第2話Ep7.Re;ゼロから始める高校生活
四月二十日、水曜日。
放課後、午後四時三十分。職員棟、生活指導室。
「うぃっすー。お前ひとり?」
「ジンゴさん、お疲れ様です。――カイくんはスバルくんとカラオケ行くから来れないって、『つながるくん』で言ってましたよ」
「見た見た。キキもどうせ生徒会だしなー。――なんかふたりなの久しぶりじゃね」
「そうですね、カイくんが来てから何かと騒がしかったですから。妙に静かに感じますね」
「あいつ先輩キラーだよな」
「先輩キラーて。声が大きいだけでしょう」
「ったくよく言うぜ。しかしあいつらはカラオケ行くほど仲良くなったんか?」
「仲良くなるために行くんじゃないですか? 吃音持ちの人は喋るのは苦手でも歌うのは平気ってことも多いみたいですし、悪い選択肢じゃないと思いますよ」
「ふーん。お前から見てどう? あいつらうまくやれると思う?」
「さあ、どうでしょう……。カイくんは思ったこと全部顔に出るから。僕みたいなひねくれた奴よりかはやりやすいんじゃないですか」
「相変わらずの自己評価。相性じゃん、お前は悪くねぇよ」
「出た、全肯定マシーン……」
「全否定よかいいっしょ。で? スバルはオカ研入るって?」
「昨日の時点では保留でしたけど。押されて入る可能性、ありますよね」
「そっか。意外だな、お前はもっとオカ研設立に反対するかと思ってたけど」
「別に、反対っていうわけじゃあ……。それに、一昨日の話の流れではスバルくんをオカ研に誘う以上にいい案はありませんでしたし」
「……そうだな。カイがお悩み相談部に誘うって言いださなくてよかったな?」
「………………そうですね」
「やっぱり、その選択肢もわかってたな。それでアイツは友達がほしいってあんだけ言いづらそうにしてたのか。おかしいと思ってたんだよ、ただブーメラン刺さったにしてはしんどそうだったし」
「ブーメランって……。僕は友達ほしいと思ったことはないですよ」
「はいはい、そういうことにしといてやんよ。――でも俺も友達になれとは言わねぇけど、スバルをお悩み相談部に誘うのはアリだと思ったよ。アイツ誘ったら絶対入ったよ、俺の部だもん。……なんで誘わなかった? 嫌いなタイプだった?」
「嫌いってことは……。でもまあ、自分の近くにいてほしいとは思えなかったんですよ」
「それを世間では嫌いと言うんですぅー。はあ、お前はむかしから人の好き嫌い激しいねぇ。それで? どこがダメだったん?」
「……挨拶しなかったじゃないですか」
「挨拶? ああ、最初お前が会釈したの無視してたっけ? お前そういうの気にするタイプだっけ、意外ー。カイのクソデカ挨拶に毒された?」
「毒されてはないですよ……。ていうか、僕に挨拶しなかったのは別にいいんですよ」
「は? じゃーいいじゃん」
「……アイツ、ジンゴさんが挨拶してるのに返そうともしなかったじゃないですか。それが許せねぇ……!」
「…………あー。あーあー。俺はどこで育て方を間違ったかねぇ!?」
「間違ってないですよ」
「その返答が来る時点でおかしーんだわ! ツッコめよ!!」
「ツッコんだじゃないですか」
「ちっげーよ! そっちじゃねぇよ! ……はあ、お前をおかしくしちまった責任を感じる……。こりゃあモカもブチギレるわ……」
「モモカさんなんて大抵いつもキレてるじゃないですか、いちいち気にすることないですよ。……それに」
「それに」
「おかしくなったとか言わないでくださいよ。俺は――僕は、むかしの自分から変われてよかったと思ってます」
「……そーだな。ま、それで言やぁスバルだってこれから変わるかもしれねぇぜ」
「そうでしょうか」
「ああ。あいつのやるべきことはこんな紙切れ貼ることじゃあなかったけどさ、行動を起こしたことは評価したいよ。大体さ、変わりたいと思って、翌日からはい変わりました、ってなれるわけないって。そんなのお前が一番よくわかってんじゃん?」
「……そうですね。せいぜい髪色変えたり服装変えたりするくらいが関の山だ」
「はは、ちげーねぇ。でもまあ、スバルは大丈夫だと思うぜ」
ジンゴは紙切れを蛍光灯にかざした。眩しそうに、その先の、遥か未来を見通すように目を細めて言う。
「なんてったって、蛇は生まれ変わりの象徴だしな!」
――――――――――
黒蛇の会
メンバー募集
×××××××××××
会長 山内守生流
メンバー1号! 神宮開!!
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