取り返しのつかないことって心に響くというよりクる、グッと

「おーっす、すまん遅れたわ」


(レイラ)「お待ちしていました、様」

(クレア)「、遅い…」


ふう、まずはファーストコンタクトはセーフか、

俺を呼びに来てくれた拳闘士のは、まあアホだからこの髪に気づきはしまい。

そしてヒーラーのはいいとこのお嬢様だし、何より純粋だ、変な勘繰りはしないだろう。

一番やばいのは黒魔術師のだ、こいつは何をしでかすかわからん。

前は何だったか、メンバーで俺の家で打ち上げしていた時、洗濯魔道具の後ろから

俺のナニした後のパンツを拾い上げてきて、晒上げる始末をした女だ。


え?なんでティッシュじゃなくてパンツなんだって?

ティッシュってあれかパピルスのことか?

あんな高えもんにナニぶちまけられるなんてお貴族様だけだろう!ざけんな!

俺たち庶民は堂々とパンツに出すんだよ!


まあとにかく、クレアに気をつけて何とか話をそらしつつ…


(クレア)「ねえ、フッサ―…なんで帽子なんて被ってるの?」


そう言うと、クレアは一切のためらいもなく人様のハットをはぎ取った。


(クレア)「ふぇ?」

(ケルシー)「えっ?」

(レイラ)「まあ!」


三人の間抜けな声が酒場に響き渡る。

そして悲しくも朝の酒場は皆仕事モードで、騒いでいるやつなど一人もいなかった。

そして一斉に皆の視線が俺の方に向く。


一瞬の静寂。

音のない世界が、確かにその刹那存在した。

しかし、すぐに酒場は喧騒に包まれる。


(モブA)「おいおい、なんだよあの髪!散髪失敗したのか?」

ええ、そうだったらどんなによかったか


(モブB)「ヒャハ!噂の2属性様は頭がおかしくなっちまったのか?頭髪だけになぁ!」

いやなんもうまいこと言えてねえよ


(ケルシー)「あ、その、まあ、なんだ、うん、どんなお前のことも私は好きだぞ!ハハッw…」

やめて!ガチの同情はやめてケルシー、今はまだネタにしてほしい段階


(クレア)「フッサー、ごめん」

こっちもやめて!ガチ謝罪!いつものノンデリはどこいったの??


(レイラ)「……。」

せめてお言葉をくださいレイラお嬢様ぁ!!


「ちがう、ちがうんだ、いや何も違わないけど…俺も朝起きたらこうなってて訳が分からないんだ!」


(ケルシー)「いや、何も違わないでしょ!あんたはいずれこうなる運命だったし」


「は?どういう意味だよケルシー、おしえてくれ、何か知ってるのか?モンスターの攻撃か、呪いか?もしくは俺に恨みを持つやつの犯行か?」

「くっそー、誰だ?見当がつかん、この町で俺にたて突けるやつなんて辺境伯様くらいしかいねえぞ!」


「…あれ?まさか辺境伯様の犯行か?確かにあの方最近ちょっと生え際きてたし…」

「あれか、式典の時露骨にウィッグだったのをいじったのがまずかったか?ジョークを笑い飛ばしてた時内心はらわた煮えくりかえってたのか??」


「ごめんなさい辺境伯様ぁ!もう反省してますのでどうか私の髪を治してくださいぃ…」


(クレア)「いや、フッサー、普通に2属性の代償、それ」


「え、どゆこと?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「えっ…何て?…スイジョウキバクハツ…え?」


(クレア)「《水蒸気爆発》。最近黒魔術界を賑わせてる新たな現象。」


「いきなり難しい言葉を使うなあああああああああああ!!!」

「ぶちぎれるぞ、おらあああああああああああ!!」

「出るとこでるぞ、ごらあああああああああああああ!」


(レイラ)「ど、どうされたのですかフッサヘアー様、落ち着いてくださいませ!」


(ケルシー)「壊れちゃったわね」


(レイラ)「よーしよし、落ち着いてくださいフッサヘアー様ぁ、いい子ですからねー」


(ケルシー)「あんたってほんとお人良しね、レイラ」


(レイラ)「だってかわいそうじゃないですか、いきなり朝起きたらこんなことになって」


(レイラ)「つらかったですよね」

「うん」

(レイラ)「こわかったですよね」

「うん」

(レイラ)「じゃあ私に続いて復唱してみてください」

(レイラ)「水蒸気爆発」

「すいじょうきばくはつ?」

(レイラ)「水蒸気爆発」

「スイジョウキバクハツ!」

(レイラ)「水蒸気爆発」

「水蒸気爆発!!」

(レイラ)「ほら言えました!えらいですね、すごいですフッサヘアー様!」


「ってなんだよそれえ!!」

 時計の針は今午前8時37分を指す、起きてからまだ2時間も経っていない。

だというのに、自身の毛根が尽き果てた現実を知り、受け入れ、そして周りにからかわれる。その原因はなんだと問うと、聞いたことのない言葉が返ってくる。

うむ、心が壊れるのも時間の問題だ。俺は今日この日が長くつらい一日になりそうだと心を決めた。


「で、何なんだその水蒸気爆発とやらは、教えてくれクレア」


(クレア)「そうだね、簡単にいうとフッサ―の二次元魔法体が互いに干渉しあい…」

「もっと簡単にお願いします!クレア様!」


(クレア)「要はフッサ―の水魔法と炎魔法の影響で小さな爆発を起こしたってことだよ」

(クレア)「そしてその爆発でフッサ―の毛根細胞は死に絶えたってこと」


「つまり俺がかっこつけて頭の上で同時詠唱するたびにモンスターと一緒に毛根細胞とやらも死んでたってこと?」


(クレア)「そうそう、理解が早いね、さすがフッサ―」

(クレア)「でもよく持った方だよ、今いくつだっけ?28?小さい時からあの魔法使ってたんでしょ?」

いつだったか、16いや、17の時だったか辺境伯様のもとで猛特訓の末完成した同時詠唱魔法。完成した時から、ピンチになった時にはいつも使ってた。あれマジで強いし。そうか、使ったあと髪の毛が妙にざらついてたのは細胞が死んでたからなのか。すまんな11年も、毛根細胞。





















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俺って最強!ここ辺境!?おれ恐れ皆戦々恐々!でも代償知って凶響虚狂! @mashibasu

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