とある日の一幕

@Kaikou__

とある定期テストの一幕




「来週の水曜日から、期末考査があります。一週間前に入るため部活動は原則禁止。きっちりと勉強してのぞんでください」


 ホームルームで、担任の口から放たれた言葉に運動部に所属している生徒が沸き立った。

 毎日楽しそうに部活を行っている彼らだが、やはり休みというのはテンションが上がるのだろう。

 だが、ただの休みではなくテスト休みであることを理解しているのだろうか。

 そう思い、最近では一番テンションの上がっている様子の友人を見ていると、彼からはとてもいい笑顔が返ってきた。これはなにも分かっていない顔だな。



「よし、ゲーセン行こうぜ!」


 予想通り、俺が帰ろうとしたところに、まだ学内だというのにネクタイをほどいて首にかけている不届きものがやってきてそう言い放つ。


「テスト前だぞ。最終日に付き合ってやるから勉強しろ」

「最終日は部活あるんだよ……だから今日だけ! 行こうぜ!」


 絶対に今日だけにならないことを察したので、しつこい友人を振り払いながら俺は帰路に着いた。



 その後、俺を遊びに誘うことはなかったが、結局友人は他のやつらと遊びに行くことを繰り返していたらしい。

 テスト前最後の日曜日である今日ももやつのSNSには楽しそうな画像がアップされている。


「こいつ、次赤点とったらゲーム機没収だって言ってなかったか……?」


 まったくもって危機感のない友人に呆れつつ、風呂上がりのアイスをちびちび舐めていると、件の友人からの電話が鳴り響く。


「出たくないな……絶対助けてって電話じゃん……」


 そう思いつつも電話をとると、予想通りのSOSコールが大音量で流れる。


「助けて! テスト死ぬ!」

「うるさい知るか、自業自得だ」

「そんなこと言わないで助けてください神様仏様!」

「ご冥福をお祈りいたします。おやすみ」


 そう言って一方的に電話を切ると、すぐさま再コールが鳴るがそれを無視して通知をオフにする。

 なんだか疲れたので、俺はそのままベッドにもぐりこみ、悲鳴を上げているアホのことなどは忘れ去った。



 翌日、学校に着くと必死に机にしがみつく友人の姿を見つけ、最初からそうしとけばよかったのにと思いながらもいつも通り授業を受けた。

 

 そのまま彼がほとんど机から離れることがないまま放課後になり、その後も教室に残り続けている。頭をかいている様子からして、どうやら行き詰っている様子だ。


「で、なにが分からないんだ?」


 まあ反省もしただろと思い、予定通り彼の下に近づくき声をかける。


「……この問題」


 いつも騒がしい友人とは真逆の様子でしおらしく問題を指さす姿に、心の中で苦笑しながら基本的なところでつまづいている彼に、俺はいつものように一つづつ教えていった。




 そうして毎日のように友人に勉強を教える日々が続き、テスト最終日終了後。

 今のところギリギリ赤点回避ぐらいの手ごたえはある様子の友人が、晴れやかな笑顔でこちらに向かってきた。


「ありがとな! おかげで何とかなった気がする! 今度から1週間前には絶対にまじめに勉強するよ!」


 これ中間の時にも聞いたセリフだな……と思いつつも、あの時も俺はラストスパートで勉強を教えていた事を思い出す。


 これは、次の定期考査でも同じことするんだろうな。


 そう思って笑ってしまう俺は、きっと物好きなやつなんだろう。




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