トラックに積まれた兵士たちは歌を合唱していた。士気は高まっていくばかりだ。その中でフェレンツも歌っていた。


「いいかお前ら、私はコラス軍曹。もうすぐでフューラス基地に着く。そこで武器を各自に配布する。赤ん坊を抱くように丁寧に扱うんだ」


コラス軍曹は立ち上がりそういった。

 銃を受け取る頃には雨が降り出してきた。


「なんだ新品じゃないのかよ」


ライアンは不満を漏らした。それを近くで聞いていたコラス軍曹が近づく。


「二等兵、名前は?」


ライアンは即座に敬礼した。


「ライアン・メサス二等兵です。軍曹」

「メサス二等兵、その銃が気に入らなかったようだが?」

「いいえ、軍曹。この銃で祖国のために戦えることを誇りに思っています」

「メサス二等兵、お前は一番最初に死ぬだろう」


軍曹は去っていった。


「お前完全に目つけられたな」


面白がるようにステイムが言った。


「お前らもうすぐ出発だってよ」

マズーは装備を整えながら言った。


「ったく、家が恋しいよ」

「まだ一日も経ってないだろ」


ライアンとステイムは緊張感のかけらもなかった。

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