第4話 唯一の女性党員 タイ
「えらい事になりよったのーえー」
喜多川鉄太郎は、沢卿を垣生村の医師三木佐三の屋敷まで送った帰り道、低い声でつぶやいた。
「左様でございますね」
半歩後ろを歩いているタイが
タイは、漁師の娘で源三の妹になる。小松勤皇党の唯一の女党員であり、最年少でもある。源三が近藤南海の私塾に通うのに付いて来ていたのだが、庭の隅で講義を聴いているうちに塾の誰よりも内容を理解するようになっていた。南海は、その聡明さに感嘆し、入門を特別に許したのだ。そして、いつの間にか喜多川鉄太郎と恋仲になっていた。その聡明さに鉄太郎が興味を持ち
「本当にお腹を召すおつもりでしたの」
タイがいたずらな目で問う。
「当り前よ、脱藩は切腹と決まっておる。池原さんに切れと言われたらいつでも切る覚悟だ」
鉄太郎は怒ったような口調で切り返した。
タイは、みるみるその目に涙を浮かべ、
「死んだらいかん、腹なんか切ったらいかん」
と言うと、鉄太郎の胸に顔をうずめ
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