第059話 人権なし
この店には50人以上の獣人族の奴隷がいるらしい。
「まあ、40人近くの女がいれば、良いのがいるだろう」
「もちろんです。必ずやお客様のお眼鏡にかなうものがありましょう」
「ちなみに、獣人族で一番高いのはどんなのだ?」
「一番のものはキツネ族の少女ですね」
あー……ジュリーっぽい。
「いくらになる?」
「申し訳ございません。こちらは奴隷市のオークションに出す奴隷です」
「そんなに高く売れそうなのか?」
「ええ。まだ幼いというのにあの妖艶さは素晴らしいです。もし、普通に買うとしても金貨1000枚はかかります」
高いなー。
ティーナが50人も買えるじゃん。
「どちらにせよ、手が出んな」
「まあ、あれは特別です。他のものでしたら金貨5枚から50枚程度ですよ」
「一気に下がったな……」
「良いものは奴隷市で売りますからね」
残りものか……
「まあいい。実際に見ることは可能か?」
「もちろんです。では、こちらへ」
俺はブルーノと共に左の通路に向かって歩いていく。
俺は通路を歩いて、奥に向かっているが、通路の左右は手格子がはめられた牢屋みたいになっており、中には人族や獣人族の男が項垂れて座っていた。
「男しかおらんな」
「男女を分けています。余計なことをされては困りますからね」
そりゃそうだ。
「獣人族はわかるんだが、人族の奴隷は何だ?」
「借金や罪を犯したものですね。中には親に売られたものもいます」
ふーん。
はした金で子供を売るのか……
俺が色々あるんだなーと思っていると、通路の先に扉が見えてきた。
「この先が女奴隷のエリアです。手前が獣人族になりますので、ゆっくりと吟味なさってください」
ブルーノがそう言うと、扉を開けた。
ブルーノに促され、扉をくぐると、正面に手格子がはめられた大きな牢屋のような部屋があった。
俺はブルーノに言われた通り、手前の部屋を鉄格子越しに見る。
手前の部屋には大勢の人が部屋の奥でうずくまっていた。
確かに獣耳が生えているので獣人族だとは思うが、うずくまっているため、よくわからない。
「全然、わからん」
俺がそう言うと、ブルーノが鉄格子に近づく。
すると、腰から鉄の棒を抜き、鉄格子をおもいっきり叩いた。
ゴーンという音が響くと同時に奥でうずくまっていた獣人族の女達が慌てて立ち上がり、こちらにやってくる。
「そういうことをやるなら先に言え。びっくりしたわ」
急に叩くな。
心臓に悪いわ。
「これは申し訳ございません…………お前達、並べ!」
ブルーノがそう言うと、女達は何列かに分かれて並びだす。
「教育が出来てるな」
「これが仕事ですからね」
俺は女共を見てみるが、あちこちに折檻の痕が見えていた。
「傷がついてるから安くしろ」
「引き渡しの際には回復させますよ」
そういや、そういう仕事がギルドにあったな。
「ふーむ……」
俺は一列目の女共を見てみる。
一列目にいるのはきれいどころが揃っているとは思うが、20代くらいにしか見えない。
ティーナと同じくらいだろう。
「ちなみに、こいつらはいくらだ?」
「えーっと、右から1、3、7番目が金貨30枚で残りが20枚ですね」
差がわからん……
「その値段の差はなんだ? 一緒だろ」
「足首にピンクのひもがついているでしょう? あれは男を知らない証です。処女は定価の1.5倍します」
処女は高いのね……
「ふーん……」
「お気に召しましたか?」
どう見てもティーナの妹はいないな。
「10歳の子はいないか?」
「随分と具体的ですね」
「そういう趣味だ。大人は好かん」
はい、これで俺はロリコン王子になったー。
リーシャとマリアを連れてこなくて本当に良かった。
リーシャなんか発狂するんじゃないかな?
「なるほど…………おい! 聞いていたな!? 10歳前後は前に出ろ!」
ブルーノがそう言うと、一列目の女共が下がっていき、代わりにまだ少女にしか見えない子供達が前に出てきた。
「ちなみにだが、例のキツネはどれだ?」
キツネ耳がいないんだが…………
「あれは特別ですのでここにはおりません。奥の部屋ですね」
「うーん、一目見たかったが、まあいい。残り物から探すか……」
「良い子が揃ってますよ」
確かに可愛らしい子達だとは思う。
だが、子供すぎて、まったくそういう目で見れない……
まあ、今はどうでもいいか……
えーっと、ティーナに似た犬族はっと…………どう見ても1人しかいないな。
「そこの女はいくらだ?」
俺は明らかにティーナの妹であろう少女を見つけたので値段を聞いてみる。
「金貨30枚ですね」
「高いぞ」
「見た目も良いですし、処女ですので……」
まあ、買えんこともないか……
「ちなみに、こいつの名は?」
これでララじゃなかったら嫌だし。
「名前? さあ? 21番としか呼びませんし…………お客様が購入後に好きな名をお付けください」
…………マジでペットだ。
ティーナが初めて会った時に名前を聞いたら泣いた理由がわかった。
「こいつでいい。金貨30枚だったな?」
俺はカバンから金貨を取り出し、ブルーノに渡す。
「はい。確かに。では、準備を致しますので入口の受付でお待ちください」
「準備? このままもらっていくが?」
「いえいえ。奴隷の首輪をつけないといけませんし、回復魔法や身をきれいにする必要がございます」
「ふーん……じゃあ、まあ、頼むわ。手荒なことはするなよ。もう俺のだし」
「もちろんでございます」
うーん、初めて奴隷を買ったが、あまりいい気分はしないな。
特に仲間が売られる光景を見て、泣きそうな顔をする獣人族と自分が買われたという事実に絶望している少女を見ていると……
こりゃ、ティーナも逃げ出すわけだわ。
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