異世界攻略で重要なのはレベル上げでした
SIN
第1話
昼休み中、私は一旦チラっと考えた。
あ~午後の授業メンドーだな~、帰ろうかなぁ~。って、チラッと考えたんだよ。
だけどテスト範囲の重要な所を授業でやるかも知れない……いやっ、授業って言えば全部がテストに関わるんだけどさ、たまにあるじゃん?教師による余談って言うか、雑談って言うか。
普通に教科書を読むよりも覚えやすい感じのアレ。
そんな楽しい授業だったら嫌だなーって、それで出席した5限目なのに、それが一体なんの授業だったのかが思い出せない。
うたたねしていたんだとしても、さっきまで受けていた筈の授業が何だったのかなんて忘れるもの?
自習だったと言われると自習だった気がするくらいボンヤリするもの?
第一今日の時間割を思い出すだけで解決できるような些細なことなのに、それすらできないってどういうわけ?
いいや、この際そんな事は後回しにしよう。
「皆様初めまして、わたくしはエンジ・シュウ・ローズクォーツと申します」
このキテレツな天使のコスプレをした女からどうにかしよう。
授業を受けていた筈がどうしてこんな所にいるのか分からないんだから、夢って事で一旦解決しても良いのかも知れない。
にしても、水晶に触れさせてのグループ分けとか、ファンタジーっぽいな。
私ってこういう冒険願望とかあったのかな?
ゲームの世界にダイブ!とか転生!とか?
いやぁ~どうせ転生するんなら乙女ゲームとかのモブが鉄板かな?令嬢でさ、政略結婚とか無縁の田舎令嬢みたいな?スローライフってのが良いよね。
魔法とか使えちゃったり?スローライフを送りながら趣味程度で作った魔道具が大金で売れっちゃたりとか?
タハー!良いよね、そういうの。
まっ、私にやってみろって渡されたのは魔力の才能はないんだなーってのが丸分かりな剣なんだけどさ。
で?スキルを出せとか言われてる?
え?急にそんな事言われても無理ゲーじゃない?
第一、なんのスキルよ。
お手本は?
ドォン!
とりあえず剣の素振りなんかをしていると、少し向こうの方からそんな爆発音みたいな音が聞こえてきた。
多分だけど、魔法を出せーとか無理難題を押し付けられた子の誰かが本当に魔法を出したんだろう。
ふむ……。
え?すごくね?
「いやっ!離して……家に帰してよ!異世界なんて行きたくない!」
今度はなに!?
異世界とか言った?
ん?
よーし、一旦落ち着こうじゃないの私。
ここは私の夢の中だよね?アンダスタン?そうそう、で私は剣術でなにかしらのスキルを出しなさいって課題を出されてる状態で、茜谷さんは魔法を出してみなさいニヤニヤってやられてたのよね。
で、本当に魔法を出して、家に帰してもらえなくて、急に空中に出現した門が開いて、そこに放り込まれー……ナウ。
多分あの門の先が異世界って奴だろう。
私ってば想像力豊かだったんだなぁ……。
けどさーどうせ夢なんだったらさーもっと良い思いさせて欲しいよね。
始めからドンドン魔法が使えるとか……そうだよ、魔法が使いたいとか思ってたのに剣って何さ!しかも、しかもどうせ夢なんだったら黒田君と同じ班にしてくれたってよくない!?
ラブストーリーをお願いしたいんですけど!!
なんで早々別行動なのさ……。
この広場みたいな練習場?にもいないし。
別に、好き~とか、そこまでのことは思ってはないよ?
まだそこまでじゃないんだけどさ、格好良いなぁ~ってついつい目で追いかけることってあるよね?
でさ、黒田君がさ楽しそうに笑顔なんか見せててみ?こっちまでニンマリしてしまいますよね。
本とか読んでたら、何読んでるんだろうって気になって、帰りに本屋に立ち寄る位のことはするし、話しかける切っ掛け探しにも余念がないし、イザって時の為にサッと手渡せるようにSNSアカウントを記入した名刺も用意してるよね。
そう、これはアレだよ、えっと、そう、友達づくりの一環だから!
そうそう、それそれ。
……ハァ、私って奴は夢の中でも理由付けに必死か。
ついさっきラブストーリーでお願いしたいって思っておきながら、往生際が悪いったらないよ。
「黒田君っ、好きだー!」
よし、大声で一旦宣言しとこう。
夢な訳だし、これが切っ掛けになってポンと黒田君登場とかー………ない?
ないの?
ないかぁ~……。
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