撃しかしてこない。耐久力も無い。深層の魔物の中なら強いほうだが、別に死にかけるほどじゃない。
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-あれを雑魚というか、この異常者……
-アサヒニキが前にいた、5年前のダンジョンはどんだけ魔境だったんだよ
-あんたは色々、異常だって
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俺の強さが異常? 何言ってんだ、こいつら。
あれしきで強さが判断できるわけないじゃん。
そう思いながら、振り向きざまにスコップを一閃した。
穴を掘る俺の背後に忍び寄ってきていた、お相撲さんサイズの鬼の頭が吹っ飛んだ。これで5体目。不用意に近づいてくるもんだから入れ食い状態だ。
さすがに深層に入ると、ぼちぼちエンカウントするな。
「逆に聞くけど、このダンジョンどうなってるんだ? 魔物が弱すぎるよ。【岩戸】が開いてなくて、深層までしか解放されてないってのは知ってるけどな。張り合いがないから、
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-あれで弱いとかww
-今雑に飛ばしたの
-マジで異常者乙
-
-東京ダンジョンを含め、現存するすべてのダンジョンの岩戸が開かれた事例は一つもありません。深層の岩戸のエリアが最下層ですよ
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「んあ? いや、そんなはずは」
5年前、俺は確かに【中京断崖】の
今でもしっかり記憶に残っている。
俺はあそこで忘れられない出会いと別れを経験した。確かに、あんな危険なところ現代日本にあっちゃいけない場所ではあった。もしかして、深淵層の存在ごと、
『アサヒ、中京時代の事はあまり配信で言わない方がよさそうです』
「ああ、俺も今そう思ったところだ」
どうも、今の時代のダンジョンと違う所が多すぎる。
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-岩戸ってなんなん? 俺探索者じゃない新参のリスナーだから教えろ産業
-岩戸ってのは
-中に巨大なジ・オード結晶体で出来た核があって、迷宮の全てがあるって噂だ
-「探せ、この世の全てを置いてきた」みたいなノリだな
-ワン〇ース
-でも閉まってんだよなぁ、岩戸……
-入れない――ってことォ?
-閉まってるのに、なんで結晶体あるって知ってるん定期
-噂だよ。う・わ・さ。でも確かになんでだろな? 迷宮核があること。その先に深淵層があるって誰が言い出したんだろ
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まぁ、あるけどな。迷宮の全て。
それでも深層域までの全てだけど。
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