第5話 微分と感情の増加率

夏が近づき、気温が上昇するとともに、光司と莉緒の間の感情も急激に高まっていく。しかし、その感情がどの方向に進んでいるのか、まだはっきりとは解明されていなかった。


図書館で共に問題を解く日々が続く中で、二人は自分たちの感情の微分、つまりその変化の割合を見つけようとしていた。


「春野さん、この問題は微分を使って解くんだよね。」光司がペンを走らせながら、莉緒に話しかける。


「そうね、微分を使えば、関数の増加率を知ることができるから。」莉緒が解説を始めると、光司はしっかりと彼女の話を聞き入る。


しかし、微分の話が進むにつれて、光司の心はどんどん莉緒へと引き寄せられていく。それは、自分の感情が莉緒に向かって増加していることを認識するからだ。


同じことを莉緒も感じていた。彼女もまた、自分の心が光司に向かって高まっていく感情を抱いていた。それは、彼女がこれまでに体験したことのない新たな感情だった。


その日の放課後、二人はいつものように図書館で過ごしていた。しかし、二人の間の空気は微妙に変わっていた。


「春野さん、僕、何かを告白したい。」突然、光司がそう言い出す。莉緒は驚きながらも、光司を見つめる。


「何、何を?」


「それは、微分のようなものだ。僕の感情が、君に向かって増加していること。だから、僕は…」


その瞬間、光司の言葉は途切れる。しかし、その表情からは、彼が何を伝えようとしていたかが明確だった。


莉緒もまた、微笑みながら光司を見つめる。「私も同じだよ、光司。私の感情も、あなたに向かって増加している。だから、私も…」



「数学とは、現象を理論化し、予測するもの。そして、莉緒と僕の間に起きた現象もまた、数学的に解釈できる。微分を用いて、僕たちの感情の増加率を理解することができた。だから、これからも僕たちは一緒に、新たな現象を解明していこう。」

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