第2話

 とりあえず大声での本人不在素振り的告白をした私の隣には、小学校からの友達である朱宮美樹(しゅみやみき)がいて、突然の大声に困惑しているようだ。

 「え?え?明美って黒田君が好きなんだ?」

 恋愛相談的なことってしなかったし、知らないのも無理はない。

 私自身、これは恋愛ではないとか言ってごまかし続けてきたんだから、そりゃこんなリアクションになるよね。

 「二言はないよ!まぁ……ここにいないんだから無駄告白なんだけどさ……」

 「黒田君と桃井君と、藍川君かな?あの3人いないよね……この3人なら、私は桃井君かなぁ」

 まぁね、確かに桃井君の人気は結構凄いものがあって、バレンタインとかチョコ屋が開けるんじゃない?って位には貰っているのを横目で見たことがある。

 彼の凄い所は、手作りチョコでも物怖じする事無く口にする所……一旦下駄箱の中に入った、しっかりと密封されている訳でもないチョコ菓子をだ。

 黒田君は良い感じに地味だから、大量のチョコを抱えている所は1度も見たことがない。

 チョコをもらった友達をうらやましそうに眺めている姿も可愛かったなぁ。

 で、藍川君は彼女がいて、チョコも「彼女からもらうから」と清々しいまでにはっきりと断ってたっけ。

 私は黒田君にあげるために作ったチョコを持参して学校に行って、そのまま持って帰って来るだけでしたわ……。

 「ハァ~、なんでいないんだよぉ~……」

 「……あの3人と一緒に居残りになった2人がここに来たんだけど、その2人の話によるとさ……藍川君、地球に転生させられたらしいよ」

 あ、そうなんだ?

 へぇ……。

 え?なんて?

 居残りになった2人がここに来たーまでは理解できたよ、で、なんだって?地球に転生させられた?

 うん?

 「え?藍川君がどうしたって?」

 さっきの茜谷さんの異世界って言葉と良い、美樹の転生って言葉と良い。

 私は本格的に異世界転生ものに憧れでも持っていたのだろうか?

 「明美……エンジ・シュウ・ローズクォーツって天使の説明聞いてた?私達はクラス毎ここに召喚されたの。戦士系か魔術師系かのテスト受けたでしょ?」

 いや、それは分かるよ?説明だって多分聞いてたし。

 「えっと……これ、夢でしょ?」

 夢の中の住人に夢かと尋ねるなんて可笑しな話し。

 ポカッ

 痛い。

 「夢だと思う?」

 私の頭を剣の柄の部分でコツいた美樹は、よく見ればかなり無理をして笑っている感じだ。

 「えっ!?これ、現実なの!?」

 異世界って本当にあるんだ?

 「そうだよ……藍川君は地球に転生……意味は分かるよね?」

 転生ものの主人公って子供とか赤ちゃんから話が始まったりするよね。ってことは?

 転生”させられた”ってことは?

 もしかして、殺された?

 「ちょっと!え?じゃあなに?一緒に居残り組になった黒田君もってことじゃないよね!?え?」

 私って人間は残酷だ。

 転生させられた藍川君ではなく、安否の分からない黒田君の心配しか出来ないんだから。

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