第215話 結婚式
俺はシルヴィに手伝われながら衣装に着替えた。
「大変お似合いです。では、旦那様、部屋を出たらそのまま奥に向かってください。そこが婚儀の間で巫女さんが待っています」
「わかっている」
何度も説明を受けた。
「では、私はこれで……今日は王都の見回りをします」
シルヴィが恭しく頭を下げる。
「ご苦労。明日、城に来い。例の話を進める」
「かしこまりました。ああ、そうだ……ご結婚おめでとうございます」
「どうも」
「ふふっ……」
シルヴィは薄っすらと笑うと、霧のように姿を消した。
「おばけみたいだな」
『失礼ですよ!』
姿は見えないが念話が聞こえてくる。
「いいからはよ行け」
『はーい』
シルヴィが気の抜けた声で返事をすると、独りでにガチャッと扉が開いた。
「ハァ……行くか」
俺は準備を終えているので最後にリーシャから返してもらった王家の剣を手に取ると、部屋を出て、通路の奥に進んでいく。
そのまま進んでいくと、広間に出た。
広間は左右には壁があるが、前後には壁がなく、湖が見えている。
そんな広間に巫女のおばさんが一人で立って待っていた。
「お待ちしておりました、殿下。どうぞ、こちらへ」
巫女は俺に頭を下げると、呼んでくる。
「今日はよろしく頼む」
俺は巫女に近づくと、頭を下げ返した。
「はい。しばしお待ちください。まだリーシャ様とマリア様が準備中です」
まあ、そうだろう。
あいつらは時間がかかる。
「わかっている」
「しかし、殿下、本当に2人同時で構わないのですか?」
普通は分けてやる。
だが、リーシャとマリアが同時でいいと言ったのだ。
「構わん」
「まあ、そういうケースも少なくはないんですが、王族は初めてですよ」
「そうだろうな。マイルズが3人同時をやってくれるのを期待している」
「王妃様が倒れますよ」
巫女も冗談とわかっているので笑いながら答えた。
そのまましばらく待っていると、白いドレスに身を包み、頭にはギリス王妃からもらった髪飾りを着けたリーシャとマリアがやってくる。
「お待たせしました」
リーシャが謝罪する。
「気分はどうだ? 倒れそうか?」
「そんなわけないでしょ。でも、動きにくい」
「変な感じがしますー」
まあ、重そうなスカートだもんな。
「揃いましたね。では、これより婚儀を始めましょう。水の神殿の婚儀はそう難しいものではありません。ただ、お互いに誓い合うだけです」
結婚式と一言に言っても色んな形式がある。
家族や先祖に誓ったり、神に誓ったりと様々だ。
水の神殿というか、ウォルターはお互いに誓い合うだけになる。
まあ、俺達は別に誓わないといけないものがあるんだけど……
「では、偉大なるエーデルタルトの子リーシャよ。汝はロイドを夫とし、永遠の愛を捧げることを誓えますか?」
「誓えます。愛する夫と我が名、我が命に懸けて誓います。そして、死すべき時は共にあらんことを願います」
「次に偉大なるエーデルタルトの子マリア。汝はロイドを夫とし、永遠の愛を捧げることを誓えますか?」
「誓えます。愛する夫と我が名、そして、我が命に懸けて誓います。そして、死しても永遠の愛であり続けること願います」
なお、こいつらはこれをマジで言ってる。
「では、偉大なるエーデルタルトの子ロイド。汝はリーシャ、マリアを妻とし、永遠の愛を捧げることを誓えますか?」
巫女が俺を見た。
リーシャとマリアも見てくる。
「誓います。ロンズデールの名に、そして、偉大なるエーデルタルトに誓います」
俺はそう言って、王家の剣を抜く。
「妻を守り、子を守り、己の名を守る。そして、敵を討ち果たすことをリーシャとマリアに誓おう」
俺は剣を自分の顔の前に持っていき、立てた。
実はこの魔剣になりかけている王家の剣はこのためだけの剣だったりする……
「偉大なるエーデルタルト子ロイド、リーシャ、マリアよ。汝らの誓いは水の神に届いた。汝らに永遠の祝福があらんことを……」
巫女がその場に跪き、目を閉じて祈り始めた。
そのまましばらく祈っていると、目を開け、立ち上がる。
「では、最後にロイド。誓いの証を」
俺はそう言われて、ポケットから指輪と取り出し、リーシャの手を取った。
「5年と91日も待たせて悪かったな」
「いえ……」
俺はリーシャの指に指輪をはめる。
次にマリアの手を取った。
「お前を二度と奪われないようにする」
「はい……」
俺はマリアの指に指輪をはめる。
「よろしい。今この時をもって、汝らは夫婦である…………以上でございます」
巫女が俺達に向かって、頭を下げた。
「終わったな」
「そうね。あ、ロイド、剣を返して」
リーシャがすぐに俺の剣を奪う。
「…………あいつ、ひどくね?」
俺は小声でマリアに同意を求める。
「私は殿下の日にち発言に引いています。殿下も数えているじゃないですか」
「そんなわけないだろ」
この前聞いた日にちに今日までの日数を足しただけだ。
誕生日すら覚えていなかったのに覚えているわけねーだろ。
「どうでもいいから早く戻りましょう。私、お腹が空いて倒れそう」
「あ、私もです」
2人は朝も結局、ジュースしか飲んでなかったしなー。
「巫女様、ありがとうございました」
俺は取り仕切ってくれた巫女に礼を言う。
「いえ、こちらこそ留守にしてしまって婚儀が遅れてしまい、申し訳ございません」
「そこは気にしなくていい。では、俺達は城に戻る」
「わかりました。着替えたらそのまま船に乗ってください。後はこちらで致します」
「うむ。では、頼む」
俺達はこの場をあとにし、お互いの通路に引き返していった。
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