幕間〜聖女の結婚式〜
神殿で広報を担当しております、リッチェ・バード35歳。ついに私にも遅い春がやって参りました。没落貴族の娘に生まれ、結婚を諦めていたこともありましたが、まさか聖女様のご婚約から結婚ブームが起こるとは!!!そのブームのおかげで、晴れて聖女様の結婚の二週間後、仕事が落ち着いた本日入籍いたしました!!!パチパチパチパチ!!僭越ながら幸せになりたいと思います!因みに旦那様は神殿で出会った年上の聖騎士の方です。筋肉ってステキ!
さて、本日はそんな私に幸せを運んでくださった聖女様…いえ、帝教王シャーロット様と、王配となられたユリエル様のご婚約から結婚までの裏話をお送りしたしますね!
今は王配となられたユリエル様ですが、還俗した際は、噂ではオルレリアン家を継ぐためだと言われておりましたので、聖女様と結婚するわけではないのかと、平民街はがっかりムード、貴族達は未来のオルレリアン夫人となるべくどこの家も気合を入れて、今年はいつもよりも早くに王都に貴族が集まり始めました。
しかし、社交シーズンが始まってみれば、女性が一言すら話しかける暇もなく、ユリエル様は王都にやってきたその足で参加したパーティで聖女様をダンスに誘うと、文字通りあっという間に婚約してしまい、あの噂はなんだったのか!と気合を入れていた貴族達はガッカリしていました。
そこから正式に二人の婚約が結ばれたことが神殿とオルレリアン家から発表され、再びユリエル様がシャーロット様の隣に立つ姿が見られるようになりました。しかし、その裏で、二人の婚約を知らされた料理長はショックのあまり倒れてしまい、お二人で料理長の家に何日も通うことになったのだとか。
神殿には婚約祝いが次々届き、王都へ足を運ぶ信者が道を埋め尽くす程で、大陸中から今も人々が押し寄せています。
そんな大変な神殿ですが、実は婚約発表と同時に、元々王宮があった土地から更に敷地を広げて、十年かけて建築した聖宮に聖女様一家が移り住むことが発表されました。
更に!それに合わせて大陸中から選抜された聖騎士で構成する、聖宮騎士団が新たに設置され、御一家の護衛全般を請け負うことに決まりました。残念ながら、私の夫となる方は選ばれておりませんが、エリート中のエリート集団とのことで、騎士達の憧れの騎士団となりそうです。
初代聖女が結婚されてからは王宮に住んでいたことを踏まえれば、神殿を離れることは不思議なことではありませんが、聖宮は、教会関連施設としか公表されていなかったので私はシャーロット様の新居と聞いてびっくりしました!
神殿と王宮の間にあった林を切り開いたことで神殿の敷地が拡大されたような感じでしたので、神殿内にシャーロット様の城が作られたという方が分かりやすいでしょうか?
今の所、聖母様も教王弟アンドリュー様もお住まいは移されておりませんが、聖宮内には四つの別宮があり、その内の一つにお移りになる予定なのだそうです。まだアンドリュー様も小さいのでご配慮されているのかもしれません。
ユリエル様は、ご婚約されてから聖女様へ向けられる熱い視線と、これまで決して見ることは出来なかった柔らかな微笑みを惜しむことなく見せてくれます。仕事とプライベートは完全に分けるタイプだったのかもしれません。
公の場に現れる度に失神者が出るほどの威力ですので、皆様ご覚悟の上ご観覧ください。
一方、聖女様もユリエル様とご婚約されてからは、とても良く笑われるようになり、王配の座を狙っていた多くの王族や貴族の傷を今も抉っているようです。ユリエル様をまっすぐ見つめる聖女様と、それを抱きしめるユリエル様の熱々ぶりは内臓に来るようですので、吐血に注意してくださいませ。
そんな熱々ぶりを惜しげもなく披露してくださるので、結婚意欲の上がっていた王族貴族は婚約ラッシュ、結婚ラッシュで、神殿は火の車状態で神官達が走り回っております。
冒頭通り、私の夫もお二人にアテられて告白の前にプロポーズしてきたのですから、感謝感激!!もちろんそんな機会を逃すはずもなく、正気に戻る前に籍を入れさせてもらいました。
ご婚約が発表されたその日から、ユリエル様は聖宮に移られ、お二人での生活をされています。先日の結婚式での熱い口付けの瞬間を、画家が聖宮の壁に描かれているという噂です。その絵を見る度に口付けするお二人が想像出来るほど、仲睦まじく過ごしていらっしゃいます。
結婚式後のインタビューでは、早々にユリエル様がシャーロット様を連れ去ったことで短く終わってしまいましたが、新婚ですから、こちらの配慮不足でした。そのインタビューの様子で幸せをお裾分けいたします。
「ご結婚おめでとうございます」
「「ありがとうございます」」
「とても素敵な結婚式でした。神も朝からずっと花を降らせて喜んでいらっしゃいましたね!」
「はい。父はずっと泣きながら喜んでいました。ユリエルはずっと怒られていましたけど、いつものことですからね」
「愛し子の結婚ですから、私は怒りを受け止めるだけです」
「父もユリエルのことは気に入っています」
「聖宮に移られてからのお二人での生活はいかがですか?」
「それほど変わりませんが、父がいない分とても静かに感じます」
「そうですね。神殿では神がいつも一緒におられましたから、二人で毎日ゆっくりする時間があるのは初めてかもしれませんね」
「一足早い新婚生活を満喫していらっしゃるようですね!今日からは名実ともにご夫婦となりますね!これから少しずつ実感が湧いてくるのかもしれません。そういえば、聖宮は神殿からのサプライズのプレゼントだと聞いたのですが、驚かれたのではないですか?」
「?帝教王の立場で知らないということはないです。工事着手こそ国王になる直前でしたが、工事計画書も、工期予定も、予算も知っていましたよ?」
「ご存じだったのですか!?」
「??毎年予算計上してて、大規模な伐採もあって、何より神殿の敷地の隣まで土地を拡大して、なんの施設か知らないなんてことはあり得ないのでは?即位前に許可の降りていた計画ですが、その後の書類はユリエルが処理しても、私は目を通していましたよ?」
「私の目を盗んでそんなことを?いつですか!?」
「ユリエルが私に見せない書類があるのは初期段階で気付いていました。あとは席を外したタイミングで処理後の書類入れを確認するだけです」
「まぁまぁ!流石にあの豪華な建物を隠すのは無理ですしね!気付かれた時はどう思われたのですか?」
「ユリエルと住むならベッドは小さい方がいいなぁと思ったので、小さいサイズに変更しておいたくらいです。くっついて寝るのが好きなので」
「ミスではなくシャーリーの仕業だったのですね…今日はこれくらいで失礼してもよろしいですか?パーティも終わってゆっくりしたいので」
「ふふふふっ新婚ですものね。ご協力ありがとうございました」
私が言い終わる前に、ユリエル様は聖女様を抱えて帰ってしまいました。小脇に抱えるのではなく、しっかりと両手で抱えて。
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