第068話 獣人族の計画
俺がベッドの上でジャックの本を読み続けていると、夕方になり、リーシャとマリアが帰ってきた。
俺達は前日と同様に夕食を食べ、ゆっくりすると、この日は就寝した。
翌日、この日はいつもより早く起き、布団から出ようとしないリーシャを無理やり起こすと、朝早いうちから町を出る。
おかげであまり人と出会うことはなかった。
そして、そのまま南の森を目指して歩いていき、森に到着すると、ティーナが森の外で待っていた。
「あれ? 随分と早いね?」
森の入口で俺達を待っていたティーナが聞いてくる。
「あまり人と会いたくないんだ。町中ではこれだぞ」
俺はそう言って、ララの首輪に繋がれている鎖を持つ。
「…………最悪」
ティーナが睨んできた。
「言っておくが、こいつを指名したのはお前らだからな。俺だってもうちょっと大人の女だったらあんな目で見られてないわ」
なんなら男の方が良かったわ。
「…………ごめん」
ティーナは謝ってくるが、微妙な表情だ。
自分の妹だし、複雑なんだろう。
「そんなことより、ベンはどうした? 魔石と金を交換したいんだが……」
俺は落ち込んでいるティーナを無視し、本題に入った。
「あ、それね。今、皆で森の中のタイガーキャットを狩っているところ。私は見張りだね」
まだ狩ってる途中だったか……
「ふーん、じゃあ、待ってるか」
俺はカバンからシートを出すと、その場に敷く。
そして、シートに座ると、カバンかジャックの本を取り出し、読みだす。
マリアもシートに座ると、俺のカバンに手を突っ込み、本を取り出して読みだした。
「私はタイガーキャットを狩ってくるわ。体を動かしたいし」
リーシャは昨日も特に動いてないし、動きたいのだろう。
「いってらっしゃい」
「ん」
俺が許可を出すと、リーシャは1人で森の中に入っていた。
「勇ましいねー。あいつ、生まれてくる性別を間違えただろ」
「そんなことないですよ。あんなに美人なんですよ? もし、男性だったらロイドさんが霞みます」
霞んじゃうかー。
まあ、女の方が良いわな。
美人だし。
「あなた達って好き勝手するよね……」
ティーナが俺らの行動を見て、呆れる。
「ちゃんと見張ってろよ。ララ、お姉ちゃんと一緒に見張ってろ」
適当に遊んでなさい。
「はい」
俺とマリアは本を読み、ティーナとララは話をしながら時間をつぶしていく。
そして、太陽がてっぺんに昇ったくらいでリーシャが大きな布袋を持ったベンを連れて戻ってきた。
「ん? 一緒だったのか?」
俺はベンに聞く。
「ああ……この女はタイガーキャットをあっという間に倒すんだが、解体したくないからと言って、その場で放置するんだ。仕方がないから俺が解体して回っていた」
「あー、そりゃすまんね。解体はいつも俺がやってたからな。まあ、魔石代はやるよ」
銀貨2枚ぐらいは払おう。
こっちは討伐料の銀貨7枚だし、
「そうか…………では、これだ」
ベンが大きな布袋を地面に置く。
俺は腰を下ろすと、布袋から魔石を取り出し、数を数えながらカバンに入れていく。
「リーシャ、お前は何匹狩った?」
「数えてない」
数えとけよ……
「その女は12匹だ」
結構倒してるな……
「えーっと、85個あるから…………金貨17枚だな。ほれ」
俺はすべての魔石をカバンに入れ終えると、ベンに金貨を渡す。
「確かに」
「しかし、多いな。この森にこんな数のタイガーキャットがいるのか?」
「いや、半分以上は昨日の夜に平原に出て狩ったものだ。我々は夜でも普通に見えるからな」
ジャックからもらったあの薬みたいな感じかな?
そういや、俺らも明後日は夜の行動になるからあれを買っておいた方が良いな。
「ふーん、当日の作戦は決まったか?」
「大まかにはな。ただ人選や細かいところがまだだ。午後からはそのあたりの会議になる」
「ふーん、まあ、頑張れ。じゃあ、俺らは帰る。明日もまた来るわ」
「頼む」
俺達はシートや本を片付けると、ティーナとベンと別れ、町に戻ることにした。
「リーシャ、どうだった?」
俺は森からある程度離れると、リーシャに聞く。
「やはり女性が多かったわ。それに皆、森の中を巧みに動いていた。さすがは獣人族って感じ」
森では人族よりあいつらが有利か……
「他には?」
「ナイフを持っていた者が数人。あとは剣を持っていた人もいたわ」
剣?
「冒険者を襲って奪ったか?」
夜でも見えるって言ってたし、夜襲をすれば可能だろう。
「それはどうかしら? もし、そうやって奪ったのなら被害がギルドに報告されていると思うわ。でも、そんな気配はなかったでしょ?」
もし、盗賊の可能性があるなら森の調査はあんなに適当にはならない。
つまり別の方法で剣を入手した。
「海は見たか?」
森の西は海だと言っていた。
そこから漂流物を集めたらしい。
「見れなかった。海の確認のために森に入ったんだけどね。他の獣人族の女性に巧みに邪魔された。そうしてたら後ろにはベンよ」
余計なことをさせないための見張りだな。
つまり海には何かある。
「…………大体、わかってきたな」
「そうね。まあ、私らには関係のない話よ。それよりもお腹が空いた」
もう昼を過ぎてるだろうしなー。
「やっぱり携帯食より宿屋の飯の方がマシだろ」
「そうね。まあまあだもの」
「御二人共、そんなことを言いながらめちゃくちゃ気に入ってるじゃないですか……」
あの魚料理はワインに合うんだよなー。
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