第152話 マリアの脅威
「では、始めましょう。いくらになさいますか?」
「先程と同じ金貨2枚でいい」
俺はカバンから金貨2枚を取り出し、テーブルに置く。
「かしこまりました。では、カードを引いてください」
俺がカードを引くと、数字は10だった。
「次にマリア様も引いてください」
今度はマリアがカードを一枚引き、場に伏せた。
「どうなさいますか?」
「勝負だ」
「わかりました…………では」
ディーラーの合図で俺とディーラーが場に伏せられたカードをそれぞれめくる。
すると、俺が10で相手は4だった。
当然、俺の勝ちだ。
「お見事です。次の勝負をやりますか?」
ディーラーは金貨1枚をテーブルの上に置いてある金貨に重ねながら聞いてくる。
「もちろんだ」
「では、お引きください」
俺はそう言われたので一枚引く。
引いたカードは5だった。
次にマリアも一枚引き、場に置く。
「いかがしますかな?」
「勝負だ。俺が降りることはありえない」
「では…………」
俺とディーラーは同時にカードをめくると、俺のカードは5でディーラーのカードは3だった。
「あれ?」
マリアが首を傾げる。
「お見事です…………続けますか?」
「もちろんだ」
「では、どうぞ」
俺がカードを引くと、1だった。
絶対に負けない1だ。
次にマリアがカードを選び、場に伏せた。
「どうされますか?」
「あー、今後、その確認はいらんぞ。降りんから」
俺は愛すべきマリアを信じている。
「そ、そうですか? では、降りる時は言ってください…………いきます」
俺とディーラーが同時にカードをめくる。
すると、俺が1でディーラーが12だった。
「惜しい!」
マリアが悔しそうに言う。
「お見事。次にいかれますかな?」
「当然だ」
俺はその後もディーラー(マリア)と勝負を続けるが、勝ち続け、賭け金が金貨1536枚になっていた。
「おかしい……絶対におかしい」
マリアが首を傾げる。
「…………お、お見事です。続けますかな?」
ディーラーもこれまで絶やさなかった笑みが引きつり始めていた。
「もちろんだ」
「では、どうぞ」
俺はカードを引いたのだが、カードの数字は3だった。
下から2番目の数字である。
「よーし、今度こそ!」
もはや敵に回っているマリアがカードを選び、場に伏せた。
「では、勝負です」
俺とディーラーがカードを同時にめくる。
俺が3でディーラーが2だった。
もちろん、俺の勝ちであり、俺は金貨3072枚を得た。
「おかしい! 絶対に変だ! なんで3で降りないんですか!?」
マリアがおそらくディーラーや支配人が思っていることを代弁する。
「勝つと思ったんだよ」
「絶対に不正です!」
残念ながら不正ではないんだよ……
本当に残念ながら……
「お、お見事でございます」
「運が良かったな」
誰かさんの運が最低なだけ。
「続けますか?」
ディーラーの顔に降りてくれって書いてあるな。
「いや、勝負だ」
「さようですか。では、どうぞ」
俺はカードを一枚選んだ。
カードは…………最弱の2だった。
「マリア様、申し訳ありませんが、袖をまくっていただけませんか?」
おっ! 王族の妻を疑いやがったぞ。
「はい!」
マリアは袖をまくり、カードを選んだ。
「いかがなさいますかな?」
「勝負だ」
「わかりました…………では」
俺とディーラーがカードをめくる。
すると、両方とも2だった。
「ドロー、か……」
「ドロー、か……じゃないですよ! これは絶対におかしい! 2で降りないなんてありえない!! 不正だ! 絶対に不正だ! 魔法を使ったんだ! ディーラー! 魔法の使用を調べてください」
もはや完全に代弁者だな、こいつ。
というか、どっちの味方なんだよ…………
「い、いえ、魔法による不正使用はないようですが……」
「お、おのれー! 黒王子めー! 負けないぞー! この聖女様は悪の王子なんかに屈しないんだ!」
帰ってこい。
お前、その悪の王子の嫁だろ。
「……続けますか?」
「もちろんだ」
俺がカードを選ぶと、そのカードは1だった。
最強の1。
「来い! 強いカード来い! 悪を討つ正義の数字!」
もはや俺が引いたカードを確認することもなくなったマリアは悲しいことを言いながらカードを選ぶ。
「では……」
「来い! 聖女の祈りを受けたカード! 手が早い女の敵を討て!」
何を言ってんだよ。
俺とディーラーは同時にカードをめくる。
すると、俺が1でディーラーが13だった。
「やった! 強いカード……って、なんでだー!!」
こいつ、面白いな。
「金貨何枚だ?」
「6144枚ね」
ディーラーの笑みが消えている。
「もう一度だ! かかってこい、殿下! 主よ! このマリア・フランドルに祝福を!」
お前のそこまでの不運はもはや祝福だよ。
「では、次にいこうか」
「あのー、ロイド様、そろそろおやめになられては?」
支配人が止めてくる。
「いやいや。金貨の限界を見たいんだ」
「そ、そうですか……」
動くな……
「では、次の勝負に参りましょう」
さっきまで動揺を隠しきれていなかったディーラーが微笑みながら俺にカードを差し伸べす。
「うむ」
俺はカードを一枚引き、見てみる。
カードは7だった。
「では、マリア様、どうぞ」
ディーラーがマリアにカードの束を差し伸べた。
「主よ! 信じています」
マリアが袖をまくりながらカードを引き、場に伏せた。
「…………ロイド様、奥様のためにもそろそろ降りるべきでは?」
急に支配人が耳打ちをしてきた。
「…………もう少し楽しませんか」
俺はディーラーから目を切り、支配人に言う。
「かしこまりました」
支配人が頭を下げた。
「勝負でよろしいですか?」
ディーラーが聞いてくる。
「もちろんだ」
「では…………」
俺とディーラーは場に伏せられたカードを同時にめくる。
俺のカードは7であり、ディーラーのカードは…………1だった。
「やったー!」
カードの結果を見たマリアが喜ぶ。
「不正だ! ありえない!」
「イカサマよ! マリアが勝てるわけないもの!」
俺とリーシャが同時に叫びながら立ち上がった。
「なんでですかー!?」
あ、泣いちゃった……
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